上 下
144 / 330
六章 夜遊び少なめ

144 帝都学院の初テスト

しおりを挟む

 主要キャラ大集合のケンカの場面を堪能したフィリップは、ボエルのスカートの中も堪能してしまったので拳骨制裁されていた。自室に戻ってからも説教されてるよ。

「オレのことは百歩譲って許すから、辺境伯令嬢のことはなんとかしてやれよ!」

 あんなことされたのに、ボエルはエステルのことのほうが心配みたいだ。

「なんとかしろと言われてもね~……男女の仲のことだから、口を挟むのは野暮ってモノでしょ」
「いいや。誤解があるなら、言ってやるべきだ」
「そうかな~? それを許し合い、乗り越えることこそ大事でしょ。逆に聞くけど、それすら乗り越えなれないカップルが、皇帝と皇后をやって行けると思ってるの?」

 フィリップの問いにボエルは目を伏せた。

「わ、わからねぇ……」
「だったら四の五の言わないで。2人の試練だと思って温かく見守ろう。ね?」
「ああ……殿下は意外と大人なんだな」
「そうだよ~? だからさっきの続き、どう?」
「さっきって??」
「ちょっと感じてたよね??」
「バッ! 感じてねぇし! 気持ち悪かったし!!」
「アハハ。冗談冗談。アハハハハ」

 言葉巧みにイベントに関わらないように釘を刺した上に、ボエルのスカートの中でお触りしたことを思い出させて口説くフィリップであった。

「どうしたの? 早く入って来なよ~。もう我慢できないよ~」
「変な言い方するな! あと、前隠せ!!」

 お風呂に入る前に、自分の下着をチェックしていて遅れるボエルであったとさ。


 それからも、フィリップはニヤニヤしながらルイーゼをストーキングしてエステルたちのやり取りを楽しんでいたら、付き合わされていたボエルも呆れている。

「何がそんなに楽しいんだか……」
「ボエルだって、なんだかんだついて来てるじゃ~ん」
「オレのは仕事だ。殿下から離れられないから仕方ないだろ」
「あ、そっか。なんかメモ取ってたから楽しんでるのかと思ってた。なに書いてたの? 見せてよ」
「これは、その……報告書に載せるヤツだから、秘密だ」

 実はボエルも、男女のやり取りは面白い模様。このやり取りを勉強して、まだ見ぬ彼女の参考にしようと思ってメモを取っていたのだ。
 まぁこんな言い方してるから、フィリップにバレてるな。ニヤニヤしてるもん。

「なんだよその顔……」
「いや~……ボエルも大変だな~っと思ってね」
「うっせぇ。それより明日からテストだろ。勉強しろよ」
「テスト??」
「中間試験だよ! よくよく考えたら、殿下が勉強してる姿を見たことない……」
「そういえば、テスト前はいつもダグマーに教えてもらっていたな……ま、なるようになるさ」
「やべぇ! オレの仕事だった!? 帰って勉強するぞ!!」
「えぇ~……ヤダ~~~……」

 ボエル、まだメイドに慣れていないみたい。いまさら職務を思い出し、文句を言うフィリップを担いで自室に連れ帰るのであったとさ。


 一夜漬けで中間試験に挑んだフィリップは、ボエルには「できたできた」と報告。その言い方ではまったく信用できないので、テスト期間はずっと一夜漬けをやらされていた。
 そして全てのテストが終わった次の日は、休日だからフィリップは寝ていたら、焦ったボエルに起こされた。

「ムニャムニャ……一発スッキリしとく?」
「なんの夢見てんだ!?」
「まだ~? やってくれないと起きないよ~? ムニャムニャ……」
「寝てるんだよな? 起きてくれ~~~!!」

 寝ながらめちゃくちゃ喋るフィリップなのだから、ボエルも何度も確認してから揺すりまくった。しかしフィリップは全然目覚めないので、ついにボエルもフィリップのある部分を握った。

「あうっ……あれ? 何してるの?」
「殿下が起きないからだろ~~~!!」
「ダ、ダメ……いまは刺激しないで……離して……あうぅぅ」

 お陰様でついに目覚めたフィリップであったが、怒ったボエルがなかなか離してくれなかったので、二射目……二度寝は免れたのであったとさ。


 ボエルがこんなに焦って起こしていたのは、皇帝から「フィリップを直ちに連れて来い」って呼び出しがあったから。文面からも怒りが伝わったフィリップも焦って着替え、カバンに書類を詰めてボエルと走って寮を出た。
 豪華な馬車に揺られて城に到着すると、皇帝は来客があるとのことでしばし待機。さすがのフィリップも、ボエルにセクハラしている余裕がない。でも、1時間も待たされたので、もうちょっとゆっくりしてくればよかったと後悔していた。

