夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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七章 珍しく昼遊び

159 二枚舌

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 エステルたちと軽くお茶をしたその日は、すっかり存在を忘れていたイーダの部屋に忍び込んだフィリップ。案の定、イーダはベッドの上で拗ねていた。

「ゴメンゴメン。予定聞き忘れてたよ~」
「殿下に取って、私はその程度の女なんですね。フンッ」
「まぁ……そうかも?」
「え……じょ、冗談です! 捨てないで~~~」
「僕のも冗談なんだから、そんなに泣かないで。ほら? 今日は会えなかった分、いっぱいしようね~?」
「はい~」

 惚れたほうが負け。その方程式を使って、フィリップはイーダにマッサージしながらほくそ笑むのであった……


 ボエルに執事用の服をプレゼントしたら、ここ数日はめちゃくちゃ機嫌がいい。ルンルン気分で掃除やフィリップのお世話したり、夜には服を着たままフィリップの上に乗ったり。
 ただ、外に出ると生徒がずっとコソコソしてるのは気になる模様。今日はメイド仲間からも何か言われたらしく、暗い顔でフィリップの部屋に入って来た。

「どったの?」
「なんかな。メイド仲間にそんな格好させられてかわいそうって言われて……殿下のせいじゃないのに……」
「いや、僕のせいで間違ってないじゃん」
「そうだけど、殿下はオレを想ってやってくれたことだろ?」
「ううん。面白がって」
「はあ~~~!?」

 フィリップがぶっちゃけると、ボエルも怒り心頭だ。

「ふっざけやがって……」
「それでいいじゃん。そっちのほうが着やすいでしょ?」
「どっちが本心なんだよ~~~」

 というわけで、ボエルの機嫌はフラットに。ただし、執事服には感謝して仕事をこなすのであった……


 寮内でボエルの服装が話題になっていたら、今日はフレドリクがフィリップを訪ねて来た。

「本当にそんな格好をさせられているのだな……」

 挨拶も早々にフレドリクはボエルを哀れんだ目で見た。

「今日はどうしたの?」

 その目に気付いているけど、フィリップはとぼける作戦に出てる。

「ボエルのことだ。ムリヤリ男物の服を着せられていると話題になっているぞ」
「あぁ~……」

 フィリップがわざと溜めると、フレドリクが怒っているように見えたボエルが割り込む。

「違うんです! 私は……」
「ボエル! 黙れ!!」
「え……」

 しかし、初めてフィリップが大声で命令したのでその先は言えない。

「お兄様。大声出してごめんなさい。あと、お兄様の侍女を外に出してくれない?」
「……わかった。下がれ」

 フレドリクはフィリップの意図を汲んですぐに従者を追い出してくれたので、フィリップも顔を崩した。

「人に聞かせられない話なのか?」
「そそ。さすがお兄様~。わかってる~。ボエルも突然カミングアウトしようとするから焦っちゃったじゃな~い」
「あ……申し訳ありません……」

 フィリップの行動はボエルを守るためだと2人が理解すると、室内の空気は一気に緩んだ。そこをフィリップは真面目な感じに、ボエルが性同一性障害だと説明するのであった……


「なるほど。そういうことだったのか……」

 ノーマルなフレドリクでは、そんな男女がいるのは初耳だったので少し理解が遅かったが、フィリップが根気強く説明したことで完全に理解してくれた。

「そそ。まぁかなり少ないレアなケースなんだけどね。でも、その人に取ってはいまの帝国は生きづらいと思うよ。だからお兄様には、声を出せない人や、小さい声の人の声にも耳を傾けてあげてほしいんだ。その人たちも帝国人でしょ?」

 出来損ないと言われているフィリップが、ここまで国民のことを考えているのだと知ったフレドリクは笑みが漏れる。

「フフ……まさかフィリップから教えられる日が来るとはな」
「たまたまだよ。お兄様だって、そういう人がいたら見て見ぬ振りできないでしょ~」
「どうだろうな……できるだけ、そういう人に配慮できる方法を考えてみるよ」
「ありがと~。あ、急がないでね? こういうのは急いでやると、当事者もその親兄弟も傷付いて修復不能になっちゃうから。あと、頭の堅い人にはなに言っても通じないから気を付けてね~」
「もうフィリップがやったほうが早くないか?」

 珍しくフィリップが賢い発言ばかりするので、フレドリクも不思議に思いながら帰って行くのであった。


 フレドリクが出て行くと、ここにも不思議に思っている人がいる。

「なんで殿下は、オレなんかにそこまでよくしてくれるんだ? ま、まさか……」

 ボエルだ。若干、乙女の顔になってる。

「プッ……自意識過剰だな~。たまたまだよ」
「いつもたまたまって言って逃げてるだけだろ」
「たまたまはたまたまだも~ん。お兄様が怒っていたから、煙に巻いただけ。ま、そのおかげで、ボエルみたいな人が生きやすくなるかもね」
「そっか……フレドリク殿下が皇帝になった暁には、いい法律とか作ってオレみたいな人をたくさん救ってくれるのか……」
「ね? 僕ができることなんて、目に映る人をちょっとだけしか助けることができないの。さすがお兄様だね~」

 フィリップはフレドリクの手柄にして話をすり替えようとしたけど、今回に限ってはそうは上手くいかないみたいだ。

「いや、この件に関しては、殿下のほうが詳しくないか? フレドリク殿下も舌を巻いてたぞ」
「そうだったっけ?」
「本当は、殿下はすげぇ賢いんじゃないか……それはフレドリク殿下ぐらい……」
「買い被りすぎ。僕は政治より女の子と遊んでいたいの~。そうだ! 外出って明日だったよね? 僕、娼館ってところに行ってみたいんだ~」
「しょ、娼館……ダ、ダメに決まってるだろ!!」
「えぇ~。ボエルの分も出してあげるから~。綺麗な女性いるかもよ~?」
「ゴクッ……ダ、ダメだダメだダメだ! 嵌まって毎日行こうとするだろ!!」

 フィリップが娼館というワードを出したら、ボエルも行きたそう。しかし、後々ややこしいことになるのは目に見えているからなんとか耐えたけど、そのせいでフィリップの賢さ問題は忘れてしまうボエルであったとさ。
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