133 / 384
六章 夜遊び少なめ
133 寮内探検
しおりを挟む帝都学院の校舎をコソコソ脱出したフィリップは、その足で寮の自室に向かった。3階だったのでボエルにおんぶをせがんでいたけど、「甘えるな」とキレられたので自分の足で。
自室に入ると間取りを確認し、逃走ルートまで念のため確認してから、ベッドに飛び込んだ。
「はぁ~……疲れた」
「授業はずっと寝てたのに、どこに疲れる要素があるんだか」
「言うね~。僕をナメるの早すぎない?」
「あ……申し訳ありません。弟に似てたもんで……」
「ウソウソ。そんなことで謝らなくていいよ。あと、ボエルもまだ仕事に慣れてないから疲れてるでしょ? ベッドに寝転んでいいよ」
「はっ! 寛大な……ベッドはダメじゃないか??」
「おしい! 襲ってやろうと思ったのにな~。アハハハハ」
「茶、入れてくる!!」
叱られたり許してくれたりセクハラされたりするので、ボエルはどう反応していいかわからなくなったのか、怒って寝室から出て行くのであった。
それからフィリップがダラダラしていたら、ノックの音が響いてボエルがドアに向かおうとしたけど呼び止めた。
「お兄様だったらいないって言っておいて」
「オレに噓つけと?」
「噓じゃないよ。ジョークだよ」
「言えるか!」
「頼むよ~。女の子好きの女子、一緒に探してあげるから~」
「うっ……本当だな??」
「ホントホント」
思ったより早くボエルが折れてくれたのでフィリップは「チョロッ」とほくそ笑んでいたら、ドアのほうからガヤガヤと聞こえて来たのであった。
「殿下、申し訳ありま……あれ??」
フレドリクは次期皇帝。そんな者を一目見たら、ボエルも嘘をつけないと約束を破ってしまい、謝りながら寝室に入ったけどフィリップはおらず。
「どうしたのだ?」
「いえ、さっきまで確実にいたのですけど……申し訳ありません! 殿下から目を離して誘拐されてしまいました! この責は私の命で償いたい所存です!!」
「まてまて。まだ誘拐だと決まっていない。それにここは警備が万全なのだから、フィリップが勝手に出て行っただけだろう。そのうち帰って来るだろうから、少し待たせてもらってもいいか?」
「はっ! すぐにお飲み物をご用意させていただきます!!」
焦ったボエルは切腹する勢いであったが、フレドリクに優しく諭されたのであった。
「居座りやがった……」
フィリップがどこにいるかと言うと、バルコニーの陰になっているところ。ルイーゼの声が聞こえたから慌てて隠れたのだ。
「また聖女ちゃんだけこっち見てるけど……なんなの? 僕、くさいのかな? あ、逃げなきゃ」
窓から覗き見ていたフィリップは、ルイーゼが立ち上がったので屋上に登り、誰もいないのを確認したら寮の中に戻って、女子寮の探検に行くのであった……
「どうもどうも。第二皇子だよ~?」
女子寮の1階はパラダイス。位の低い者しかいないので、第二皇子登場で女子たちは浮き足立ち、めちゃくちゃチヤホヤしてくれるのでフィリップも鼻高々。
普通、女子寮を我が物顔で歩く男子なんて皆無なのだから、一部の女子からは「はしたない」とか陰口を叩かれている。だが、そんな女子こそ、からかいがいがあるとフィリップは寄って行ってるな。
最終的にはラウンジに陣取って、女子を侍らせる始末。めちゃくちゃエロイ顔で値踏みしてるけど、こんなことをしているのは理由がある。
ボエルが「誘拐された」とか言っていたから、派手に動いて居場所を教えていたのだ。たぶん……
「「「「「キャーーー!」」」」」
「ヤベ。兄貴が先に来ちゃった」
でも、作戦は失敗。黄色い悲鳴が聞こえて来たのでフィリップは「第一皇子だ!」とか指差して女子の隙を作り、ラウンジをこっそり抜け出して女子寮探検を再開するのであった。
「やっと見付けた!」
フィリップが自室で今日のことをメモっていたら、ボエルが怒鳴りながら入って来た。
「アハハ。遅かったね~」
「遅いじゃねぇ! 勝手にチョロチョロ出歩くな!!」
実はアレから三度もフレドリクとバッティングしたから、フィリップはその都度身を隠していた。なので、目撃情報は至る所にあったからボエルは寮内を走り回っていたので激オコだ。
「ここは安全なんだからちょっとぐらい、いいじゃ~ん」
「よくねぇ! フレドリク殿下も、弟に避けられてるとヘコンでたぞ!!」
フレドリクがヘコンでいたと聞いて、フィリップもちょっとは悪いと思った。
「別にお兄様は避けてないんだけどねぇ~……人見知りだから、あの大人数で会いたくなかっただけだよ。なに喋っていいかもわからないし」
「噓ばっかりつくな! 女子は侍らせてただろ!」
「女の子好きの女子を探してただけだよ~」
「マジで? ……いた??」
「マジでマジで。でも、まだ見付かってない」
「マジか~……じゃねぇ! フレドリク殿下に悪いと思わないのかよ!?」
「ちょっとはね。今度、2人きりならいつでも会うって伝えておいて」
フィリップは話を逸らそうとしたけど、今回は上手くいかなかったので、折中案を出してごまかすのであった。
「ところで、本当にいなかったのか?」
「まだって言ってるでしょ~。ごはん持って来てよ~」
やっぱり気になるらしく、ボエルはちょくちょくそれとなくツバを付けたい女子の容姿を伝えるのであったとさ。
12
お気に入りに追加
175
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

ぽっちゃりおっさん異世界ひとり旅〜目指せSランク冒険者〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
酒好きなぽっちゃりおっさん。
魔物が跋扈する異世界で転生する。
頭で思い浮かべた事を具現化する魔法《創造魔法》の加護を貰う。
《創造魔法》を駆使して異世界でSランク冒険者を目指す物語。
※以前完結した作品を修正、加筆しております。
完結した内容を変更して、続編を連載する予定です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる