戦国魔法奇譚

結城健三

文字の大きさ
上 下
38 / 201

於大の方と水野信元

しおりを挟む
「親より先に死ぬ以上の、親不孝はないやね。。。あの子は、どこに居ようと盆と暮には必ず便りをくれる

本当に優しい子だったんだけどね」家康の生母 於大の方が袖で涙を拭う

「お祖母様 大伯父様、私は父の仇を討ち 父の望みを武田信玄公と共に叶えとうございます」

頭を下げたまま、2人の言葉を待つ 信康

「信康 それは、ここで言ってもいい言葉ではないぞ ここは織田信長公の領地じゃ」

「大伯父様 天下泰平のために織田信長公か武田信玄公かどちらが良いのか今一度 お考えください」

「信康 お前も大人になったんじゃのう。。。ところで本多忠勝殿も久しぶりじゃのう 家康によく仕えてくれていたようじゃのう 甥に代わって礼を言う ここに居るという事は これからは、信康に仕えてくれるということ

なのだな?」安心したように うんうんと頷く 水野信元

「いえ 拙者の主は、生涯こちらに居られる天女様 唯お一人に御座います」胸を張り きっぱりと言い切る

巫女姿のエヴァを見つめる 信元

「大伯父様 ご紹介が遅れました こちらが武田家に降臨された天女様に御座います」

「お主まで、なにを? こちらの巫女様が天女だと? しかも武田家に降臨されたと?? これほどに美しければ

そう言いたくなるじゃろうが」

「ご挨拶が遅れました 信康様の大伯父様、お祖母様 この日の本のために天より遣わされた者です

 天は、この国の舵取りに武田信玄公を望んでいるという事です」

「噂は聞いていました 貴方が天女様ですか 誠に美しい 見ているだけでも寿命が伸びるというものじゃ」

於大の方様が目を細める

「な 何をたわけたことを 美しいというだけで天女だと言われても。。。えっ?」

天女に手を取られていた 於大の方の双眸から涙が溢れ、全身を暖かい光に包まれる

「長い事 生きているが、このような心持ちは初めてじゃのう おかしいのう涙が止まらぬ」

於大の方の表情から家康を亡くした哀しみの色が和らぎ 安らかな色が広がる

「胃の腑を病んでいらしたのですね もう大丈夫ですよ 長生きをなさって下さい」そっと手を離す

「兄上様」衿をただし 信元に向き合う 於大の方

「私の人生 楽しいことよりも辛いことの方が あまりにも多い人生でした 誰を恨むわけでは、ございませんが

 愛する息子を奪った者の為に 実の兄が、その息子の長男と争うのを私に見せるくらいでしたら。。。

 その前に私の命を終わらせては下さいませぬか?」

「於大よ、わしとて信康と争いとうは無い しかし信長公は、誠に恐ろしき方じゃ 水野家のためにも裏切るわけにはいかんのじゃ わかってくれ」わなわなと唇を震わせる 信元

「織田信長は、勝てませんよ それとここが攻められても援軍も出しません」当たり前のように言う エヴァ

「な 何を根拠にそのような事を!」声を荒げる 信元

「そうですね まず援軍は最前線のここではなく鳴海城に2万以上が向かっています 明日には入るでしょう

 思ったより対応が早くて驚いています」

「「「「はっ?」」」」一同まさに寝耳に水である

「勝てない理由ですが ここに居る本多忠勝とこの城内にいる すべての兵士たちが戦っても勝てないのですが

。。。。信じませんよね? そこに活けてあるお花を一輪お借りしても?」

於大の方が一輪の白い花を手渡す

「大伯父様 この花を折ることが出来ますか?」その花を信元に差し出す エヴァ

黙って受け取り 両手で折り エヴァに返す

「これが傷ついた兵です」そう言うと 左手で持った花に右手を翳す するとくの字に折れていた花が淡い光に包まれ真っ直ぐに戻る さらに青い光が包む

「もう一度 折ってください」また 信元に差し出す

「なんのまやかしじゃ?」受け取り 先ほどと同じように両手で折る。。。折れない? さらに力を加える

まったく曲がる様子もない 花びらを引っ張るがびくともしない

じっと見つめる 於大の方に手渡す しげしげと見つめ折ろうと力を入れる於大の方

「触った感触は、柔らかいのにね~ これが天女様の神通力なのですね」

「はい 武田、徳川の兵は傷ついても私が治しますし そもそも傷つけるのも不可能かと」

黙ったまま逡巡する 信元


「兄上様、裏切るのではありません この於大の一生一度の願いでございます 私と信康のため いいえ 一族のために仇を取るのです!」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る

イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。 《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。 彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。 だが、彼が次に目覚めた時。 そこは十三歳の自分だった。 処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。 これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

NineRing~捕らわれし者たち~

吉備津 慶
ファンタジー
 岡山県の南、海の側に住んでいる高校二年生の響が、夜遅く家を飛び出し一人浜辺を歩いていると『我をおさめよ、されば導かれん』の声がする。  その声の先には一つのリングが輝いていた。リングを指にはめてみると、目の前にスタイル抜群のサキュバスが現れる。  そのサキュバスが言うには、秘宝を解放するために九つのリングを集め、魔王様と魔族の世界を造るとの事。  そのために、お前を魔族の仲間に引き入れ、秘宝を手に入れる手助けをさせると、連れ去られそうになった時、サキュバスに雷が落ちて難を逃れ、サキュバスが彼の下僕となる。しかしサキュバスの魔封じのクリスタルで、何の力も持たない響は連れ去られてしまう。  しかし、おっちょこちょいなサキュバスのおかげで、現代から未来世界に渡り。未来世界の力を得た響が、その後異世界に渡り、リングを探す事になる。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

処理中です...