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五章 二年生も夜遊び

111 ドロップアイテムの確認

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 フィリップが物凄く最低なハメ技を使って10数分……

「風が止まった……死んだ?? ゲフゥ~」

 あれほど吹き荒れていた風がなくなったので、フィリップはゲップと共に食道から上がって来た物に耐えながら、氷の壁から顔を出した。

「なんか赤黒くなって倒れてるけど……死んだから色が変わったのか??」

 そこには、ブラックドラゴンが寝そべっている姿。色が変わっていたのは、HPが残り一割になって発狂モードに突入したからなのだが、フィリップは気付かず最強魔法を連発したから何もできずに倒れただけだ。

「クックックッ……」

 そうと気付かずフィリップが近付くと、ブラックドラゴンの色が戻り、頭を起こして笑い出した。

「第二形態か!?」

 するとフィリップは氷の壁の裏に走り、そこから様子を見ている。

「強者よ。我の負けだ。もう寝る」
「はあ? 死なずに寝るの??」

 ブラックドラゴンは毒気が抜けたような顔で負けを認めたので、フィリップは文句を言いに前に出て来た。

「おお。そうだった。これを持って行け」
「話を聞けって。お前は何者でここでなんで寝てるの?」
「では、地上に送ってやろう。気が向いたらまた遊びに来い。その時は、腹の足しにしてやるからな。わはははは」
「だから話を……」

 ブラックドラゴンが高笑いするなか、フィリップの目の前の景色が変わるのであった……


「聞け~~~!! って、1階!?」

 と、ノリツッコミみたいになってるフィリップが現れた場所は、ダンジョンの1階。帰還アイテムを使ったら戻って来る場所だ。

「クッソ~。バグってばっかりだから、なんか勝った気持ちになれないんだよな~……まぁいいや。宝箱を確認しよっと」

 完全にハメ技で倒したから勝った気持ちになれないのは置いておいて、フィリップは同時に転送された宝箱をウキウキしながら開けた。

「角? と、銅貨じゃなくて初代硬貨か。でも角って素材か~? いや、持ち手みたいなのあるな」

 宝箱の中身は、初代硬貨とドス黒くて怪しい気配の漂う角のような物体。フィリップはたいした物じゃないとイラッとして、そのただならぬ気配に気付かずに角の持ち手を握った。

「反り返り具合からみて、剣っぽいな……ステータスはなになに……ファフニールソード? ……てことは、アイツ、邪龍ファフニールだったの!?」

 倒してから超有名人だったと知って、フィリップも超ビックリ。邪龍ファフニールとはこの世界の神話に出て来ており、神龍バハムートとの戦闘の末、ファフニールは大地に、バハムートは空になったとなっているからだ。

「そりゃ強いし死なないわけだ~……てか、バハムートもどこかにいるのかな?」

 考えても乙女ゲームにもヒントすらなかったので、フィリップはステータスの確認に戻る。

「うおっ……なんだこのブッ壊れ装備は……」

 ファフニールソードの攻撃力は、300。その上、装備者のステータスを全て倍にしてくれるのだから、あのフィリップでも引いている。

「兄貴のアーティファクトより倍ぐらい強いぞ……ま、まぁ、僕に足りなかった物が手に入ったんだから、結果オーライ! これでレベル上げが楽になるぞ~……って、今日1日で5も上がってる!?」

 嬉しい誤算やシンプルに驚くことの連続なので「今日はもう疲れた」と、早めに帰って行ったフィリップであった。


 翌日はダグマーと遊んだり娼館に行ってダンジョンには入らず。疲れを癒していたらしい……
 その翌日に、ようやくダンジョンに潜り、地下20階のセーブポイントで2日前に手に入れた物を装備していた。

「お~。ケルベロスコート、使えるじゃん。着たらピッタリのサイズになった。それに防御力も高い。これだけで100もあるよ。温度調整機能もあるんだって。早く言ってよね~」

 フィリップが誰と喋っているかわからないけど、黒い毛皮のケルベロスコートは大満足らしい。ただ、動きにくいみたいなので、フィリップはマントみたいに使えないかと試していた。

「おお! 肩から掛けてるだけでも落ちない! なんて便利なんだ!!」

 ケルベロスコートは変な機能が付いてるようなので、フィリップも大興奮。

「これに合う服は、やっぱり黒だよね~? あぁ! 黒い軍服と帽子が欲しい! 絶対カッコイイのに~~~」

 厨二男子の心がうずいているから……無い物ねだりは続いたが、フィリップは黒を基調とした服を着てファフニールソードを持つと、モンスターに試しに行くのであった。

「うお~。カッコイイ~。違う服でも似合うのないかな~?」

 早く行けよ。

 フィリップは小一時間ぐらい、姿鏡の前から動かないのであったとさ。


「さあ! ファフニールソードの切れ味、とくと御覧あれ!!」

 ようやくフィリップは、ファフニールソードを試そうとモンスターが出る区域に足を踏み入れたけど、テンション上がりすぎてかっこつけてるな。

「てか、これってソードっなってるけど、斬れるの? 個人的には棍棒にしか見えないんだけど……」

 いまさらファフニールソードの見た目に言及するフィリップ。どう見ても角だもん。

「とりあえず、サイクロプス君で試してみます! 喰らえ~~~!!」

 フィリップはカクカク動いているサイクロプスっぽいモンスターに素早く近付いて斬り付けた。

「はて? なんで穴が開いた??」

 しかし、それは斬れたのではなく、サイクロプスの胴体に大穴が開いたのでフィリップも首を傾げている。

「え? なになに? なにこの武器?? 地面が陥没したり斬れたりするぅぅ~~~!!」

 ここで初めて素振りをしてみたら、ファフニールソードは一振りごとに面白い効果が現れるので、またまた大興奮。そのままダンジョン内を走り回り、ポリゴンモンスターを笑顔で虐殺していた。

「制御不能ッス……」

 その結果、斬撃が飛んだり、衝撃波が飛んだり、普通に斬れたりとすることはわかったけど、全てランダムだったのでフィリップは肩を落とすのであったとさ。
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