47 / 377
二章 学校で夜遊び
047 雑な模擬試合
しおりを挟む「フッ……なかなかやるな」
侯爵家のレンナルトが防御しただけで木剣を手放してしまったフィリップは、まだかっこつけながら木剣を拾った。
「えっと……まだやるんですか?」
ボコられた仕返しに模擬試合を提案したレンナルトも、戦意喪失。一方的にやってしまうと、帝国が怒ってしまわないかと危惧しているのだ。
「当たり前だろ。次は貴様の剣を見せてみよ!」
「はあ……行きますよ?」
「あうっ……」
ここまでノリノリで言われてしまうとレンナルトも引くに引けない。フィリップに怪我させないように、木剣だけを狙って叩き落とした。
「フッ……なかなかやるな」
「それ、さっきも聞いたんですけど……」
「ここからは本気を出してやろうじゃないか!」
「本気を出したところで……すみません。行きますよ?」
それでもフィリップがかっこつけるのでレンナルトは止めようとしたが、フィリップに睨まれる。なのでレンナルトは謝罪してから、また木剣を叩き落とそうと狙った。
「フッ……この僕に、二度も同じ攻撃が通じると思うな!」
「ちょっと引いただけじゃないですか……」
「そろそろ貴様も本気を出してはどうだ! この臆病者め!!」
「別にいいですけど……木剣でも、当たったら痛いですからね?」
「さっさとしろ!!」
「では……」
「ぎゃああぁぁ~~~!!」
レンナルトがちょっと素早く木剣を振っただけで、フィリップは無様な声を出しながら大きく避けた。
「フッ……止まって見えたわ。小童め!!」
「必死で避けてましたよね?」
「まだまだ余裕だ!!」
「では……」
「ぎゃああぁぁ~!!」
レンナルトが剣を振る度にフィリップは無様に避けるので、レンナルトも熱くなって鋭い振りになって来た。
「なんで当たらないんだ!?」
でも、フィリップにはかすりもせず。
「フッ……どのへんが剣には自信があるのかな~?」
「これだ!」
「ぎゃああぁぁ~!!」
「『ぎゃ~!』って言ってるだろ! 騎士が逃げるな!!」
ここからは、フィリップは相手に背を向けて逃走。レンナルトも追い回すが、一向に木剣はフィリップには届かない。
「殿下~! 無様な姿を見せるなら、もう降参してくださ~~~い!!」
それを見たラーシュは、フィリップが怪我するより恥ずかしさが勝る。こんな無様な試合なんてありえないもん。
そんな感じでフィリップが舞台を大きく使って逃げ回っていたら、レンナルトも頭を使い出した。フェイントを入れつつフィリップを端に追い込み、逃げた方向から木剣を横に振った。
「セーフ! アハハ。おしかったね~。アハハハハハハ」
しかし、フィリップは木剣の下をリンボーダンズのようにのけ反って滑り込んでかわし、逃げてった。
「クソっ! 騎士なら正々堂々戦え~~~!!」
ここまで馬鹿にされてはレンナルトもキレて木剣を振り続けるのであった……
「そろそろかな?」
レンナルトに限界が来たと感じたフィリップは、自分からレンナルトの元へ歩いて行った。
「アハハ。これなら僕でも倒せそうだ。いっくよ~?」
フィリップが待っていたのは、相手のスタミナ切れ。ここぞとばかりに木剣を大きく振った。
「ナメるな!!」
「ぎゃああぁぁ~!!」
でも、カウンターで斬られて倒れる……いや、フィリップはギリギリかわして倒れ込み、頬杖をついて寝転んだ。
「参った! 僕の負けだ」
「なっ……」
「「「「「わああああ」」」」」
ようやく決着が付いたと生徒たちは湧き上がったが、木剣に当たった感触もなかったレンナルトは悔しそうな顔をしている。
「勝利を譲られて私が喜ぶとでも……」
「なんのこと?」
「騎士なら騎士らしく、正々堂々戦えと言ってるんだ!!」
そんな中、レンナルトが悔しそうに怒鳴るので、辺りは静まり返った。
「よっと。なに勘違いしてるの?」
フィリップは立ち上がると、冷めた目で見る。
「僕は皇族。騎士じゃないよ?」
「剣を持ったら誰でも騎士だ!!」
「変な理屈だね~……僕は上に立つ者だから、騎士を使う立場なの。こんなふうにね……ダグマー!!」
「はっ!」
フィリップが呼ぶだけで、ダグマーが風のように現れて前に立った。
「まだやりたいみたいだから相手してあげて」
「どの程度痛め付けたらよろしいでしょうか?」
「攻撃なんてしなくても、殺気だけでいいんじゃない?」
「承りました」
2人のやり取りに、レンナルトは納得せずに怒鳴る。
「汚いぞ! 大人を頼るなんて!!」
「だって皇族だも~ん。自分の手を汚すわけないじゃん。それより、気をしっかり持つんだよ~?」
「何が攻撃しなくて倒せるだ!!」
「やっちゃって」
「はっ!!」
フィリップの合図で、ダグマーはとんでもない殺気を放った。
「あらら。漏らしちゃった」
それだけで、レンナルトは尻餅を突いて失禁。周りの生徒も震えている。
「いい運動になったよ。ありがとね~」
それと同時にチャイムが鳴り響いたので、フィリップはダグマーを連れて立ち去るのであった……
「ところで殿下……」
更衣室に向かっていたらダグマーから質問が来た。
「ん?」
「何がやりたかったのですか?」
「暇潰し~。彼には悪いことしちゃったね」
フィリップはこんなことを言っているが、実はレンナルトの剣を盗もうとしていた。ただ、人の目があるし、普通に戦ってしまっては隠れて見ていたダグマーに実力がバレてしまう。
なので無様な姿を演じながらレンナルトの剣を見ていたけど、フレドリクよりかなり劣るから、からかうことに終始したのだ。
「それにしても、殿下はあんなに動けたのですね」
「当たったら痛そうだったから、必死だっただけだよ」
「そのわりには息も乱れてませんよ? これなら自室に戻るのも1人で出来るのでは??」
「はぁはぁ……今ごろ来た~。はぁはぁ……」
「遅すぎます」
でも、スタミナがあることはバレてしまったフィリップであったとさ。
11
お気に入りに追加
174
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
猫王様の千年股旅
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。
紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。
魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。
千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった……
☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。
できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。
初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも……
「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。
R指定は念の為です。
毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる