戦国魔法奇譚

結城健三

文字の大きさ
上 下
14 / 201

武田信玄

しおりを挟む
「我が当主、武田信玄公を天女様に診て頂きたいのです わしの見たてですと

 この冬(今は12月)を乗り切るのも厳しいかと。。。もし信玄公が死ねば

 この国は一層の混乱に包まれることとなります 何卒」

さらに頭を下げる 徳本

「天女? 私がですか? まぁ ある意味では天から降ってきたようなものですが 杖も頂いていますし

 良いですよ 参りましょう」

「おぉ ありがとうございます では早速 隣の陣幕へ」


「晴信殿(武田信玄)、天女様をお連れしました」

真田幸隆と軍議中の2人の間に割って入る 徳本

「?? 何を申しておる 徳本先生 確かに天女の如き 美しきおなごであるが」

天女と呼ばれた女性に目を向ける 真田の当主であり 信玄の軍師である 幸隆 

「天女様、こちらが我らが当主 甲斐の守護大名 武田信玄公でございます」

病に侵されているに関わらず 異様なまでの威圧感を持った人物を紹介される

「晴信殿、こちらの天女様と縁を結べたことに比べましたら この戦の勝利など些事に等しき事

 ちなみにこの戦の負傷者は、すべて天女様が治療してくださいました 皆 すぐにでも戦働きが出来るほどに回復しております」

「爺 杖はどうした? 腰も伸びておるの?」信玄の鋭い視線を受ける

「わしも治していただきました 20歳も若返ったようです この通り」その場で軽く跳ねてみる 


「失礼しますね」警戒心を抱かせない声音で

「肺を患っているようですね 苦しかったでしょう」慈愛に満ちた目で、信玄を見つめるエヴァ

座っている信玄に近づき その肩に手を置く ここ数年 常に険しかった信玄の表情が和らいでいる事に

この場に居たすべての者が、安堵し そして顔を綻ばせる

胸の前に杖を浮かせ「【命の鼓動よ 巡れ この者に命の息吹を】」 2人を暖かい光の珠が包む

徳本も珍念もへたり込んで、その光景を見つめる その他のものは皆 瞬きもせずに見つめている

数分が経過する 傷は瞬時に癒せるが 病は時間を要する

「あなた 凄い精神力の持ち主ですね 生きていたのが不思議なくらい蝕まれていました」

信玄の目を覗き込み、治療が終わった事を告げる

「まだ死ぬわけにはいかなかった。。。。ものでな。。。」言葉が途切れ、信玄の目から大粒の涙が溢れ落ちる

立ち上がり 己の身体を見下ろし 両の掌を握り開く また握り開く

「苦しくない? 身体が動く!? 治ったのか!?」陣幕内にかっての太く重い信玄の声が響く

「おぉぉぉ~」「お お館様!!」 「奇跡だ!!」声を震わせ咽び泣くもの 動くこともできずに惚けるもの


「先ほどは、失礼を致しました 我が主を救って頂きましたこと深く感謝致します」

真田幸隆が深く頭を下げる 両の眼が赤く腫れている

「天女殿 そなたに受けたこの恩義、何で返せばよいだろう?」真剣な面持ちで聞いてくる信玄

「お腹が空きました」頬を赤らめるエヴァ 「「「「はっ??」」」」声を合わせる一同

「ですから、お腹が空いたのですが。。。」朝から何も口にしていないことを思い出す。

「ありったけの味噌と麺を用意せよ 大鍋でほうとうじゃ!」

これほど満ち足りた戦場が過去にあっただろうか 誰もが笑顔で食事の支度に取り掛かっている

徳川との戦での大勝 いくらかの死者は出たものの負傷者は無し 長く患っていた信玄の回復と

厚く垂れ込めていた雲が一気に晴れたような解放感に皆が包まれていた

「幸隆よ 山県の所へ、行かねばならんのだがな。。。」

「保科正俊殿の軍 1000名を率いて先行して頂いております じきに合流するかと」

「槍弾正か それであれば安心か」

「ほうとうも煮えたようでございます あちらで温まりましょう」


すでに大鍋を囲んでいる エヴァと徳本の弟子たち

「わしも食うぞ! このように食欲があるのも久しぶりじゃ」信玄が高らかに笑う

「とても美味しいです このような戦場で温かいものが口に出来るとは しかしこの箸なるものは

 よく考えられていますね 携帯にも便利ですし 無ければその辺の枝を削ればいいのですから」

「武田名物ほうとうを気に入られたようで何よりです 箸も初めてということですが上手に使いこなされて」

徳本が髭をしごきながら、エヴァの食いっぷりに目を細める

「このお肉はなんでしょう? ちょっと癖がありますが、この味噌によく合いますね」

4杯目のほうとうをお椀に入れる

「今朝がた仕留めた鹿です 天女様に食べて頂き 鹿も幸せ者です」徳本の天女崇拝が止まらない

「わしも頂くぞ」エヴァの横に腰を下ろす信玄

「お館様、あちらに用意してありますが。。。」信玄の耳元で囁く幸隆

「天女殿の上座でなど食えるか こっちの鍋の方が美味そうじゃ」

若かった頃のようにほうとうを平らげる 

「美味い! これほどに美味かったのじゃな。。。」

『わしはまだ生きられるのか』天を仰ぐ 信玄

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

処理中です...