夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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一章 帝都で夜遊び

020 看板娘ミア

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「大丈夫だったの? てか、幽霊じゃなかったんだ!?」
「なんのこと??」

 今日の夜遊びは、酒場。フィリップが前回来た酒場に足を踏み入れてカウンターに向かっていたら、ミアが驚いた顔で走って来た。

「だから! 何から聞いたらいいかわかんな~い!!」
「幽霊からお願いします。あ、あとジュースね」

 ミアが焦っているのでお題を出し、カウンターの椅子にさっさと座るフィリップ。ミアは仕事もしないでフィリップの隣に座り、それと同時に店主がブドウジュースを出した。

「あの日、君が消えるようにいなくなったから幽霊かと思ったんだよ~」
「幽霊ならお金なんて残らないでしょ。あの日は急いでたから走っただけだよ。お姉さんはオッチョコチョイだな~」
「それならすぐ顔見せてよ~。1週間以上よ? 殺されたとか噂もあったし~」
「いや、なんでそんな噂まで出るの??」
「娼館の怖い人に連れて行かれたんでしょ~」

 フィリップには身に覚えのない話だが、ガラの悪い男を先に歩かせていたことを思い出した。

「アレは奴隷館に案内してもらっただけだよ」
「奴隷館? 子供がなんでそんなところに……」
「ハタチって言ってるでしょ。オーナーと友達だから顔出したの。ま、心配してくれてありがとね」
「う、うん……でも、20歳は信じてないよ?」

 フィリップが笑顔で礼を言うとミアは顔を赤くしたけど、年齢詐称はしつこく否定してる。見えないもん。

「それで……最近、何か面白いことあった?」
「君以外では特に……」
「え~。僕って噂になってるの~?」
「そりゃ、子供が娼館で騒いでたら噂の的よ。何人抱いたとか老婆を抱いたとか病気になって寝込んでるとか」
「1人しか抱いてないよ~」
「それ、本気で言ってるの??」

 フィリップが真実を語っても、ミアにはボケにしか聞こえない。何度も言うけど、子供にしか見えないもん。

 この日はミアが付きっきりで質問したり、他の噂話を店主から聞き出そうとするフィリップであった。


 それからひと月、フィリップは度々夜の街に繰り出し、たまにダンジョンに行って運動不足を解消する毎日。行き付けの酒場も増え、行き付けの娼館では記憶を無くして帰ったり。強烈なマッサージを受けたんだって。
 そんな感じで久し振りにミアの働く酒場に顔を出したフィリップは、ミアに絡まれていた。

「派手に遊んでいるらしいね~?」
「なんのこと??」
「ネタは上がってるんだよ。オレンジジュース奢ってやるから吐きな。楽になるよ?」
「それ、僕が入れたボトルなんだけど……勝手に飲んでるし……」

 ミアは刑事の真似事をしながらジュースをゴクゴク飲み出したので、マスターが申し訳なさそうにツマミのクラッカーを出していた。

「派手に遊んでる自覚ないんだけどな~」
「どこがよ。酒場ではナンパした女の子に奢り、クラブでは女を侍らせ酒を好きなだけ飲ませ、娼館では必ず2人頼んでそれが毎日って聞いてるよ」
「そんなのみんなやってるんじゃない?」
「できるか! どんだけお金持ちなの!?」

 フィリップは前世に聞いたことのあるお金持ちの遊び方をしていただけなのだが、文化レベルの低いこの世界ではそんなことができる人間は極一部。てか、ここまで散財する人は見たことも聞いたこともないらしい。

「そんなにお金持ちなら、あの日の誘いは断らずにツバ付けとけばよかったな~」
「おっ。やっと僕の魅力に気付いた? ワンナイトなら、いつでもウェルカムだよ~??」
「え~。一晩だけなの~? 嫁がせてよ~」
「まだまだ遊びたい年頃だから、結婚はゴメンね。あと、マスターが凄い顔で見てるよ?」

 父親の前で娘がフィリップの腕に絡み付いて口説いているのだから、鬼のような形相と絶望の表情が半々。ミアも恥ずかしいとは思ったけど、「キモッ!?」とも思っている。

「ここじゃアレだし、ウチの部屋来る? ちょうど休憩時間だし」
「いくいく~。けど、責任とかは取らないからね~?」
「待て待て! この忙しい時間に勝手に休憩取るな! 娘に手を出すならせめて責任取れ~~~!!」

 酷すぎる2人の会話に、ツッコミで忙しい店主であったとさ。


 何故か客がドンドン注文するので、キッチンカウンターから離れられない店主が鬼気迫る表情でお酒や料理を作っていたら、10分もしないうちにフィリップが戻って来てカウンターのいつもの席に座った。

「は、早かったな……な、何もなかったんだよな??」
「うん。ちょっと部屋で話をしただけだよ」
「そ、そうだよな。ちなみにだが、『こんなの初めて』って娘の叫び声が聞こえて来たけど、何をしてたんだ?」
「へ? こんな騒がしいのに聞こえたの??」
「騒がしいのはお前が現れてからだ。それまでこいつら、娘の声が聞こえないか静かにしてやがったんだ」
「連帯感凄いな!?」
「何してたんだ~~~!!」

 まさか酒場の全員で聞き耳立てたり、店主が覗きに行けないように注文していたとはフィリップもビックリ。というか、何があったかなんて男ならあの声を聞いたら誰でもわかる。
 しかしフィリップは「マッサージをしただけ」としか言わずに、この日は撤収したのであった。

 事実は、プロでも耐えられない超絶技巧のマッサージを素人に使ったらどうなるかとフィリップが試したら、ミアが気絶してしまったのだけども……
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