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七章 珍しく昼遊び
155 お買い物
しおりを挟む高級料理店ではボエルの口調をフィリップが注意しまくって食べ終えると、支払いの話になっていた。
「僕、お金なんて持ってないんだけど~?」
「ああ。オレが預かって来てるぞ」
「よかった~。無銭飲食になるかと思ったよ~。ちなみにいくら入ってるの?」
「ちょっと待て……うおっ!?」
ボエルが革袋を開いて中を確認すると、仰け反って椅子ごと倒れそうになっていた。
「なに? なんかビックリする物でも入ってたの??」
「白金貨が5枚も……」
「それって金貨より高いの??」
「高いぞ! 100倍だ! なんで知らないんだよ!!」
「僕、お金なんて見たことないも~ん」
「マジか……これが本物の金持ちか……」
フィリップの大ウソを信じてしまったボエル。なので、ボエルのお金持ち像がこの日、更新したのであった。
支払いはどっちが男役をやるかの話になったけど、ボエルは白金貨で払うのが怖いらしく、ニコニコフィリップ払い。でも、お釣りの金貨が多すぎたので結局ボエルがビクビク受け取っていた。
大量の金貨と少量の銀貨等を革袋に入れて、ボエルの腰に括り付けたら次に移動。今度はショッピングをしに、大きな建物にやって来た。
「外観はデパートっぽいね」
「なに言ってんだ。デパートだぞ」
「あっ、これが本で読んだデパートなんだ~」
フィリップの言った「デパート」は元の世界の百貨店のことであったが、この世界には同じデパートが存在していたとは知らなかったので、慌てて言い訳。
不思議そうな顔をしているボエルから質問が来る前に、手を引いてドアマンが開けてくれた入口から中へと入った。
「「広っ……少なっ……」」
すると、2人の感想が一致。中は広い割には商品が少なすぎるので、よけい広く感じるらしい。
「てか、どこに何があるんだろ?」
「オレも初めて来たからな~」
「そうなの? 親に連れて来てもらえなかったの??」
「お袋からは何度か誘われたけど、オレはその頃、剣を振ってたほうが楽しかったから」
「女子力ゼロだったんだね……」
ここまでボエルが使えないのでは、ショッピングを楽しめない。フィリップは護衛を呼び寄せようかと思ったが、なんとなく来るんじゃないかと思って指を「パチリ」と鳴らしてみた。
「「「「「ようこそ。第二皇子殿下~」」」」」
「来すぎ」
すると一気に10人も店員が釣れたので、フィリップは冷たいツッコミ。その中で一番美人の女性を案内係に任命していた。
そんなことをしていたらボエルがメモを取っていたので、フィリップは「なに書いてるんだろ?」と近付いた。
「なるほど……指を鳴らしたら案内係が来るんだな……」
「来ないよ? 第二皇子だからだよ? ね??」
「はい。またはお得意様ぐらいですね。フフフ」
「笑われた!?」
ボエル、勘違いした上に真面目だったので、案内係に笑われる。そのせいで、ツッコミを入れたフィリップが二次被害。ボエルにめっちゃ睨まれているよ。
「ところで、ここは何が置いてあるの?」
「アクセサリーと服がメインとなります。服飾関連も揃っていますので、プレゼントを選ぶ方もよく参られておりますよ」
「なるほどね~……じゃあ、男物の服から見ようかな?」
「こちらになります」
案内係に軽く質問したフィリップは、ボエルの手を取って後に続く。
「にしても、殿下は慣れた感じだな。本当に初めてだよな?」
「質問しただけじゃん」
「オレだったら、気後れしてその質問すらできない。何も知らないと思われそうで恥ずかしいし……」
「彼女の前で知ったかしてバレるよりはマシでしょ。こういう時は堂々と質問したほうが、彼女によく思われると思うけどな~」
「ああ~。オレもちょっと感心した。アリだな」
2人の会話の意図が読み取れないって顔の案内係に連れて来てもらった場所は、紳士服売り場。商品は数える程しかないので、選べそうにない。
「こんだけ?」
「はい。こちらに飾ってある服をベースに、デザインを足したり布などを選ぶシステムになっております」
「オーダーメイドか~……そういうの苦手なんだよね~」
「でしたらイメージだけ伝えてもらえれば、デザイナーが絵を描いて服に仕立ててくれますよ」
「それならいけるかな? ボエルも書いてもらいな」
フィリップがボエルに振ると、ちんぷんかんぷんって顔になってた。ここでも役に立ちそうにないので、フィリップはボエルを隣に座らせてアドバイスしながら絵を描いてもらう。
「結局、男物……」
ボエルの頭の中を具現化した絵は、飾りっ気のないシンプルな細身のスーツなので、フィリップのアドバイスをまったく聞いてない。フィリップがミニスカートを穿かせようとしていたからこうなったんだけど。
「いいだろ。てか、それは殿下が着るのか?」
「ううん。ボエルの」
「んなエロイ服、着るか!!」
フィリップの頭の中を具現化した絵は、ノンスリーブで胸が大きく開いたドレス。スカートには大きなスリットが入っているので、美脚も際立つデザインだ。
「お姉さんはどう?」
「私もちょっと恥ずかしいです……」
「えぇ~。いいデザインだと思うのにな~……誰か着たい人、お金出してあげるよ~?」
というわけで護衛からも募集してみたけど、誰からも手が上がらないのであった。
「私は画期的なデザインだと思いましたよ? 女性特有の線が綺麗に出そうですし」
「だよね? デザイナーさんは褒めてるよ~??」
諦めの悪いフィリップがデザイナーの男性を味方に付けても、誰も手を上げないのであったとさ。
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