夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
上 下
120 / 381
五章 二年生も夜遊び

120 カールスタード王国を出発

しおりを挟む

「ちょっと確認したいことがあるのですが……」
「まだあるの~?」

 カールスタード王国最後の夜はクリスティーネの質問が続くので、フィリップも嫌そう。ただ、「なんでも聞いて」と言った手前、クリスティーネがそこを突いて来たので渋々話を聞く。

「帝国が攻めて来るってか……」

 クリスティーネの確認は、帝国のことだったのでフィリップも考え込んでしまった。

「帝国の悲願は、大陸制覇と何かで読んだことがありまして……現在の皇帝陛下はそんなことを考えているのですか?」
「父上は……内部情報は言えないけど、ないと思う。ただ、考えてることはよくわからないかな~?」
「跡を継ぐのはフレドリク様ですよね? そっちは……」
「兄貴はないない。優しすぎるから、人が死ぬような戦争なんて絶対やらないよ」
「そうですか……」

 フィリップの反応からクリスティーネも安心したようだけど、不安要素はまだあるみたい。

「もしも何かの間違いでフィリップが皇帝になった場合は?」
「ないない。僕が皇帝になることが一番ない」

 これは大ウソ。いや、フィリップはシナリオに沿ってフレドリクと決闘したいだけだから、本心かもしれない。皇帝になっても誰かに仕事を押し付けようと考えてるし……

「もしもって言ってるじゃないですか~。それにフィリップだったら、1人で大陸制覇できちゃうかも……そんなこと考えてませんよね!?」

 最終兵器フィリップの有能さも強さも、どこでも忍び込めるのも目の前で見ていたのだから、クリスティーネは心配になって声が大きくなった。

「大陸制覇か~。いいね~……」
「やっぱり……」
「全ての国の女性を抱くのは、男の夢だよね~……移動が問題だな。なんとかして、速く移動できるすべはないかな……」
「大丈夫そうですね……」

 フィリップが考え込んだので、クリスティーネは「最悪なこと」を頭に思い浮かべたけど、フィリップのエロイ顔を見て「最低なこと」に意見が変わるのであったとさ。


「もういいです! もうひとつ聞きたいことがあるので、その顔やめてください!!」
「ん? ジュルッ。なになに??」

 フィリップが世界中の女性に想いを馳せてヨダレまで垂らすモノだから、クリスティーネはフィリップをぐわんぐわんと揺らしてこちらの世界に呼び戻した。

「赤ちゃん……フィリップとの赤ちゃんができたらどうしたらいい?」
「へ? ……できたの!?」

 でも、フィリップは地獄に叩き落とされた顔になってるよ。

「アレだけしてたので、できてもおかしくないじゃないですか?」
「セーフ!!」

 フィリップがめちゃくちゃ喜ぶので、クリスティーネはまたポコポコ叩いてる。

「たぶん、大丈夫かな~? いつも最後は胸とかでしてもらってたし……」
「どういうことですか??」

 フィリップは赤ちゃんができるメカニズムを丁寧に説明したら、クリスティーネは驚愕の表情。最後の最後まではしてなかったと、初めて知ったらしい……

「だから、次の女の子の日が来るまでは、他の人とはしないほうがいいかな~? 誰の子供かわからなくなっちゃうし……あ、もう数日で来るから、できないかな??」
「なんで知ってるのですか!?」

 クリスティーネの体のことまで熟知しているフィリップ。この日は、クリスティーネに気持ち悪がられたり子種を狙われるのに、残りの時間はまたマッサージに戻るフィリップであった……


