夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
上 下
141 / 376
六章 夜遊び少なめ

141 ヒロインと初接触

しおりを挟む

 フィリップの経験人数は置いておいて、経験値はそれなりに高いと知ったボエルは悩み出した。初めてを失敗しないためには、フィリップのアドバイスを聞いてもいいのではないかと……
 ただ、フィリップはお風呂である部分をおっ立ててエロイ目で見て来るので、それには耐えられなくて踏ん切りがつかないみたいだ。

 そんな日々をボエルが送っていたら、フィリップは学校のある変化に気付いた。

「ねえ? 最近、聖女ちゃんって、ウチのクラスに来てないよね?」
「そういえば、殿下を見失うことはなくなったかも?」
「やっぱり……これって、イベントの期限みたいなのがあるのかも?」
「イベント? 期限??」
「な、なんでもない」

 考察は口から出てしまったのでボエルが気になっていたが、フィリップはごまかして授業に戻り、次の手を考えていた。

(これで逆ハーレムルートは抜けたかな? 問題はここから僕が逆転できるかだな~……聖女ちゃんを口説いてみるか。その前にあの確認だな)

 フィリップはこの日からまたルイーゼのストーキングに戻り、庭園のベンチで1人で座っているところを狙って近付いた。

「やあやあ。元気?」
「えっと……どちら様ですか?」
「そう来たか……」

 まさか第二皇子をスルーして来るとは思っていなかったフィリップは、次の言葉を探す。ただ、ボエルを見たらキレそうな顔をしていたから急がなくてはならない。

「お兄様と仲良くしてるみたいだね」
「お兄様? どちらの方でしょうか??」
「第一皇子のことだよ」
「だ……フレドリク様!? てことは、フィリップ様ですか!? おおお、お初にお目に掛かります!!」

 ここでようやくルイーゼは焦りながら立ち上がり、深くお辞儀した。

(なんだこの反応……あんなにしつこく僕を追いかけていたのに、いまさら焦るか??)

 その反応は、フィリップの予想を大きく外れていたので、違う角度から攻めてみる。

「そんなのいいよ。お兄様たちと同じように相手してくれたら嬉しいかな~?」
「は、はい! でも、どうして私なんかに話し掛けて来たの?」

 ルイーゼは早くも敬語じゃなくなったけど、フィリップは少し気になっただけで続ける。

「いや~。お兄様が心を許してるみたいだから、どんな子か気になったの。やっぱりゲームは好きなの?」
「ゲーム? あ、チェスかな? フックンに教えてもらったけど、アレは私には向かないね」
「フックン??」
「フレドリク様のことだけど……あ、人前では言うなって言われてたんだった!」

 この「フックン」は、乙女ゲームではフレドリクの好感度がマックスになった状態で呼び方を選択すると使えるようになるのだが、フィリップ的には早すぎるのではないかと思っている。

「そうだね。本人の前以外ではやめたほうがいいね」
「うん。気を付けるよ~」
「だね。それとだけど、青い猫のお腹にポケットがついてるのはどう思う?」
「それ、本当に猫なの? ポケットってことは、お腹に縫い付けられているのでは……あわわわわ」
「単なる心理テストだよ。そんな猫いないから心配しないで。アハハハハ」
「もう~。変なこと言わないでよ~。ウフフ」

 フィリップが笑うと、ルイーゼも笑いながらフィリップの肩をチョンと押した。その瞬間ボエルがルイーゼに近付き、フィリップとハイタッチして、手を握り合うこととなった。

「ボエル。いま、何しようとしたの?」
「え……いや、オレは……なんで……」
「まぁいいや。聖女ちゃん、まったね~」
「はあ……」

 フィリップはボエルと手を繋いだまま、ルイーゼを置いてその場を立ち去るのであった……


「んで……ボエルは聖女ちゃんをビンタしようとしていたけど、なんでそんなことしたの?」

 歩きながら先程の行動を質問するフィリップ。何故かボエルがルイーゼをビンタしようとしたから、フィリップは素早く動いて手をキャッチしたのだ。

「ビンタ? そんなことを……いや、アイツがフレドリク殿下やフィリップ殿下に敬意を払っていないから、手が出た……のかな?」
「なるほどね~……女好きなのに女の子に手を上げるなんて、よっぽどムカついたんだね」
「たぶん……」
「ちなみにだけど、お父さんとかってマフィアと関わってたりする?」
「うちは騎士爵だから接点はない。なんだその質問?」
「たいした意味はないよ」

 フィリップが変なことを聞くので、ボエルも苛立って来た。

「ところでいつまで手を繋いでるんだ?」
「部屋まで? あ、このままデートする??」
「離せよ!!」
「ちょっとぐらい、いいじゃな~い」

 ボエルが手を強引に振り払うので、フィリップは頭の後ろで手を組んで不機嫌アピールをしながら自室に帰る。
 そしてベッドに寝転んで今日の出来事を考えていた。

(不思議なこと連発だ。聖女ちゃんはフィリップのことを知らないし、現世の知識にも反応しなかった。その上、ボエルは意味もわからずビンタしようとしただと?)

 そう。フィリップの予想が外れまくった上に、乙女ゲームのシナリオにまったく関わりのないボエルが、ヴィクトリア・フリューリング侯爵令嬢がやることを交代していたのだ。

(プレイヤーの線は消えた? いや、とぼけてる可能性もあるか。もうちょっと試してみよう。でも、ボエルがまた何かしそうなんだよね~……)

 この日は、フィリップがボエルに何かしようとして怒られてから眠りに就いたのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

猫王様の千年股旅

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。  紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。  魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。  千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった…… ☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。 できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。 初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも…… 「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。 R指定は念の為です。  毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...