夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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六章 夜遊び少なめ

135 悪役令嬢からの手紙

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「どういうこと? こんなイベント知らないよ~」

 なんとかルイーゼやイジメをしていた人物を男子トイレから追い出したフィリップは、愚痴りながら個室を出た。

「これ、明らかに僕を狙い撃ちしてるよね? もしかして、聖女ちゃんは転生者? だから難しい逆ハーレムルートを攻略できたし、僕を仲間に入れようと躍起やっきになってるのかも??」

 様々な可能性がフィリップに浮かぶが、こんなことをしている場合ではない。

「このままじゃ聖女ちゃんが助けられたと思って戻って来そうだな……普通に建物を出ても鉢合わせしそうだし……あそこしかない!」

 というわけで、フィリップは換気目的の小窓に頭から入り、なんとか潜り抜けて旧館を脱出したのであった。


 お昼休みは半分ほど過ぎていたが、フィリップはキレるボエルと合流したら食堂でランチ。急いで食べたら教室に戻り、授業は狸寝入りでやり過ごす。
 そしてチャイムが鳴ると同時に走り出し、キレるボエルに追いかけられて一番乗りで寮に帰宅した。

 自室に入るとボエルの説教。やれ授業をサボるなだとか、やれあんなメモじゃ気付くの遅くなっただとか、やれホームルームには出ろだとか言われていたけど、フィリップは正座で反省しているアピールしてるだけ。なんなら違うこと考えてる。

(聖女ちゃんが転生者だとして、目的はなんだ? 逆ハーレムを楽しむだけか? 僕ならダンジョンを目指すけど……そもそも中身は女なのかな? ま、まぁイケメンに囲まれたいと思うなら女だよな。僕が聖女ちゃんに転生してたら、百合展開狙うし……ボエルをぶつけてやろうか? プププ)

 フィリップはなんだかよからぬことを考えて笑ってしまったので、ボエルの説教が伸びたのであったとさ。


 それから夕食は自室で食べて、フィリップがそろそろお風呂にしようかとボエルをエロイ目で見た時に、ノックの音が響いた。
 フィリップはまたルイーゼがやって来たのかと構えて「今度は裏切るなよ?」と念を押してボエルを送り出したら、フレドリクが1人だったのでそのまま招き入れた。

「今日はどったの?」

 前回、逃げ回ったことはすでにフレドリクと1対1で会って和解しているので、フィリップも訪ねて来た理由はあのことだと思ってとぼけている。

「ちょっとフィリップに聞きたいことがあるのだが、今日、旧館に行ったか?」
「旧館ってなに??」
「校舎の裏手にあるだろ?」

 とぼけるなら徹底的に。旧館から知らないとフィリップが言ったら、フレドリクは丁寧に説明してくれる。

 どうやらルイーゼはあのあとフィリップに礼を言おうと男子トイレまで戻り、出て来るのを待っていたとのこと。
 そうしていたらルイーゼを捜していたフレドリクたちが合流して、中を見たら誰もいなかったので、「また幽霊が出たのかも?」とルイーゼは怯えていたらしい。

「へ~。そんな建物あるんだ。今度行ってみよっかな~」
「本当に知らないんだな……」

 フィリップの嘘を信じてしまったフレドリクだが、続きがあるらしい。

「そこにルイーゼが女子生徒に連れ込まれたらしいのだが、その女子生徒はそんなことをしてないと言うのだ。フィリップは何か心当たりないか?」
「行ってもいないんだから知らないよ~。てか、聖女ちゃんの証言だけでいいんじゃないの?」
「それがルイーゼも何故か誰に連れて行かれたか言わないのだ」
「なんで??」
「わからない。誰かをかばっているとしか……」

 フィリップもどうしてルイーゼがあの2人を庇っているかわからないし、予想を言うのも控える。事実はフィリップのウンコ発言を言い出しづらいから、いじめっ子のことも言わないようにしてるらしいけど。

「聖女ちゃんは怪我とかしてなかったの?」
「ああ。それはない」
「じゃあ、いいじゃん。てか、聖女ちゃんにちょっと入れ込み過ぎじゃない?」
「別に入れ込んでるつもりはない。平民から男爵家の養女になって浮いていたから、少し気に掛けてやってるだけだ」
「ふ~ん。少しね~……」
「何か言いたげだな」

 フィリップの含みのある言い方に、フレドリクの目が鋭くなった。

「ううん。お兄様らしいと思っただけ。そろそろお風呂に入りたいんだけど~?」
「ああ。時間を取らせて悪かったな。では、おやすみフィリップ」
「うん! おやすみ~」

 その目を軽くかわしたフィリップは、フレドリクをドアまで送るのであった。


「ボエルはどう思った?」

 フィリップは元の席に戻ると、ボエルに質問した。

「オレも入れ込み過ぎだと思った……けど、フレドリク殿下のやることだから、それが正解だとも思う」
「ふ~ん……ボエルはお兄様派閥なんだ。お兄様なら結婚してもいい感じ?」
「バッ! 尊敬はしてるけど、そんなんじゃねぇし!!」
「じゃあ、僕の派閥ってことだね。今日は前まで洗ってね~?」
「殿下の派閥だけは絶対ない。自分で洗え」
「えぇ~。じゃあ、僕が洗ってあげるよ~」
「何が『じゃあ』だ! このエロ皇子!!」

 フィリップはボエルの感想を聞けただけで充分。その後はセクハラ発言をしながらお風呂に入れてもらうのであった。
 ただし、ムラムラはお風呂では落とせないので、いつものようにキャロリーナに解消してもらってから眠りに就いたフィリップであったとさ。


 翌日は土曜日。短縮授業なのでルイーゼの接近は一度だけだったから、精神的には楽に寮に帰ったフィリップ。昨日はちょっと夜更かししたので、お昼を食べたらすぐにベッドに飛び込んで寝ていた。
 すると1時間ほどでボエルに起こされたので、フィリップは不機嫌そうに目をこすってる。

「なに~? 気持ち良く寝てたのに~」
「こんな時間に寝るなと言いたいところだけど、手紙だ」
「言ってるじゃ~ん」
「ダンマーク辺境伯令嬢のメイドから、取り急ぎ渡すように言われてるんだ。早く読め」
「ダンマーク辺境伯……あ、エステル嬢か。なんだろ?」

 エステル・ダンマーク辺境伯令嬢とは、フレドリクの婚約者。だからボエルは気を遣っている模様。
 フィリップは乙女ゲームの悪役令嬢からの手紙なので、興味津々で手紙を開いた。

「ふ~ん……お茶会のお誘いね~……」
「返事を急いでいるみたいだぞ?」
「あ、メイドさん、まだいるの? だったら場所だけ変更してもらって」

 ボエルに言伝を頼んだフィリップは、ワクワクしながら再び眠りに落ちたのであった……
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