 翌朝は、夜遅くまで起きていたフィリップはめちゃくちゃ眠そう。クリスティーネとの最後の夜だし、出発したら寝れるからと3時間程度しか寝ていないからだ。

「フィリップ殿下、2年前とは比べられないぐらいご立派になられ……ましたな! わははははは」
「……」

 帰りの護衛も、ホーコンとダンマーク辺境伯兵。ホーコンはフィリップをヨイショしていたが、あまり背が伸びていなかったので途中で止まったけど、なんとか笑ってごまかせた。と、思っている。
 フィリップはダグマーの後ろに隠れて睨んでいるから、バレバレだ。あと、朝っぱらからの大声は殺意が生まれるから睨んでるっぽい。

 とりあえずフィリップはホーコンと軽く挨拶をしたら、授業を中止してまで見送りに来ている生徒たちの最前列に立つラーシュに声を掛けていた。

「今まで護衛、ご苦労様。最初は堅苦しいヤツだと思っていたけど、けっこう楽しかったよ。ありがとね」
「はっ! もったいないお言葉で。私も殿下のことを、少し勘違いしておりました。時々ですが、ご立派な姿に感動しました!」
「ラーシュ君。大声でそんなことを言われると、僕の立場がね……変わんないか。アハハハハハ」
「そういう寛大なところも好感を持てました。あははははは」

 軽く嫌味を言い合った2人は、握手してハグ。思ったよりフィリップも、ラーシュのことを気に入っていたみたいだ。


 それからカラフル王子にも少し声を掛けていたら、カールスタード兵や豪華な馬車がやって来たのでホーコンたちが構えたが、フィリップはダグマーにゴニョゴニョ言って通してもらった。
 フィリップの目の前に止まった馬車から出て来たのは、如何いかにも女王って感じの格好をしたクリスティーネ。ここに集まる者は、誰もがその美貌に目を奪われた。

「あ、女王様だ~。最後にオッパイ触らせてくれるの??」

 でも、フィリップの発言で、全員「ズコーッ!」ってこけかけていた。昨日別れを済ませてサプライズ登場なのに、フィリップはよくこんな対応できたモノだ。

「フィリップ殿下は相変わらずですね。これでよろしいですか?」
「オッフ……」

 クリスティーネはフィリップの顔を胸で挟むように抱き上げた。

「カールスタード王国は、帝国のお口添いのおかげで生まれ変わることができました。皇帝陛下に感謝しているとこの口でお伝えしたいところですが、私はもうしばらく国を離れることができません。その代わりに、フィリップ殿下に多大な感謝を……」
「ぐるじ~~~」
「ウフフ。申し訳ありません」

 クリスティーネはフィリップを下ろすと、頬にキスをして一歩下がった。

「父上には、そのオッパイ……じゃなかった。その旨、必ず伝えるよ。カールスタード王国の益々の発展、僕も祈っているね」
「はい……本当にありがとうございました。私も、フィリップ殿下と帝国が健やかなることを祈っております」
「ちょっとしゃがんで~」

 クリスティーネがしゃがむと、フィリップも頬にキスをしてから馬車へと乗り込む。

「みんな~! 愛してるよ~!! バイバ~イ」

 そして馬車の入口でフィリップは振り向き、クリスティーネを見詰めて声を掛け、馬車は走り出したのであった……



「殿下……大丈夫ですか?」

 走り出した馬車の中では、ダグマーが心配そうにフィリップを抱き締めていた。

「ううぅぅ……なんでもないぃぃ~……うわ~~~ん」
「そんなに泣くほどの思い入れがあったように見えなかったのですが……」

 学校を休んでばかりいたフィリップが何故か大泣きしているからだ。そのせいで、最後の「愛してる」発言は誰に言っていたのか聞けないダグマーであった。

 同時刻、クリスティーネも同じように馬車の中で涙していた。

 この2人は初めての恋人と失恋を経験したのだから、涙が止まらなくなってしまったのであろう……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

猫王様の千年股旅

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。  紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。  魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。  千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった…… ☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。 できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。 初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも…… 「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。 R指定は念の為です。  毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。

九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。 異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。 人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。 もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。 「わたくし、魔王ですのよ」 そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。 元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。 「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」 果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。 無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。 これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。 ※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...