戦国魔法奇譚

結城健三

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松倉城伝説

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「あの ルイ殿そろそろ日が暮れますが。。。」

「そうか~じゃあ そろそろ始めるか~」伸びをしながら答える

「では、みんなは石垣の裏で、敵からは見えないように 敵本陣を中心に狙って 一射目で距離だけ確認したら 頭を引っ込めて

あとは盲撃ち(メクラウチ)でいいから」

「あの 本当にそんなので宜しいので?」

「大丈夫! 30分もせずに退いてくれると思うから」

ビシッと親指を立てて ニカッと笑う ルイ


松倉城の麓 大手門から約600メートルの距離に陣を張り

上杉景勝(謙信の養子)を総大将とした 2200人の上杉軍 


「景勝様! 松倉城より攻撃!!」

「なに? 大手門が開いたのか?」兜を手に立ち上がる 景勝

「いえ 弓による攻撃です」

「馬鹿を申すな 届くはずがなかろう」

「それが。。。我らの遙か頭上を越えて、後ろに着弾した矢も

 ございます」

「盾を持って参れ!」陣から出て松倉城を見上げる

『確かに届いておるな 当たったところで致命傷にはなるまい』

「皆の者 盾を持って頭を守れ」

トスッ「うわっ」 トスッ「くそっ!やられた!!」 

トスッ「痛いっ」 トスッ「うおっ」

トスッ「どこから?」 トスッ「見えなかったぞ!?」 

一定の間隔で増えていく負傷者

「なにが どうなっている!? この距離でなぜ当たるのだ!?」

「下がれ 距離を開けよ!!」時とともに混乱を増す 上杉軍


「よ~し 敵さん下がりだしたぞ みんな50メートル距離を伸ばして」

石垣の切れ目から、弓を引き絞り上杉軍を狙い撃つルイ

弓を土魔法で強化+視力強化+筋力強化+風魔法で矢を操作して百発百中 敵兵の左手のみを狙って 矢を射続けている

弓兵たちの盲撃ちによる矢が、1分間に約30発飛び交い 

その矢の雨の中を ルイの狙いすました攻撃が 一矢また一矢

確実に上杉軍の 左腕に突き立つ 


「景勝様 負傷者は全員 左手を射抜かれています

 おそらく300名は超えているかと」

「いったい 何が起こっている? なぜ届くのだ!?」

盾に身を隠し後退する景勝の左腕に矢が突き立つ

トスッ「くそっ!! 椎名め許さん!!! 下がれ!!!!

 あそこの雑木林に身を隠すのだ」


「よし雑木林に入ったぞ みんなご苦労さま

 メシでも食って、ゆっくりしてくれ 俺は行ってくる」


薄闇に紛れ 漆黒の忍び装束に着替えたルイが 雑木林へと

逃げ込んだ 上杉軍へと迫る


「景勝様 信じ難いことですが 負傷者約400名全てが

 左腕に矢を受けています 死者は無しですが

 全員が祟りだ、呪いだと浮足立っております」

「このような話を、誰が信じる!? 呪いだと言われたほうが

 まだ納得もしよう まったく見えずに気付いたときには

 矢が突き立っているなど。。。すまぬがこの矢を抜いてくれ」


ビシッ「うわっ」 ビシッ「ぎゃっ!」 ビシッ「げっ」

ビシッ「もう嫌だ!!」 ビシッ「やめてくれ~」

「ここまで矢が届くというのか!?」矢を抜いた痛みに脂汗を流しながら 上杉景勝が叫ぶ

「木の陰に身を隠すのだ!!」必死に叫ぶが すでに四方へと

蜘蛛の子を散らしたように 散り散りに逃げ出す 上杉軍

「退却!! 退却だ!!!」


樹上にてほくそ笑む黒い影

「ま~予定通りだな」

雑木林の樹上より【指弾】を使い 小石を飛ばし

さらに100名ほどの左腕だけの負傷者を積み上げた ルイ

ここに数百年語り継がれる[左腕のみに宿る呪いの松倉城]という伝説を残す


松倉城 物見櫓で北の方角に目を凝らしていた椎名康胤

「終わったぞ」背後から、不意に声を掛ける ルイ

「いったい 何があったのだ?」状況を把握できず 口から泡を飛ばす 康胤

「う~ん 面倒だから 説明しない 協力してくれた 弓兵に聞いてくれ」ある意味イジメである

「。。。。。。。」言葉もなく口をパクパクとさせる

「当分は大丈夫だろう この鳩を従属させておいた もし何かあれば文を括り付けて飛ばせ 俺がどこに居ても この鳩は俺に向かって一直線に飛ぶからな 餌をやり忘れるなよ」




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