夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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三章 夏休みは夜遊び

051 夜遊びinカールスタード王国

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 カールスタード学院の1学期が終わると、寮から多くの馬車が走り去る。隣国から来ている生徒も多くいるから里帰りしているみたいだ。
 フィリップは仮病で寝込んでいるフリをしていたが、生徒たちがキャッキャッと騒ぐので寝てられず、自室のバルコニーからその光景を睨んでいた。

「殿下。起きても大丈夫なのですか?」

 そこにフィリップ専属メイドのダグマーがお茶を持ってやって来た。

「ちょっと外の空気が吸いたくなって……」
「そうですか。こちらをどうぞ」
「ありがとう。ダグマーも座って飲みなよ」
「いえ、私はメイドですので……」
「命令~。ニヒヒ」
「わかりました」

 断るダグマーを無理矢理お茶に誘うと、フィリップはマジマジと顔を見てる。

「どうかしましたか?」
「な~んか最近、機嫌悪そうじゃない?」
「いつも通りですが」
「そうかな~? 僕を踏む時も手加減ない気がするんだよな~」
「申し訳ありません。あまりに気持ち良さそうにするので……」
「ダグマーもやっぱり帝都に帰りたかったんじゃない? いや……エイラの名前を出してから機嫌が悪くなったような……」

 フィリップの指摘に、ダグマーの頬がうっすらと赤くなった。

「あ、そゆこと。エイラに嫉妬してたんだ~」
「ち、違います!」
「ほら? 焦ってるじゃ~ん」
「焦っていません!!」

 ダグマーがプイッと横を向くので、フィリップは逆側から近付いて抱き付いた。

「気持ちに気付いてあげられなくてゴメンね。もうひとつ謝っておくけど、僕は皇族だから、その気持ちに決して応えられないの。ゴメンね」
「わ、わかっております。このような気持ちを持っては、従者失格です。私こそ申し訳ありませんでした」
「ううん。嬉しいよ。ありがとう」
「殿下……」
「僕はダグマーのことを愛してるとは言えないけど、大好きだってことは忘れないで。ね?」
「はい……私も大好きです……ん……」

 フィリップはダグマーの唇を奪い、昼間からベッドに倒れ込む。

 こうしてダグマーの嫉妬は解消されて、フィリップによりいっそう尽くすようになったのであった……


「フッフッフッ……夜の街は僕の遊び場だ~~~!!」

 そんな甘い一時があったのに、夜には豹変したフィリップ。寮の屋根に登ってマントをはためかせているよ。

「さってと。どこから攻めるかな~? まずは酒場で情報収集だな。突撃~~~!!」

 テンションの上がったフィリップは、6階もある建物の屋根からジャンプ。恐怖に震えながら着地したので、「調子に乗りすぎた」と反省してから走り出したのであった。


 フィリップが向かった場所は、内壁内の灯りが多くあった場所。道行く人は酔っている人が多いので、フィリップは大当たりだとほくそ笑んでいる。
 ただ、どの店も高級感が漂っているので入りづらい。なので内壁の端のほうへと自然と足が向かった。

「う~ん……この中って、丸々貴族街なのか? 酔っ払いでもみんないい服着てる。昼に働く人と人種がまったく違うな。あの人たちは、貴族や生徒を楽しませるために外から雇っているのかも?」

 いまいちフィリップのエロセンサーに引っ掛からない店ばかりなので、東側の内壁に登って飛び下りた。

「うん。こっちは普通。一般的なオッサンがヘベレケになってる。どの店がいいかな~?」

 酒場の外観はだいたい一緒なので、フィリップは2件目で「ここでいいや」と決定。黒髪のカツラとフードだけ触って確認すると、扉を押して中に入った。
 酔っ払いから少し見られたが、フィリップは堂々と真ん中を歩いて椅子に飛び乗る。

「マスター。オレンジジュース」

 そして常連感を出しながら注文してみたら、この酒場の店主である角刈りのオッサン、マッツが振り返った。

「誰がマスターだ。んな上品な店じゃねぇって。あと、酒場なんだから酒を飲め。オレンジジュースなんて置いてるか」
「ないか~。ミルクぐらいあるよね?」
「あるっちゃあるが、んなもん子供の飲み物……ん? お前、子供じゃねえか!?」

 フードで顔を隠していても、飲み物の頼み方が悪かったのですぐにバレちゃった。

「そう見られがちだけど、僕はハタチだよ」
「どこが20歳だ!?」
「大声出さないでよ~。あ、そうだ。ここって夜の帝王とか妖精の話って聞いたことない?」
「なんの話してやがんだ。ガキはけぇれけぇれ」
「だからハタチって言ってるでしょ~」

 フィリップの噂が届いていたら簡単だったのだが、ここは遠すぎて届いておらず。なのでマッツとフィリップが揉めていたら、いつものあのイベントが発生。

「なんだこのガキは~?」
「ガキが酒場に入って来てんじゃねぇぞ」

 悪者イベントだ。男たちはガラが悪いけど、フィリップの姿のせいで普通のことを言ってるようにしか聞こえない。

「釣れた。待ってたよ~? さあ! 派手にケンカしようじゃないか!!」

 どうやらフィリップは、こうなることを望んで揉めていたようだ。

「はあ? ガキとケンカなんかできるか」
「あ、怖いの? デカイなりして……プププ」
「大人を舐め腐ったガキだな……」
「子供じゃないよ~? ハタチだよ~??」
「だったら表に出ろ! 大人の怖さを思い知らせてやる!!」
「僕もハタチの怖さを染み込ませてやるよ~。アハハハハ」

 酒の入った酔っ払いをちょっとおちょくっただけで待ったなし。フィリップと酔っ払いたちは酒場を出て殴り合うのであった……
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