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三章 夏休みは夜遊び
055 乗っ取り作戦
しおりを挟む「おお~い。ナンパした子に逃げられたのに、どうしてくれるんだよ~」
マフィアは誰も娼館を運営してなかったのでフィリップはオコ。3人のトップは、拉致しようとしていたことに怒れとか思っているな。
「てかさ~……3組とも、似たようなこと言ってたじゃん? そんなにこの国は酷いの??」
急に普通のことを言われたから、オロフ、トム、ロビンはフリーズしていたので、フィリップはトムを指差して答えさせる。
「酷いなんてものじゃない。俺らは盗みとか汚れ仕事をしないと食っていけない。それでも何人もガキどもは死んで行く」
「ふ~ん……ロビンはわりと綺麗な服を着てるけど、何級なの?」
「3級です。でも、仲間の半数は4級市民なので、分け与えても足りなくて……」
「オロフも食ってけないの?」
「ああ。どんなにきつい仕事でも、給金は雀の涙だ。だから副業で用心棒とか盗賊まがいのことしてんだよ」
3人から話を聞いたフィリップはポンッと手を打った。
「つまり、全員、国に不満のある集まりなんだ~……これは予行練習には持って来いかも……よし! 面白そうだから僕がお前らの頭になってやるよ」
「「「はあ~~~?」」」
さっきまでふざけたことを言っていた人物が、ブツブツ呟いたり面白半分でトップになると言ったからには3人の声が重なった。
「要は、お前たちの敵は一緒ってこと。バラバラの力をひとつに集めるんだよ。打倒、国王! カールスタード王国を乗っ取ってやろうぜ!!」
「「「いやいやいやいや……」」」
フィリップが大それたことを言うモノだから、3人ともついて行けない。
「まずは先立つ物が必要でしょ? これあげる」
フィリップは肩から下げていたショルダーバックに左手を突っ込んで、銅貨でパンパンにしたらひっくり返した。
「「「こんなに!?」」」
「いや、ぜんぜん足りないでしょ?」
「銅貨1枚でも、2人ぐらいなら1日食い繋げるから……」
トムの答えに、フィリップはボソッと呟く。
「あ~……そっか。在庫処分だったんだけど……」
「え??」
「なんでもない。とりあえず、それみんなで分けて。また明日も持って来るからね」
「「おう!!」」
「はい!!」
いちおうお金だからとダンジョンで拾って使うことの無かった銅貨で、これだけ感謝されるとフィリップも困る。
しかし、そんなことを言えないフィリップは話を変えて、今後のことは考え中ということと、明日の待ち合わせ場所を伝えて帰って行くのであった。
「お待ちください!」
フィリップが「どいつを英雄に仕立て上げて乗っ取ってやろうかな~?」とか悪い顔で考えながら歩いていたら、大通り近くでロビンが追いかけて来た。
「ん? なんか話忘れあったっけ??」
「ハタチさんに会ってほしい人がいるのです」
「僕に? あ、いい子紹介してくれるの~? いまから捜すの面倒だったんだよね~」
「それとは違うのですけど……あ、捜してみます。そのあとに紹介しますから」
「ぜったいだよ~??」
明らかにフィリップの顔が曇ったから、ロビンも女性を紹介するしかない。それを聞いたフィリップは、スキップでロビンのあとについて行くのであったとさ。
それから大通りから少し離れた住居に連れて来られたフィリップは2階に案内され、ロビンに部屋の前で数分待たされてから中に入った。
「おお~。美人じゃん? いくつ??」
そこにはやや幼さの残る金髪巨乳美女が椅子に座っていたので、フィリップは今日の相手に決めたな、これ。
「こちらに御座すお方は、御年18歳となります、カールスタード王国、正当な継承権があらせられるクリスティーネ・アッペルクヴィスト様でございます」
「へ~。18歳か~……へ? 継承権??」
「ですから、ハタチさんの言われた乗っ取り計画に、必ずや必要になるお方、クリスティーネ姫様でございます」
「……なんでそんな大物!?」
まさかのお姫様登場で、フィリップもエロイ顔をやめるのであったとさ。
「乗っ取りの件、お話は聞かせていただきました」
いちおう顔合わせが終わったので、クリスティーネはニッコリと微笑んでフィリップを見ている。
「もしもハタチ様がご協力してくれるなら、私はハタチ様を伴侶として迎える覚悟です。どうか、この国のために、お力をお貸しください。お願いします」
そして頭を下げるので、次はフィリップの順番。
「む……無理!!」
「え……」
しかし、焦りながらの拒否。いきなりフラれたクリスティーネも涙目になっているので、ロビンが助け船を出す。
「クリスティーネ姫様がカールスタード王国の女王となられるということは、伴侶は王配……ナンバー2の地位を授かるということなのですよ? それを断るのですか!?」
「僕は後腐れない体だけの関係がしたいんだよ~。ずっとそう言ってたでしょ~~~」
ロビンが半分キレながら説得しても、フィリップは頑なに拒否。その言い分は人として最低なので、ロビンも徐々に呆れて来た。
「ロビンさん。もういいです」
それはクリスティーネも一緒。フラれた涙も引っ込んでフィリップを見詰める。
「どうしても協力してもらえないのですね?」
「あ、協力はするよ」
「せめて資金協力だけでも……え??」
「だから、乗っ取りは僕が言い出したことだし、結婚さえなければクリスティーネさんを女王様にしてあげるって言ってんの」
さっきまで必死に拒否していたのにあっさり許可が出るモノだから、クリスティーネは口をパクパクしながらロビンを見て、フィリップに視線を戻した。
「あの……それでは見返りなく危険なことをするように聞こえるのですけど……」
「見返りは娼館の紹介状が貰えたらそれでよかったんだけどね~……」
「そんな物のために国家転覆するつもりだったのですか!?」
不純を通り越して頭がおかしすぎる理由では、クリスティーネも声が大きくなった。
「最初はね。でも、ここへ来て欲が出ちゃった」
「王配を断られると、私には何も差し出せる物はないのですが……」
「その立派なお胸があるじゃ~ん」
「お胸??」
「僕がこの国にいる間だけでいいから、彼女になってよ」
「……はい??」
「旦那は女王になってからジックリ捜せばいいってこと。別に僕じゃなくてもいいでしょ?」
「まぁ……」
フィリップが何が言いたいかようやく理解したクリスティーネではあったが、納得はできない顔をしている。
「わかりました。正直、こちらに利が大きすぎる取り引きで申し訳がありませんが、受けさせていただきます。これから、よろしくお願いいたします」
「やったね! それじゃあ、今日からよろしくね~。ベッドはどこかな??」
「いまからですか!?」
「今日の相手には逃げられたから、もう我慢できなくて~」
「これから詳しい話をしたいのですけど!?」
「明日。明日の夜聞くから。早くぅぅ」
「1日後!?」
こうしてフィリップに押し切られたクリスティーネは、会って30分もしない内にベッドインするのであったとさ。
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