上 下
141 / 329
六章 夜遊び少なめ

141 ヒロインと初接触

しおりを挟む

 フィリップの経験人数は置いておいて、経験値はそれなりに高いと知ったボエルは悩み出した。初めてを失敗しないためには、フィリップのアドバイスを聞いてもいいのではないかと……
 ただ、フィリップはお風呂である部分をおっ立ててエロイ目で見て来るので、それには耐えられなくて踏ん切りがつかないみたいだ。

 そんな日々をボエルが送っていたら、フィリップは学校のある変化に気付いた。

「ねえ? 最近、聖女ちゃんって、ウチのクラスに来てないよね?」
「そういえば、殿下を見失うことはなくなったかも?」
「やっぱり……これって、イベントの期限みたいなのがあるのかも?」
「イベント? 期限??」
「な、なんでもない」

 考察は口から出てしまったのでボエルが気になっていたが、フィリップはごまかして授業に戻り、次の手を考えていた。

(これで逆ハーレムルートは抜けたかな? 問題はここから僕が逆転できるかだな~……聖女ちゃんを口説いてみるか。その前にあの確認だな)

 フィリップはこの日からまたルイーゼのストーキングに戻り、庭園のベンチで1人で座っているところを狙って近付いた。

「やあやあ。元気?」
「えっと……どちら様ですか?」
「そう来たか……」

 まさか第二皇子をスルーして来るとは思っていなかったフィリップは、次の言葉を探す。ただ、ボエルを見たらキレそうな顔をしていたから急がなくてはならない。

「お兄様と仲良くしてるみたいだね」
「お兄様? どちらの方でしょうか??」
「第一皇子のことだよ」
「だ……フレドリク様!? てことは、フィリップ様ですか!? おおお、お初にお目に掛かります!!」

 ここでようやくルイーゼは焦りながら立ち上がり、深くお辞儀した。

(なんだこの反応……あんなにしつこく僕を追いかけていたのに、いまさら焦るか??)

 その反応は、フィリップの予想を大きく外れていたので、違う角度から攻めてみる。

「そんなのいいよ。お兄様たちと同じように相手してくれたら嬉しいかな~?」
「は、はい! でも、どうして私なんかに話し掛けて来たの?」

 ルイーゼは早くも敬語じゃなくなったけど、フィリップは少し気になっただけで続ける。

「いや~。お兄様が心を許してるみたいだから、どんな子か気になったの。やっぱりゲームは好きなの?」
「ゲーム? あ、チェスかな? フックンに教えてもらったけど、アレは私には向かないね」
「フックン??」
「フレドリク様のことだけど……あ、人前では言うなって言われてたんだった!」

 この「フックン」は、乙女ゲームではフレドリクの好感度がマックスになった状態で呼び方を選択すると使えるようになるのだが、フィリップ的には早すぎるのではないかと思っている。

「そうだね。本人の前以外ではやめたほうがいいね」
「うん。気を付けるよ~」
「だね。それとだけど、青い猫のお腹にポケットがついてるのはどう思う?」
「それ、本当に猫なの? ポケットってことは、お腹に縫い付けられているのでは……あわわわわ」
「単なる心理テストだよ。そんな猫いないから心配しないで。アハハハハ」
「もう~。変なこと言わないでよ~。ウフフ」

 フィリップが笑うと、ルイーゼも笑いながらフィリップの肩をチョンと押した。その瞬間ボエルがルイーゼに近付き、フィリップとハイタッチして、手を握り合うこととなった。

「ボエル。いま、何しようとしたの?」
「え……いや、オレは……なんで……」
「まぁいいや。聖女ちゃん、まったね~」
「はあ……」

 フィリップはボエルと手を繋いだまま、ルイーゼを置いてその場を立ち去るのであった……


「んで……ボエルは聖女ちゃんをビンタしようとしていたけど、なんでそんなことしたの?」

 歩きながら先程の行動を質問するフィリップ。何故かボエルがルイーゼをビンタしようとしたから、フィリップは素早く動いて手をキャッチしたのだ。

「ビンタ? そんなことを……いや、アイツがフレドリク殿下やフィリップ殿下に敬意を払っていないから、手が出た……のかな?」
「なるほどね~……女好きなのに女の子に手を上げるなんて、よっぽどムカついたんだね」
「たぶん……」
「ちなみにだけど、お父さんとかってマフィアと関わってたりする?」
「うちは騎士爵だから接点はない。なんだその質問?」
「たいした意味はないよ」

 フィリップが変なことを聞くので、ボエルも苛立って来た。

「ところでいつまで手を繋いでるんだ?」
「部屋まで? あ、このままデートする??」
「離せよ!!」
「ちょっとぐらい、いいじゃな~い」

 ボエルが手を強引に振り払うので、フィリップは頭の後ろで手を組んで不機嫌アピールをしながら自室に帰る。
 そしてベッドに寝転んで今日の出来事を考えていた。

(不思議なこと連発だ。聖女ちゃんはフィリップのことを知らないし、現世の知識にも反応しなかった。その上、ボエルは意味もわからずビンタしようとしただと?)

 そう。フィリップの予想が外れまくった上に、乙女ゲームのシナリオにまったく関わりのないボエルが、ヴィクトリア・フリューリング侯爵令嬢がやることを交代していたのだ。

(プレイヤーの線は消えた? いや、とぼけてる可能性もあるか。もうちょっと試してみよう。でも、ボエルがまた何かしそうなんだよね~……)

 この日は、フィリップがボエルに何かしようとして怒られてから眠りに就いたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...