 そうして執事が呼びに来たら、フィリップとボエルは執務室へ。ボエルを部屋の前で待機させようとしたら、執事から「一緒に入るように」と言われていた。
 しかしフィリップも折れずに、強引にボエルを残して1人で執務室に入って、言われてもいないのに怒れる皇帝の膝の上に座った。

「どうして呼び出されたかわかっているな?」
「はい……テストのことだよね? これが、本当の解答。答案用紙には10点代が取れるように書いたの。確認してよ」
「ほう……」

 フィリップは馬鹿ではない。テストで低すぎる点数を取ると皇帝から怒られる可能性があったから対策済み。問題用紙には50点ちょいが取れるように書き込み、答案用紙は馬鹿皇子設定にしていたのだ。
 その問題用紙を受け取った皇帝は、難しい問題だけに目を通して頷く。

「ふむ……嘘はなさそうだな」
「まぁちょっとナメ過ぎてたから、半分くらいしかわからなかったの。でも、それは僕が悪いからボエルに否はないよ」
「どうしてそんなことをしたのだ?」
「中途半端な点数取るよりは、悪いほうが変な虫が寄って来ないと思ってね。みんな僕に近付こうと必死なんだもん」

 フィリップは嘘しか言っていないのに、皇帝は感心したような顔に変わった。

「わかった。この件、何も言うまい。いや、最下位だけは取るな」
「あ、やっぱり最下位だったんだ~。次は真ん中より下辺りを狙ってみるよ」
「その知能、もったいない使い方させてすまないな」
「そんなのいいよ。どう考えてもお兄様が継ぐことが、帝国に一番利益があるもん。気にしないで」
「うむ……」

 少し弱気の発言をした皇帝だったがフィリップの気持ちが嬉しくなったのか、優しい顔でフィリップの頭を撫で続けるのであった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

猫王様の千年股旅

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。  紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。  魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。  千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった…… ☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。 できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。 初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも…… 「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。 R指定は念の為です。  毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子

ma-no
ファンタジー
【クライマックス突入!】  ここは乙女ゲームが現実となった世界。悪役令嬢からの数々の嫌がらせを撥ね除けたヒロインは第一皇子と結ばれてハッピーエンドを迎えたのだが、物語はここで終わらない。  数年後、皇帝となった第一皇子とヒロインが善政改革をしまくるものだから、帝国はぐちゃぐちゃに。それを止めようと「やる気なし皇子」や「引きこもり皇子」と名高い第二皇子は悪役令嬢と手を組む。  この頼りなさそうな第二皇子には何やら秘密があるらしいが……  はてさて、2人の運命は如何に…… ☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。  1日おきに1話更新中です。

虹色の子~大魔境で見つけた少年~

an
ファンタジー
ここではない、どこかの世界の話。 この世界は、《砡》と呼ばれる、四つの美しい宝石の力で支えられている。人々はその砡の恩恵をその身に宿して産まれてくる。たとえば、すり傷を癒す力であったり、水を凍らせたり、釜戸に火をつけたり。生活に役立つ程度の恩恵が殆どであるが、中には、恩恵が強すぎて異端となる者も少なからずいた。 世界は、砡の恩恵を強く受けた人間を保護し、力を制御する訓練をする機関を立ち上げた。 機関は、世界中を飛び回り、砡の力を扱いきれず、暴走してしまう人々を保護し、制御訓練を施すことを仕事としている。そんな彼らに、情報が入る。 大魔境に、聖砡の反応あり。 聖砡。 恩恵以上に、脅威となるであろうその力。それはすなわち、世界を支える力の根元が「もう1つある」こと。見つければ、世紀の大発見だ。機関は情報を秘密裏に手に入れるべく、大魔境に職員を向かわせた。

アイムキャット❕❕~猫王様の異世界観光にゃ~

ma-no
ファンタジー
 尻尾は三本、体は丸みを帯びた二足方向の白猫。実はこの中身は地球で百歳まで生きたジジイ。  神様のミスで森に住む猫に異世界転生したジジイは、人里に下りたらあれよあれよと猫の国の王様に成り上がり。国を発展させたり旅をしたりして世界を満喫していた白猫は、またまた違う世界に飛ばされちゃった。  その世界は勇者と魔王が戦う世界。最強の猫王様の取った行動とは…… ☆注☆  このお話は「アイムキャット!!?」という作品の特別編ですが、前情報無しでも楽しめるように書いてあります。話自体も小説一冊分程度でまとめる予定ですので、是非とも暇潰しに読んでください。  そして行く行くは、本家のほうへ……(願望)  毎日一話、最終回までノンストップで更新する予定ですので、宜しくお願いします! 「小説家になろう」「カクヨム」で同時連載しております。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

処理中です...