夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
上 下
125 / 374
六章 夜遊び少なめ

125 新メイド

しおりを挟む

 帰る直前に、奴隷館のキャロリーナに身バレしてしまったフィリップ。しばらく2人でワーキャーやっていたけど、疲れたのかゼーゼー言いながらベッドに倒れ込んだ。

「なんでわかったの?」

 息が整ったフィリップは、ようやく謎解きをする。

「なんでと言われてもぉ、勘としかぁ……フィリップ殿下が旅立った日に君はいなくなってぇ、帰って来た次の日に現れたらぁ、疑いたくもなるわぁ。歳も近そうだしぃ」
「確かに……これ、他の人も気付きそう?」
「勘のいい人ならぁ。夜の街でもぉ、君の正体はフィリップ殿下だと少しだけ噂があったからぁ、気を付けたほうがいいわねぇ」
「うっ……もうしばらく色街には近付かないほうがいいか……」
「そうねぇ。あたしのところは箝口令敷くからぁ、毎日来てもオッケーよぉ」

 自分の正体がバレると遊びづらくなるから、フィリップも夜遊びは自粛したほうがいいと思ったけど、気になることはある。

「いちおう聞くけど、僕を他の女に近付けさせないために、身バレの話した?」
「そんなわけないでしょぉ。フィリップ殿下と知ってしまったからぁ、そのネタ使っただけよぉ」
「鶏が先か卵が先かですか……」
「ラッキー。ウフフ~」

 フィリップ、ガックシ。身バレさえしなければ夜遊びできたはずだが、ここで身バレしたから助かった可能性もあるので怒ることもできない。

「ちなみに、第二皇子と知ってもキャロちゃんは変わらないんだね」
「お忍びで来てるんでしょぉ? それならそう対応するのがプロよぉ。そんな貴族、五万といるしぃ~」
「さすがキャロちゃ~ん」
「でも、よくよく考えたら、初めて会ったのは8歳? そんな子供にあたしはなんてことを……陛下にバレたら殺されるのでは??」
「なんか早口になってるよ? 大丈夫??」

 フィリップの年齢は現在12歳。それを思い出して、いまさら怖くなったキャロリーナ。

「ところでぇ、どうやって城から抜け出してるのぉ~?」
「それは秘密。もしも脅して聞き出すなら、もう帝都では遊ばない。キャロちゃんもどうなるかわからないよ?」
「うっ……言いふらしてもいいことなさそうねぇ。最悪、あたしが裁かれそう……わかったわぁ。もう聞かないわぁ~」
「うんうん。そのほうがいいよ~」
「でもぉ、もう1回だけいい~?」
「もう1回? もう1個じゃなくて??」

 フィリップは質問のことだと思っていたら、キャロリーナは絡み付いて下半身をワサワサした。

「本当の君としたいのぉ~」
「あ、そゆこと。いいけど……できるかな??」

 というわけで、カツラを取ったフィリップとマッサージを楽しむキャロリーナであった……


 キャロリーナに全てを吸い取られた翌日は、フィリップは精も根も尽き果てていたので朝から仮病。昼も起きられずに夕方に目覚め、腰をさすりながら奴隷館に行っていた。
 アガータのお風呂のあとは、ムラムラしているとかじゃなくて目の保養のために、キャロリーナに会いたくなったみたい。この日はマッサージは少しだけして、フィリップは何故かキャロリーナの裸体を描いてた。下手とか言われてたけど。

 その翌日は、待ってましたの新メイドのお披露目。フィリップは仮病は使わずに、眠そうに新メイドがやって来るのを待っていた。

「フリューリング侯爵家が長女、ヴィクトリアと申します。これからフィリップ殿下のお世話をさせていただきます」

 アガータが連れて来たヴィクトリア・フリューリング侯爵令嬢18歳は、巨乳ではなく貧乳でもなくちょうど真ん中辺りの大きさの金髪美女。
 アガータの補足を聞きながらフィリップは舐めるように見て、少し気になる点はあるものの「いいね~」と、息子さんと語っている。

