戦国魔法奇譚

結城健三

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火竜対策

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「いやはやなんとも、凄いものを見せてもらいましたな これなら火竜をも倒せるのではありませぬか?」
山県昌景がブルートに問い掛ける

「射手や弓にも強化を掛け一斉に掃射すれば、あるいは倒せるかもしれません」

「その殺生石という物は、どれほどの量を確保されているのでしょうか?」
馬場信春達と共に戻った風魔小太郎が目を輝かせ聞いてくる

「今の威力の鏃(やじり)でしたら、1万本以上用意できます 射程距離を犠牲にすれば、鏃を大きくすることにより威力を上げることも出来ます」

「これは、大いに期待できそうですな! 弓兵の鍛錬を早急に行いますぞ!!」

「その事なのですが馬場殿、500名ほどの弓兵を厳選して鍛えて頂きたい それ以上に
なりますと我々で守りきれる保証が出来なくなりますので。。。」
そっと風魔小太郎が手を上げる

「どうされました 風魔殿?」真田幸隆が気が付く

「つい何事かと見に来てしまいましたが。。。北条の人間である拙者が見聞きしてもよい内容では無いような気がしまして。。。後で口封じとか?」

「何を馬鹿なことを言っている小太郎 火竜相手にお前等がどれほど頑張ったか皆が知っている 武田も北条も徳川も無い お前等は仲間だ!。。。ですよね!? お館様」

「ルイ お主の言うとおりじゃ 火竜との戦いは垣根を無くし、一丸となって挑まねばならん 風魔小太郎お主には期待しておるぞ」

「ありがたきお言葉、恐悦至極にございます この風魔小太郎必ずや期待に応える所存に御座います」
片膝を付き 武田信玄に頭を垂れる 小太郎

「お館様、後ほどお話があります お時間を頂けますか?」
信玄の耳元に囁く、エヴァに そっと頷く 信玄


下鴨神社 武田信玄居室

「お館様、失礼します」

「ふむ 天女殿か、入ってくれ」
エヴァ、アラン、ブルーノ、ルイの4人が敷居を跨ぎ
武田信玄、真田幸隆、山県昌景、馬場信春の4人が迎える

「皆さん おかげさまでこうして4人揃うことができました あらためて、よろしくお願い致します」
静かに頭を下げる 一同

「まず直近の脅威を、共有して頂きたいと思い時間をとって頂いたのです 御嶽山の火竜ですが
3個の卵を産んだようです まだ孵化をしていないようですが 通常の火竜の場合、産卵から巣立ちまで
半年と言われているそうです つまりその期間に火竜を確実に滅ぼす案を練らねばなりません」

「予想していた事ですが。。。それは間違いないのですな?」

「幸隆殿、私は間違いないと思っています」

「天女様が、そう言われるのでしたら 間違いないのでしょう。。。」

「先ほど見ていただいた 【殺生石】の鏃もそうですが
最上氏より持ち帰った【鬼切·鬼丸】、晴明神社よりお借りしました、安倍晴明が式神を封じている 
この【独鈷杵】、前回の戦いで唯一火竜に傷を負わせた 【童子切安綱】これらが、今手元にあり火竜に通用する武器だと思われます さらにもう一つ強大な力を持つ武具があるのですが、まだ手に入れていませんので、手に入りましたらお見せしますね」

「それは楽しみですが。。。これらと並ぶ武具となりますと、少し恐ろしいですな」

「それと、火竜との戦いで私達4人もどうなるかわかりません そこで法術を伝授したいと思っています」

「わしに是非とも教えてもらえんだろうか!?」
馬場信春が身を乗り出し懇願する

「ごめんな 年寄りには無理なんだ。。。」

「なっ! ルイ!わしは、まだまだ若いぞ!!」

「5歳から13歳位までの子供を集め、素質の有るものに鳴海城で教えたいと思っています 真田幸隆殿の孫の幸村殿や井伊直虎殿の養子·井伊直政殿も鳴海城に向かっているはずです」

