103 / 376
五章 二年生も夜遊び
103 飽き飽き
しおりを挟むカラフル王子と接触してから3日。カラフル王子は短い休憩時間を使い、なんとかフィリップと会話するところまでやって来た。ラーシュがこのままではいつまでも決めポーズをやらされると思って、アシストしたのが大きいけど。
「で……なんだっけ?」
「ですから、暴力や暴行を受けた人に謝罪しろと言ってるんですよ~」
あまりにも毎日会いすぎて、バルタサールも怒りのボルテージは激減してるな。
「そんなのそいつらに被害届け出させたらいいことでしょ。てか、なんで今まで出してないの?」
「それは~……時間ですね。また来ます」
フィリップの反撃に返せなかったカラフル王子たちは、少し早いが撤退。次の休み時間には勝ち誇った顔で戻って来たけど、自発的に決めポーズをやったから、普通の顔になってた。
「裏から手を回しているのですね! 被害届も何度も握り潰されたと言ってましたよ!!」
「お~。新情報が出て来たね~」
「拍手していると言うことは認めるのですね!!」
「認めないよ。証拠持って来たら考える。被害者でもいいよ~?」
「ああ言えばこう言う……わかりました! 目に物見せてやります!!」
というわけで、カラフル王子はフィリップの悪事を暴こうと走り回り、2日後にやって来た。
「汚いぞ! 官憲にも被害者にも裏から手を回しただろ!!」
「決めポーズ忘れてるよ~?」
「クソ~~~!!」
せっかく勢いよくやって来たのに、決めポーズをやらされて負けた気分になったカラフル王子。
「それで~……証拠は??」
「だから、殿下が握り潰しているから出て来ないし、被害者も怖がってついて来てくれないんですよ~」
「だったらもう諦めな。敵が強大すぎただけだよ」
「こ、これが帝国の力か……私たちは諦めないぞ~~~!!」
カラフル王子は帝国の力に臆することなく、フィリップと戦い続けるのであった……
カラフル王子が教室からダッシュで出て行くと、ラーシュは哀れんだ顔で自分の席に座った。
「いい加減、無駄なことをしてると教えてあげたらどうですか?」
「無駄なことなんてないよ。これも経験だ。ニヒヒ」
「なんの経験なんですか。噂話を信じるなと、一言いってやればいいことですよね?」
「違う違う。あいつら正義の使者だと勘違いしてんじゃん? 悪者と戦うなら、それ相応の証拠を持って来ないと倒しちゃダメって教えてあげてるの」
「殿下が悪者……似合ってますね」
「やっぱり~? この制服、黒く染めてもらおっかな~??」
「ダメですからね! ただでさえ勘違いされがちなんですから、服装ぐらい普通にしていてください!!」
ラーシュは嫌味を言ったのにフィリップが乗って来るので、慌てて止める。フィリップではやりかねないと思ったらしい……
それから2日経つと、フィリップはいつも通りクリスティーネの寝室を訪れて、マッサージをさっそくやってからお喋りしていた。
「小国連合の王子と揉めてるらしいですね」
「ん~? クリちゃんの耳にも入ってるんだ」
「はい。揉めてるだけならフィリップに任せておこうと思ったのですが、4人から直訴状が届きまして」
「プッ。あいつら、クリちゃんに泣き付いたんだ」
「要約すると、フィリップが帝国の権力を使ってやりたい放題してると書いていたのですが……女子生徒をレイプしたのですか??」
「けっこう効果あるみたいだね……」
クリスティーネは信じないと思っていたのに、怒って問い詰めて来たからフィリップも驚きを隠せない。
「僕がそんなことしないの一番知ってるでしょ?」
「そうですけど~……私の時は近くなかったですか??」
「近いけど、ギブアンドテイクじゃ~ん。クーデターにいくら使ったと思ってんの? クリちゃんの体ひとつで返せないよ~??」
「ですよね~。フィリップは、そんなことしないですよね~」
「話、逸らしたね……」
お金の話を出したら、クリスティーネは従順に。フィリップはスラム街全域にお金をバラ撒いていたのだから、とても返せる額ではないもん。
「小国連合の王子には、いい加減にしないと死刑にすると返しておきますね~」
「やりすぎだから!!」
ただし、クリスティーネが怖いことを言っていたので、フィリップは「一切手を出すな」と止めて、クリスティーネに手を出してから帰って行ったのであった。
「「「「「色彩戦隊ブンテレンジャー!!」」」」」
今日も今日とてやって来たカラフル王子。
「飽きたから、もうそれいいや」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
でも、フィリップは冷めた感じで断るので、5人はガックシ。今日のは会心のできだったらしいけど、我に返ったら「うっひゃ~!」と心の中で喜んでいた。パープルのポントゥス以外。
「それで……今日はなんの用?」
「女王陛下にも手を回していたとは驚きです。どれほど悪事を隠したいのですか!」
「別に隠してないんだけどな~……」
「ここまで証拠が出て来ないということは、隠しているからでしょう!」
「それは、僕が悪いことしてない証拠というのでは?」
「被害者は泣いていたのですよ!!」
このやり取りにもフィリップは飽きて来たので、わかりやすいヒントを与えてあげたけど、バルタサールは聞く耳持たず。
「僕なら被害者を疑うな~」
「なんて外道なんだ! 殿下がやったことだろう!!」
「もういいや。タイムア~ップ」
「タイムアップ??」
「明日からこのフロアに立ち入り禁止」
「逃げるのか!?」
「逃げるも何も、お前たちはなんの証拠も持って来ずに、僕を非難しているだけじゃん。そういうのなんて言うか知ってる? 冤罪って言うんだよ」
「え、冤罪……」
フィリップに睨まれたカラフル王子は、周りを見渡したけど味方になってくれそうな目はないので、冤罪が事実じゃないかと頭によぎった。
「そ、そんなことない! 必ず証拠は見付け出してやるからな~~~!!」
「もう来るなよ~~~」
それでも諦め切れないカラフル王子は、捨て台詞を残して走り去るのであった……
11
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜
言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。
しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。
それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。
「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」
破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。
気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。
「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。
「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」
学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス!
"悪役令嬢"、ここに爆誕!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……
ma-no
キャラ文芸
お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……
このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。
この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。
☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1日おきに1話更新中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猫王様の千年股旅
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。
紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。
魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。
千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった……
☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。
できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。
初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも……
「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。
R指定は念の為です。
毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる