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七章 珍しく昼遊び
152 夜営
しおりを挟む神話の遺物の剣譲渡の式典が終了すると、フィリップはブーブー言いながら帰ろうとしたけど、皇帝に応接室に拉致されて膝の上に。
そこで期末試験の話をされたので、持って来ていた問題用紙の提出。今回は平均65点に調整。皇帝は「もっと精進しろ」とか言いながらフィリップの頭を撫でまくっていたから、顔とは裏腹に嬉しかったらしい。
これで呼び出された理由は全て消化。馬車に揺られて帰っている時にボエルが「期末試験、大丈夫だったか?」と心配していたので、「褒められた」と裏の顔のほうを報告したフィリップであった。
夏休みはフレドリクたちがダンジョン攻略に精を出しているので、フィリップもストーキングに精を出す。
休みということもあり、ダンジョンに入る5年生はかなり少ないのでストーキングしやすい。ただ、フレドリクパーティのスケジュールがわからないので、待ちぼうけして半日潰したフィリップはめちゃくちゃ怒っていた。
悩んだ結果、本人に直接聞くフィリップ。理由は心配だからと言ってみたら簡単に教えてくれたので、最初から聞いておけばとめちゃくちゃ悔やんでいた。
夏休みに入って1週間で、フレドリクパーティは地下5階の中ボス、ワイバーンを撃破。5人がかりでもかなり苦戦していたから、フィリップもドキドキして楽しめた様子。
そのまま地下6階にフレドリクパーティが進んで行くのでフィリップも遅れてついていったら、ワイバーン復活。フィリップは最強魔法一発で倒し、跡を追った。
しばし様子を見ていたら、フレドリクパーティは地下6階でレベル上げをしているように見えたので、フィリップはどうしようかと考えていた。
「確か、今回は2日間潜るとか言ってたか……てことは、ワッキャウフフな展開があるかも?」
ストーキングはちょっと飽きていたけど、ここは我慢。またしばらくつけていたら、フレドリクパーティは曲がった先が行き止まりの場所に向っていたので、フィリップは隠れて見てる。
「テントを張ってるな……大きいのがふたつと、小さいのがひとつ。てことは、聖女ちゃんが小さいのかな? 乙女ゲームでは、ジャンケンで聖女ちゃんと寝る人を決めていたけど、荷物持ちがいるもんな~……さすがにないか。あっ!?」
フィリップが覗き見ていたら、ルイーゼが何かを言ったあとに光が広がり迫って来たので、ダッシュで通路から逃走。充分距離を取ったところでモンスターを倒し、通路を眺めるフィリップ。
「止まったかな?」
そして戻ると、通路の中程に薄らと光る膜のような物があったので、フィリップはその手前で止まる。
「これが結界か~……聖女ちゃん、マジチート」
これはルイーゼの魔法。このダンジョンをクリアするには最短2日。乙女ゲームでは3日を掛けてクリアすることになるので、無いと休めないご都合主義的な魔法だ。
効果は、モンスターを通さないし、近付けさせないとなっているので、前項は必要ない。戦闘に使えれば最強なのに何故か使えない魔法だから、フィリップは「無理矢理作ったな」と製作陣を非難していたんだとか。
「触っても大丈夫なのかな?」
でも、好きなゲームの魔法なので、興味津々。フィリップは右手を前に出して触ろうとしたけど、右手は通り抜けた。
「なんもない……モンスターが触れたら壁があるようになるのかな? 試したいな~……てか、いまの聖女ちゃんに伝わるのかな??」
フィリップはモンスターを捕まえて来て投げ込みたい衝動に駆られていたが、もしものことがあるとバレそうなので一旦退避。
モンスターを適当にあしらいながら様子を見ていたけど、誰も確認しに来なかったので、結界を通り過ぎてフレドリクパーティが見える位置まで戻った。
「みんな楽しそうにしてるけど、あの1人用のテントって、モブ君用だったんだ……かわいそうに……」
そこでは、ルイーゼを中心に料理をする姿。あと、小さなテントの前で座っているモブ生徒の姿。項垂れているように見えるので、フィリップは「仲間に入れてあげて!」と哀れむのであった。
それからフィリップがパンをカジカジ牛乳をゴクゴクしていたらフレドリクパーティの夕食が始まり、モブ生徒も料理を分け与えられていたからフィリップも涙。忘れられていると思っていたっぽい。
夕食や片付けが終わるとルイーゼは1人でテントに入り、モブ生徒も1人用テントに入って行った。
すると残りの野郎共でジャンケン大会が行われ、フレドリクが勝ったのか、その他3人は地面に手を突いて悔しがっていたからフィリップも笑いそうになっていた。
勝者のフレドリクが意気揚々とテントに入ろうとしたら、悲鳴が聞こえた。
「プププ……聖女ちゃん、着替え覗かれてやがんの。てか、残りの3人は心配してるんじゃなくて、裸を見たいから集まってるんじゃね??」
これも乙女ゲームのシナリオ。ルイーゼが体を布で拭いている時に、フレドリクたちの誰かが開けて怒られるシーンだ。
「もうこんなもんかな~?」
テントの中の灯りが消えるまで見ていたフィリップは、フレドリクとルイーゼが寝ているテントを覗きに行きたかったが、そこまで近付くとバレそうなのでここも我慢。
「頑張れ兄貴。抜け駆けしちゃいな~」
もっと面白い展開になればいいなと思いながら、フィリップは寮に戻るのであった。
「こんな遅くまでどこ行ってたんだ?」
「ヒミツ~」
「女のところだな!? 孕ませてないだろうな!?」
夕飯時にもフィリップが帰って来なかったので、仁王立ちして待っていたボエルは、怒りを通り越して青ざめるのであったとさ。
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