「それは、ありがたい話しであるな、勝頼の嫡男·信勝も鳴海城に呼んでもいいかのう? 数えで6歳になる」

「勿論です 厳しい修行になると思いますが。。。」

「是非とも頼む 快活な子じゃ、どのような試練も乗り越えるじゃろう」


御嶽山

ピシッ! ピシッ! 岩棚に乗った、最も大きな卵に音を立てて亀裂が走る
“ダンジョンから産まれ出た己が、あと数時間で親に。。。逃げ惑う獲物を狩る以上の
喜びを己が持つ事になるなどとは、想像もしていなかった。。。
いや想像するという知性を持ち合わせてはいなかった”
ぶるっと背中を震わせるベヒーモス ぐるりと首を巡らせ火口を仰ぎ見る
“それも己の中へと入った赤い霧の影響だろう 今は己の奥深くで息を潜めてはいるが
先日のように。。。元の宿主を滅するという抑えがたい衝動となり己の精神に干渉してくる 抗うことは出来なくはないだろう しかしその衝動に身を委ね欲求に応える事が、得難い快感をもたらした 
次に奴が己に求める事は。。。そうか、この世界で最強であれば良いのだな 己を脅かすものをすべて排除し 己の一族でこの世界を恐怖に染めれば”


京の都 丸田町付近

「見事なまでの焼け野原だな。。。俺たちがこの世界に来たせいで」

「ルイ 今は、それは言わないでおきましょう この一帯を再建して、焼け出された人達の帰る場所を作らねばなりません では、このようにお願いしますね」
数枚の図面が書かれた紙をルイに手渡す エヴァ

「これを俺とブルートの2人で作れと。。。!?」

「ルイ あれをご覧なさい」
鴨川の河原に掘っ立て小屋が延々と続き、食事の支度をしているのだろうか、頼りない煙が数本上がっている

「2階建て住宅に上下水道完備。。。下水処理場まで作れと、通りには石畳に殺生石に魔力を通して街灯を設置 表通りには、商店街か。。。」
図面の紙を捲り、次の頁を見ると

「二条城再建。。。地上3階建てに地下避難所って!? こんなに巨大な物を地下に作れと!?」

「ルイ あれをご覧なさい」
本能寺跡に延々と続く墓標 家族を亡くした遺族が、木切れや石塔など故人への思いを込め 粗末ながらも
花や甘味などを供え 仮の墓標とし手を合わせるものが見える

「避難所があれば、救える命も有ったでしょう 地下から採取した土で建物も作れるでしょうし」

「エヴァの言うとおりだな やるかルイ」

「ブルート これを1ヶ月でやれって書いてあるぞ」

「羽柴秀吉殿の部隊500名が間もなく到着しますので鳴海城再建のときのように色々と手伝って貰ってください、お願いしますね 私とアランは鳴海城に戻らねばなりませんので」
立ち入りを禁止された区域にいるエヴァ達に近づいてくる浅井長政とお市の方

「天女様、信玄公にお聞きしたのですが 天女様方の法術を伝授する子供達を鳴海城に集められているとか」

「これは、長政殿とお市様 そうです、そのために明日にも一旦鳴海城に戻ろうと思っています」

「それでしたらお願いがあります 我が嫡男の満腹丸とお市との長女である茶々に、是非とも天女様方の法術を伝授しては頂けないでしょうか?」

「その資質があれば歓迎しますが、長く辛い試練になりますよ?」

「それは覚悟の上です 将来の日の本の守護のために我々の子供達が役に立つのでしたら 本望です
今は、小谷城に居りますので早速使いを出し 鳴海城へと向かわせます」

「天女様、私からも何卒お願いします」
頭を下げる お市の方

「わかりました お二人の子供でしたら きっと将来この国を導いてくれることでしょう それと、小谷城と言いますと鮒寿しですね?」

「心得ております 一緒に持たせますので」

「なんだか催促したようで。。。」

「エヴァ、岡崎城は?」

「味噌田楽!」

「刈谷城」

「きしめん!」

「そういう覚え方ね」

「ルイ あれをご覧なさい」

「それは、もういいから」



越後国 春日山城

朝廷よりの書状を受け取った 上杉謙信

「正親町天皇は正気であられるのか!? 武田信玄めを征夷大将軍だと!!」
書状を握りしめ 怒気に顔を歪ませる 上杉謙信
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