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四章 クーデター後も夜遊び
080 クーデターが終わったあと
しおりを挟むクーデターの翌日……
「殿下! 大変です! 起きてください!!」
寮の最上階にあるフィリップの部屋では、焦ったダグマーが大声を出していた。
「ん、んん……ダグマー……チュ~」
「はい。しました。起きなさい!」
「あうっ!?」
寝惚けたフィリップにちょっとだけ付き合ったダグマーは、フィリップの丸い物をギュッとして起こした。
「たまには優しいキスで起こしてくれない?」
「しましたよ。それでも起きなかったからです」
「マジで?」
「マジです。そんなことより!」
ダグマーは冗談を言わないからフィリップも本当だとは思ったけど、大声で考えは遮られた。
「クーデターは成功となりました」
「成功? って、王様が負けたってこと?」
「はい……たった1日で終わらせるとは、首謀者はとんでもなく優秀だったみたいです」
「マジか~……王様はどうなったの? まだ生きてるよね? 反撃するよね??」
「いえ……先程、王族全員、皆殺しにされました……」
「え……」
フィリップは全部知っているので驚いた演技中。どうやらダグマーは、外の様子がおかしかったから人に紛れて城に近付いたとのこと。
すると城壁の上に王族が拘束されており、クリスティーネが横領や無駄遣い等の罪状を読み上げ、全員縛り首にしたそうだ。
と、これもフィリップのアイデア。いきなり殺すよりも、やっていそうな罪状をでっち上げて殺したほうがクリスティーネの心証がよくなる。あとから探せば必ず出て来ると踏んでいるので、後日、詳しい罪を発表することになっている。
「てことは~……首謀者のアクション待ちってことで合ってる?」
「そうなりますね」
「じゃあ、守りだけ固めておいて。おやすみ~」
「この状況でよく眠れますね……」
「ムニャムニャ~」
そりゃ、フィリップが黒幕だし、昨夜は2時間ほどしか寝ていないので、すぐに夢の中に戻れる。その幸せそうな顔が腹の立ったダグマーは、デコピンしてから部屋を出るのであったとさ。
それから2時間が経つと、フィリップはまたギュッとされて起こされていた。
「ふぁ~……今度はどったの?」
「カールスタード女王という者から手紙が届きました」
「僕宛??」
「いえ。寮生全員に対してです。ですので、目を通しております」
「なんだって~??」
手紙の内容は、クリスティーネが新女王に即位したこと。カールスタード学院はこれまで通り運営するから安心してほしいこと。安心できないなら、滞在費の返還や送り届ける兵も用意する等が書かれていたそうだ。
「へ~……わりといい人そうだね」
「手紙の内容だけ見ると……」
「何か心配事??」
「有能すぎる人物ですので、罠があるかもしれません」
「あ~……町を出たところでグサリっか。盗賊のせいにすれば、なんとでもなるもんね~。どうしよっか?」
「しばらく様子を見るしかありませんね」
「じゃ、そんな感じでよろしく~。おやすみ~」
フィリップはタオルケットを頭から被ろうとしたが、ダグマーに奪い取られて立たされた。
「えっと……なに??」
「先程の手紙をこれから食堂で説明しますので、出席してください」
「えぇ~~~」
この寮ではフィリップが一番位が高い。いくら指揮官を任命していてもこれだけはダグマーは譲れないので、フィリップを肩に担いで連行するのであった。
2階にある食堂でフィリップがウトウトするなか、ダグマーが手紙の内容とこれからの方針を発表すると、生徒たちもそれに倣ってしばらく様子見。フィリップが残っているし、一番先に出る勇気はないみたいだ。
この日はフィリップは何度も起こされて寝不足だったので、ダグマーと楽しんで夜遊びは自主規制。クーデターの終わった次の日は、疲れて動けないと前もってクリスティーネに伝えていたから早めに就寝していた。
翌日は昼型に戻そうと頑張って起きて、朝っぱらからダグマーに甘えていた。踏まれてたけど……
そうしていたらダグマーはいつの間にか消えており、「どこに行ったんだろ?」とか思いながらウトウトしているフィリップの元へ戻って来た。
「殿下。お客様が来ております」
「んん~? 僕に知り合いなんていないよ~??」
「カールスタード女王です」
「ああ~……来ちゃったか」
フィリップが昼型に戻そうとしていた理由は、クリスティーネが来る可能性があったから。フィリップ的には「来ないでくれ」と祈っていたけど、こうなっては仕方がない。
「それで……お会いになられますか?」
「う~ん……美人? 何歳??」
「はい??」
「だから見た目」
「若い美女ですが……」
「胸の大きさは??」
「大きかったと記憶しています」
「なるほど……」
フィリップの意図を読み切れないダグマー。
「わかった。今日は体調不良って言って返して。んで、招待状をくれたら登城すると言っておいて」
「え……向こうで会われるのですか?」
「そりゃ、美人でオッパイ大きいんだから、サービスするよ~」
「基準!? 前国王の時は邪険にしてましたよね!?」
「いいから言って来てよ~。待たせてるんでしょ~」
動機が不純では、ダグマーもビックリ。フィリップがそんな基準で決めているのだから、ダグマーは怒りながら部屋から出て行くのであった。
ちなみにこの日のダグマーの踏み踏みはいつもより強かったので、フィリップも痛い思いをしたらしい……
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