「坊ちゃま。この者は至らぬ点が多々ありますので、何かありましたらいつでも私に言ってください。教育しに参りますので」
「うん。わかったよ。短い間だったけどお疲れ様」
「いえ。たいしたことではありません。では、私は失礼いたします」

 フィリップが労いの言葉を掛けると、アガータは謙遜けんそんし、綺麗なお辞儀をして部屋から出て行ったのであった。


「さってと。僕、体調悪いから、もうちょっと寝るね~」

 ヴィクトリアと2人きりになったフィリップは、うるさいのがやっと出て行ったと嬉しそうに寝室に入り、ベッドに飛び込んだ。

「はぁ~。ダル……」

 そして布団に入ったところで、ヴィクトリアがベッドに腰掛けて疲れたように呟いた。

「えっと……何してんの?」
「やることもないから休憩」
「いや、掃除とかイロイロあるでしょ?」
「えぇ~? わっかんな~い」
「いやいやいやいや……」

 皇帝から教育しろとは言われていたが、ここまで何も知らない女がメイドをしていることにフィリップも驚きを隠せない。

「なんで何も知らないのにメイドなんかやってんの?」
「第二皇子のメイドになれば、フレドリク殿下に近付けるからよ。パパは第二皇子は寝てばかりの楽な職場だからって言ってたのにな~」
「そっちなんだ……」

 フィリップ的には第二皇子の妻の座を狙っているのかと思ったけど、ハズレ。ただ、会ってすぐにここまでナメられる経験をしたことがないので、こんなことを考えていた。

(なんだこいつ? 僕の下へやって来るメイドって、何か欠点がある人しかいないのか? いや、エイラもダグマーも欠点とは言えないか。なんだかんだでメイド業は満点だったし……てか、ついに寝やがったな……)

 フィリップが考え事をして黙っていたら、ヴィクトリアはベッドにゴロンと寝転がった。

(いや、ありえなくない? 皇子のベッドだよ? 僕のメイドになった人は、いまのところ全員ベッドに寝転んでるけど……でも、許可無く入って来のはこいつが初めてだ。どうしたモノか……)

 フィリップは襲ってやろうかと思っていたら、ヴィクトリアは寝返りを打ってフィリップのほうを向いた。

(しかし、どっかで見た顔なんだよな~……あっ! 乙女ゲーム! こいつ、フィリップのメイドで後ろにいた。聖女ちゃんにビンタしたヤツじゃん!?)

 このヴィクトリア、主要キャラではないが立派な出演者。帝都学院内でヒロインをビンタする事件が起こり、そこでフィリップがクビにするから、いまクビにしていいか悩み出した。

(とりあえず様子見してみるか。なんか辞めさせられない気がするし……)

 この世界は乙女ゲームに沿った世界。強制力が働いてヴィクトリアを辞めさせられない未来が見えたフィリップは、このまま寝てしまうのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ズボラな私の異世界譚〜あれ?何も始まらない?〜

野鳥
ファンタジー
小町瀬良、享年35歳の枯れ女。日々の生活は会社と自宅の往復で、帰宅途中の不運な事故で死んでしまった。 気が付くと目の前には女神様がいて、私に世界を救えだなんて言い出した。 自慢じゃないけど、私、めちゃくちゃズボラなんで無理です。 そんな主人公が異世界に転生させられ、自由奔放に生きていくお話です。 ※話のストックもない気ままに投稿していきますのでご了承ください。見切り発車もいいとこなので設定は穴だらけです。ご了承ください。 ※シスコンとブラコンタグ増やしました。 短編は何処までが短編か分からないので、長くなりそうなら長編に変更いたします。 ※シスコンタグ変更しました(笑)

猫王様の千年股旅

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。  紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。  魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。  千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった…… ☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。 できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。 初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも…… 「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。 R指定は念の為です。  毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

転生リンゴは破滅のフラグを退ける

古森真朝
ファンタジー
 ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。  今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。  何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする! ※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける) ※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^ ※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

ma-no
キャラ文芸
 お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……  このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。  この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。 ☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。  この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。  1日おきに1話更新中です。

処理中です...