114 / 379
五章 二年生も夜遊び
114 クリスティーネの戴冠式
しおりを挟むカールスタード学院の2学期が終わると、クリスティーネの戴冠式が行われる。
他国からの出席者は急に決まったこともあり、近隣諸国のお偉いさんが……ゼロ。カールスタード学院の生徒が大多数。
カールスタード王国の貴族が集まるということは謀反の可能性があるから、親は子供たちを売ったらしい……このこともあって、ラーシュもお留守番だ。
カールスタード王国の領主や貴族の当主は全員参加と打診したが、約3割は欠席。まだクリスティーネを認めていないから、仮病を使ったみたいだ。
フィリップも仮病で休みたかったが、いつも仮病を使っているのでクリスティーネには通じず。なので、パートナーのように扱われないことを条件に、ドレスアップしたダグマーと一緒に出席していた。
ダグマーがこんな格好をしているのは、不本意ながら。メイド姿ではフィリップが相応しくないとかブーブー言っていたから仕方がないのだ。そのせいで「どこの女!?」と、フィリップはクリスティーネから睨まれていたけど……
戴冠式の内容は、お城では立食パーティーと王位に就く式典。子供が多く出席しているので、どちらも短時間の形だけだ。
いちおう帝国第二皇子であるフィリップが祝辞を読むというミッションがあったから、ダグマーとラーシュがルビ付きのスピーチ原稿を書いて渡していたけど、フィリップはいざ壇上に上がったところで落としたとか言ってた。
そのせいで、ダグマーは立ちくらみを起こしていた。
本当は、こんな社交辞令の定型文を読みたくなかっただけ。フィリップは自分で夜中に頑張って書いて覚えたスピーチ原稿を暗記で喋り、出席者からは珍しく拍手が起こっていた。
ただし、カールスタード王国の貴族は冷や汗モノ。
「帝国の皇帝が認めた女王を家臣が認めず、あまつさえ欠席するなど言語道断。ここが帝国だったら打ち首獄門だ。女王にも、そうするように進言する。あとで名前を教えてくれ」
とか言っていたからだ。
そう。フィリップはクリスティーネの手助けするためにここに立っているから、社交辞令のスピーチ原稿は握り潰したのだ。
後日、この話を人伝に聞いた欠席していた貴族がこぞって押し寄せたので、クリスティーネが快く許したら、支持率が上がったんだとか……
14時過ぎぐらいまでにこれらのプログラムをこなしたら、クリスティーネはパレードに出発。馬車の上から手を振り、中町や外町の住人から大歓声を受ける。
他国の出席者は、ここまで。お祭りを楽しみたい人は、中町の広場に向かっていた。
フィリップは興味がないので「ナンパしたい」とダグマーに言ったら、寮に監禁。そもそもスピーチ原稿を無くしたことの説教は忘れてなかった模様。
しかし、内容じたいはそこまで悪くなかったので、ダグマーも褒めていた。だが、寮に残っていたラーシュは「うっそだ~」と信じないので、フィリップは怒っていた。
自室に戻ると、ドレスアップしたダグマーとのお楽しみ。ダグマーをベタ褒めして、ついでにダンス。ダグマーも一生の思い出になったと、フィリップを踏んでいた。見た目はアレだけど、彼女気分を味わえて楽しかったらしい……
夜にはカールスタード王国の身内だけでパーティーが開かれているが、マッサージを終えたダグマーが出て行ったら、フィリップは夜の街に消えるのであった……
「「「「「クリスティーネ女王様、バンザ~イ!」」」」」
「「「「「わはははは」」」」」
「「「「「あはははは」」」」」
夜の街はまだ眠らずに人が溢れ、そこかしこで笑い声やクリスティーネを称えるお祭り騒ぎとなっていた。
「「「「「女王様にかんぱ~い!」」」」」
その雑踏を抜けてフィリップがやって来た場所は、マッツの酒場。ここも酔っ払いは騒がしいので、グイグイ押してなんとかカウンター席に飛び乗った。
「繁盛してるね~」
「おお。ハタチさん。女王様、様々だ。ちょっと待ってくれ。これ、ジュースな」
マッツは忙しいのにフィリップの飲み物だけは先に出して、他の注文の対応をしている。その残されたフィリップは、後ろ向きに座り直して騒ぐ人を見ながらチビチビやっていた。
「おう! 大将!!」
「やっぱりいた」
そこにオロフとトムが酒瓶を片手にやって来て挟むように座った。
「ご機嫌だね~」
「そりゃ、こんなにめでてぇ日はないだろうが」
「俺たちがこの手で手に入れた平和」
「その立役者が、こんな場末の酒場で何してんのって感じだね~」
「わはは。違えねぇ」
「ハタチさんに、そっくりそのまま返す。こんなところにいていいの?」
「僕は部外者だから、いいのいいの」
「「一番の立役者で彼氏だろ?」」
フィリップの部外者発言は不発。オロフとトムは、フィリップとクリスティーネがイチャイチャしていたところを見ていたので、彼氏を否定しても信じてくれない。
「もう別れたんだから、放っておいてよ~」
「フラれたのか?」
「ポイされた」
「僕からフッたの! あと、僕とクリちゃんの関係、仲間に秘密にするように言っておいて。喋ったら……殺す」
「「はいっ!!」」
2人がフラれたと決め付けるので、フィリップはシンプルに脅し。これで口は塞げたけど2人は恐縮しっぱなしになったので、フィリップはお酒を奢って楽しい話を振るのであった……
11
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

猫王様の千年股旅
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。
紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。
魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。
千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった……
☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。
できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。
初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも……
「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。
R指定は念の為です。
毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる