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一章 帝都で夜遊び
002 キャラ設定
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「ま、まぁアレだ。ちょっと整理してみよう」
フィリップは現実を受け止め、勉強机に向かって羽根ペンを取った。
「まずは世界観だな」
この土地は、楕円形に近い大陸。東側のおよそ6割を帝国が治めており、残りは複数の国が存在している。その帝国の首都は大陸の東に位置し、どこよりも栄えている場所だ。
先代までは腐敗していた帝国だが、現皇帝でフィリップの父が即位してから大きく変わった。
腐敗の元である先代や貴族を裁き、様々な改革を行っているから皇帝は民からの人気は高く、まっとうな貴族の忠義も上がり、誰もが笑って暮らせる国になったそうだ。
「だから父親は忙しいから、めったに会えないんだな。うちの会社みたいだ。あ、僕って過労認定されてるかな? 辞めた場合に備えて勤務実態の証拠と、もしもの時の遺書は残しておいたけど。せめてもの恩返しに、両親が受け取ってくれていたらいいけど……
いや、それは置いておいて、この世界だ。言葉も文字も全部日本語なんだけど、どうなってるんだろ? 西洋人が日本語しか使わないって、違和感が凄いわ~」
この件は考えてもわからないので、次は自分のことを考えるフィリップ。記憶を頼りに過去をノートに箇条書きして、自分の立場などを確認した。
「小さい頃から体が弱くて母親が付きっきりだったんだよな……なんか思い出したら泣けて来た。これは体の記憶か? それとも僕の体に人格がふたつあって、交代してるとか??」
これもいくら考えても答えは出ない。なのでフィリップは、幼い頃は記憶喪失だったのではないかと結論付けた。それならば記憶が戻ったいま、記憶が統合されたのだと二重人格説を否定したいのかもしれない。
「んで、家族構成は父、母、兄、僕の4人。父親は忙しくてめったに会えない。兄は勉強で忙しいけど、よく会いに来てくれる。母親は綺麗で優しくて……ついこないだまで元気だったのに、なんで亡くなったんだ? くも膜下出血とか? それなら、最後に『フレドリクを頼れ』みたいな遺言は残せないと思うんだけど……」
母親の最後も答えはわからない。それに思い出すとすぐに涙が零れ落ちるので、フィリップは保留にする。
「問題は、僕のこれからだよな~……第二皇子なんだから、皇帝狙っちゃう? 僕の知識があれば、この世界ならトップは確実だし……仕事も信頼できる家臣に任せれば、そこまで忙しくならないだろう」
フィリップは頭の中で皇帝への道筋を思い描いてみたが、あまり上手くいかない。
「確か、兄貴はこの世界で天才とか言われていて、もうすでに次期皇帝に指名されてるんだっけか。僕が不甲斐ないから、そりゃそうなるよな……ならば、皇族ならではの方法で……」
よからぬことを企んだフィリップであったが、頭を横に振って却下する。
「あんな優しい人を殺せないよ~。いっつも気に掛けてくれたのに、僕は何を考えてるんだ!」
フレドリクの優しさは本物なのだから、フィリップには暗殺なんてできないのだ。
「皇帝は諦めるか。元々そんなにやりたいってわけでもないし……いや、そういえば乙女ゲームのフィリップルートでは、フレドリクと決闘するシーンがあったな。それに勝てば、フレドリクは皇位を譲る流れになったはず……」
この世界の未来を知っているフィリップならではの希望。
「その原因となるのが、ヒロイン……聖女ちゃんがフレドリクと僕を選べないとか言い出して決闘するんだ。それはそれで面白いかも? でもな~……どちらかと言うと、聖女ちゃんより悪役令嬢のほうが好みなんだよな~。あの冷たい目で見られて踏まれたい!」
フィリップは好きなキャラを言っているだけでそんな趣味は……いや、バリバリあるな。会社で美人上司から罵られていたから、奴隷根性が染み込んでいる悲しい男なのだ。
「まぁ、どのルートを進んでも悪役令嬢はフレドリクに殺されるんだよな~……助けることなんてできるのかな? いやいや、人のことより自分のことだろ。兄貴と戦うとなったら、強くならなきゃ。確か、この世界にはレベルがあったよな? どうやって上げるんだろ??」
乙女ゲームでは、中盤以降にダンジョンに挑むイベントがある。これはゲームのアクセントであとから付け足したような感じなのだが、現実となってはそうは言ってられない。
「強いキャラとかはレベル30とかなってたから、ダンジョンでのレベル上げだけってわけではなさそうなんだけど……訓練したら上がるのかな? 明日にでも走ってみるか?? あ、そうだ」
フィリップはレベル以外にも大事なことを思い出した。
「魔法……このキャラは氷魔法の使い手だったはずだ。これは8歳に神殿で調べてもらうんだっけか。いまは7歳だから、来年か~。てか、魔法があるならいますぐ使いたいって~……使えないかな?」
フィリップは乙女ゲームで使っていた魔法名を唱えてみたが、ウンともスンとも言わない。
「無理か~。一口大の氷が出るだけでもいいのに……出たな……」
手の平の上に氷を想像したら、急に現れたのでフィリップも呆気に取られた。その氷をいろんな角度から見て考える。
「ひょっとして、レベルが低いから魔力不足だったとか? その魔力がどれだけあるかわからないって~……ステータスオープン! なんつって……またなんか出た!?」
冗談で言った「ステータスオープン」は当たり。目の前にモニターのような物が現れたが、ステータスが低すぎてフィリップは残念がっている。
「よっわ……全部一桁。HPもMPも10しかない……これ、無くなったら僕は死ぬのか? こわっ。アレ? 氷を出したのに、MP減ってないな……ということは、これは使用量が1以下の魔法ってことか。ちょっと遊んでみよう」
フィリップはこれより、氷を出したりや雪だるまを魔法で作って本当に遊ぶのであった……
「けっこう出たけど、残りのMPは1……ゼロになったらどうなるんだろ? 異世界モノなら気絶するだけで終わるんだけど……やめとこ。これでゲームオーバーじゃ洒落にならないもんな」
わりと冷静なフィリップ。
「ま、いまから魔法の練習しておけば、兄貴と決闘する時は余裕で勝てるだろ。いや、それまで隠しておいて、いきなりぶっ放せばめっちゃかっこよくない? 『フハハハ。本当の姿は隠していたのだよ』とか言っちゃったりして……うん! これでいこう!!」
でも、厨二が掛かる病気を患っているな、これ……
フィリップは現実を受け止め、勉強机に向かって羽根ペンを取った。
「まずは世界観だな」
この土地は、楕円形に近い大陸。東側のおよそ6割を帝国が治めており、残りは複数の国が存在している。その帝国の首都は大陸の東に位置し、どこよりも栄えている場所だ。
先代までは腐敗していた帝国だが、現皇帝でフィリップの父が即位してから大きく変わった。
腐敗の元である先代や貴族を裁き、様々な改革を行っているから皇帝は民からの人気は高く、まっとうな貴族の忠義も上がり、誰もが笑って暮らせる国になったそうだ。
「だから父親は忙しいから、めったに会えないんだな。うちの会社みたいだ。あ、僕って過労認定されてるかな? 辞めた場合に備えて勤務実態の証拠と、もしもの時の遺書は残しておいたけど。せめてもの恩返しに、両親が受け取ってくれていたらいいけど……
いや、それは置いておいて、この世界だ。言葉も文字も全部日本語なんだけど、どうなってるんだろ? 西洋人が日本語しか使わないって、違和感が凄いわ~」
この件は考えてもわからないので、次は自分のことを考えるフィリップ。記憶を頼りに過去をノートに箇条書きして、自分の立場などを確認した。
「小さい頃から体が弱くて母親が付きっきりだったんだよな……なんか思い出したら泣けて来た。これは体の記憶か? それとも僕の体に人格がふたつあって、交代してるとか??」
これもいくら考えても答えは出ない。なのでフィリップは、幼い頃は記憶喪失だったのではないかと結論付けた。それならば記憶が戻ったいま、記憶が統合されたのだと二重人格説を否定したいのかもしれない。
「んで、家族構成は父、母、兄、僕の4人。父親は忙しくてめったに会えない。兄は勉強で忙しいけど、よく会いに来てくれる。母親は綺麗で優しくて……ついこないだまで元気だったのに、なんで亡くなったんだ? くも膜下出血とか? それなら、最後に『フレドリクを頼れ』みたいな遺言は残せないと思うんだけど……」
母親の最後も答えはわからない。それに思い出すとすぐに涙が零れ落ちるので、フィリップは保留にする。
「問題は、僕のこれからだよな~……第二皇子なんだから、皇帝狙っちゃう? 僕の知識があれば、この世界ならトップは確実だし……仕事も信頼できる家臣に任せれば、そこまで忙しくならないだろう」
フィリップは頭の中で皇帝への道筋を思い描いてみたが、あまり上手くいかない。
「確か、兄貴はこの世界で天才とか言われていて、もうすでに次期皇帝に指名されてるんだっけか。僕が不甲斐ないから、そりゃそうなるよな……ならば、皇族ならではの方法で……」
よからぬことを企んだフィリップであったが、頭を横に振って却下する。
「あんな優しい人を殺せないよ~。いっつも気に掛けてくれたのに、僕は何を考えてるんだ!」
フレドリクの優しさは本物なのだから、フィリップには暗殺なんてできないのだ。
「皇帝は諦めるか。元々そんなにやりたいってわけでもないし……いや、そういえば乙女ゲームのフィリップルートでは、フレドリクと決闘するシーンがあったな。それに勝てば、フレドリクは皇位を譲る流れになったはず……」
この世界の未来を知っているフィリップならではの希望。
「その原因となるのが、ヒロイン……聖女ちゃんがフレドリクと僕を選べないとか言い出して決闘するんだ。それはそれで面白いかも? でもな~……どちらかと言うと、聖女ちゃんより悪役令嬢のほうが好みなんだよな~。あの冷たい目で見られて踏まれたい!」
フィリップは好きなキャラを言っているだけでそんな趣味は……いや、バリバリあるな。会社で美人上司から罵られていたから、奴隷根性が染み込んでいる悲しい男なのだ。
「まぁ、どのルートを進んでも悪役令嬢はフレドリクに殺されるんだよな~……助けることなんてできるのかな? いやいや、人のことより自分のことだろ。兄貴と戦うとなったら、強くならなきゃ。確か、この世界にはレベルがあったよな? どうやって上げるんだろ??」
乙女ゲームでは、中盤以降にダンジョンに挑むイベントがある。これはゲームのアクセントであとから付け足したような感じなのだが、現実となってはそうは言ってられない。
「強いキャラとかはレベル30とかなってたから、ダンジョンでのレベル上げだけってわけではなさそうなんだけど……訓練したら上がるのかな? 明日にでも走ってみるか?? あ、そうだ」
フィリップはレベル以外にも大事なことを思い出した。
「魔法……このキャラは氷魔法の使い手だったはずだ。これは8歳に神殿で調べてもらうんだっけか。いまは7歳だから、来年か~。てか、魔法があるならいますぐ使いたいって~……使えないかな?」
フィリップは乙女ゲームで使っていた魔法名を唱えてみたが、ウンともスンとも言わない。
「無理か~。一口大の氷が出るだけでもいいのに……出たな……」
手の平の上に氷を想像したら、急に現れたのでフィリップも呆気に取られた。その氷をいろんな角度から見て考える。
「ひょっとして、レベルが低いから魔力不足だったとか? その魔力がどれだけあるかわからないって~……ステータスオープン! なんつって……またなんか出た!?」
冗談で言った「ステータスオープン」は当たり。目の前にモニターのような物が現れたが、ステータスが低すぎてフィリップは残念がっている。
「よっわ……全部一桁。HPもMPも10しかない……これ、無くなったら僕は死ぬのか? こわっ。アレ? 氷を出したのに、MP減ってないな……ということは、これは使用量が1以下の魔法ってことか。ちょっと遊んでみよう」
フィリップはこれより、氷を出したりや雪だるまを魔法で作って本当に遊ぶのであった……
「けっこう出たけど、残りのMPは1……ゼロになったらどうなるんだろ? 異世界モノなら気絶するだけで終わるんだけど……やめとこ。これでゲームオーバーじゃ洒落にならないもんな」
わりと冷静なフィリップ。
「ま、いまから魔法の練習しておけば、兄貴と決闘する時は余裕で勝てるだろ。いや、それまで隠しておいて、いきなりぶっ放せばめっちゃかっこよくない? 『フハハハ。本当の姿は隠していたのだよ』とか言っちゃったりして……うん! これでいこう!!」
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