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第2章 魔導帝国の陰謀

ロステアール・クレウ・グランダ

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 あの子が泣いている。淋しい、苦しいと、泣いている。
 それは迷い子の泣き声のようで、しかし怨嗟が籠められた呪いのようでもあった。けれどきっと、この子は嘘偽りなく、心の底から慟哭している。どうしてだか、それだけは判った。
 いたいよ。こわいよ。つらいよ。さみしいよ。ねぇ、どうしてぼくをおいていくの。いっしょだって、やくそくしたのに。
 あの子の震える喉から、そんな言葉たちが零れ落ちた。ああでも、きっと、あの子の言っていることは何ひとつ間違っていないのだ。裏切ったのはこちらで、手放したのもきっと、こちらからだったのだから。
 いかないで。いかないで。
 ああ、あの子の声が遠ざかっていく。誰よりも愛おしくて何よりも守ってあげるべきあの子が、遠くへと離れてしまう。
 張り裂けそうに胸が痛んだのは、きっと罪の証だ。けれどそれでも、この腕も足も動いてはくれない。遠ざかるあの子の泣き声に、ただの一声も返すことができない。
 
 ぼくをひとりにしないでよ……、きょうや……。
 
 遠くなっていく声は、きっと最後にそう言った。けれど、この胡乱な頭はそれすら思い出すことができないのだ。
 あの子とは、一体誰だったのだろう。



 はっと目を覚ました少年が真っ先に見たのは、心配そうにこちらを覗き込んでいる王の顔だった。
「大丈夫か、キョウヤ」
 王の大きな掌が、少年を案じるように髪を撫でる。それに僅かばかりの居心地の悪さを覚えた少年がそっと視線を逸らすと、ここが少年が寝泊まりしている部屋であることが窺えた。どうやら、あのやけに大きなベッドに寝かされているらしい。
 慌てて身体を起こそうとした少年だったが、制止した王にやんわりとベッドへと押し返されてしまう。
「身体に障るから、そのまま寝ていなさい」
「あ、……あの、僕……」
 戸惑うように声を漏らした少年に、ベッドに腰かけたままの王がゆるりと微笑んでみせた。
「話の途中で突然倒れてしまったのでな。勝手ながらここまで運ばせて貰った。しかし、眠っている間中うなされていたものだから、酷く心配したぞ」
「倒れた……」
 呟いた少年に、王が少しだけ窺うような表情をした。
「覚えているか?」
 問われ、少年は暫しの沈黙のあと、静かに頷いた。
 やや記憶があやふやだが、確か、この王に母のことを話したのだ。少年にとって禁忌のようなあの話を何故自ら口にしたのかは思い出せないが、そんなことはよくあることなので、今はどうでも良い。それよりも少年にとっては、王に全てを知られてしまったことの方が重要だった。
「……あの、…………ごめん、なさい……」
 思わずといった風に口にした言葉は、酷く震えてしまった。けれど、謝らない訳にはいかなかったのだから仕方がない。
「それは、何に対する謝罪だろうか」
 凪いだ水面のような穏やかな声が、少年の耳を優しく撫でる。たかだかそれだけのことだったのに、少年は何故か、泣いてしまいたい気持ちになった。
「……僕、とても汚い、のに、……こんな、貴方みたいな、綺麗な人に、」
 愛しているなどという言葉を吐かせてしまうなんて。
 それが罪であることなど、とうの昔に少年は知っていた。知っていて、王に進言することができずにいた。それは、王の好意に背くようなことを言うのを恐れたからかもしれないし、もしかするとそれ以外に理由があったのかもしれない。けれど、そんなことはもう関係なかった。理由がどうあれ、少年は結果的に王を裏切ってしまったのだろう。
 何故なら、王は少年がどれほど汚くどれほど醜い存在なのかを知らなかったのだ。そして、少年はそれを王に伝えられなかった。王が与えてくれた真摯な言葉に向き合いたいなどという欺瞞が、こんな自分でも愛されることが許されるのかもしれないという甘えが、この事態を招いたのだ。
 少年が犯したこれ以上ないほどの裏切りという罪は、今こうして己の身に返ってきた。
 王はきっと、少年が想像するよりもずっと激しく落胆したことだろう。それはそうだ。自分が愛した相手がこんなにも醜く、生まれた価値すらない存在だったなんて、あまりにもあまりだと、少年だって思う。
 王に対してこの上ない罪悪感を抱くと同時に、少年はもしかすると打ち首になってしまうのではないかという恐怖にも震えていた。醜い自分は、この期に及んでなお己の命に縋ってしまうのだ。本当に、救いようがない。
 断頭台の前に立たされた囚人の心地でいる少年は、ただただ俯いて、王の唇が罪状を紡ぐときを待っていた。
「……ふむ。まあ、この際お前が汚いかどうかは置いておこう。お前の生い立ちを考慮するに、私が口先だけで何を言おうと、お前の考えを変えることは容易ではないだろうからな。幼い子供にとって、親とは世界そのものだ。世界が相手では、さしもの私も分が悪い。……それでは、こうしようか」
 いよいよ断頭台に上げられるときが来たかと、少年が身を固くする。王が発する言葉をここまで恐れるということは、自分はこの王に何かを期待していたのだろうか。ああ、きっとそうだ。醜く浅ましいからこそ、愛されることが怖いのに愛されたいと願ってしまうのだ。尤も、その願いは今度こそ断たれるのだけれど。
 重い刃が己の首を落とすのを覚悟して、少年はきつく目を閉じた。しかし、
「まず、私はお前のことを愛しているのだから、お前が汚くても醜くても気にしない。良いな?」
 思っていたのと違う言葉に、少年は思わず顔を上げてしまった。そして、やや呆けた顔で王を見る。
 見上げた王の顔は、いつもと変わらない柔らかな笑みを象っていた。
「……あの…………、でも、お母さんは、僕のことを汚いって……、」
「お前の母はそうだったのだろうが、私はそうではない。私はお前の母ではないからな」
 そう言った王に、やはり状況が飲み込めない少年は、思ったままに言葉を零す。
「……貴方は、汚いものが好き……?」
 小さな呟きに、王が苦笑を漏らした。
「それは盛大な勘違いだが、お前がそれで納得できるのならばそういうことにしておいても構わんぞ」
 そう言って、大きな掌が少年の髪を滑る。
 王の言動から察するに、汚いものが好きという訳ではないのだろう。しかし、それならば何故、未だに少年に優しくしてくれるのだろうか。
「…………僕、お母さんにも嫌われてしまうくらい、とても汚いのに……」
 自分がどれほど汚く醜いかを知られてしまった以上、この王が自分をそれでも愛してくれるなどいうことは有り得ない。そんな思いが籠められた言葉に、王が少しだけ悲しそうな顔をしてみせた。
「そんなに寂しいことを言うものではないぞ、キョウヤ」
「……でも、僕は……、」
 汚い自分が生きているせいで、美しかった母の顔は醜く歪んでしまったから。こんなにも綺麗なこの人まで母と同じようになってしまうのは嫌なのだ。怖いのだ。
 だって、王はもう少年がどれほど汚れた存在であるかを知ってしまった。知ってしまった以上、その汚れはいつか王を蝕んでしまうかもしれない。美しかった少年の母が、醜悪な何かに成り果ててしまったように。
 目を伏せて唇を強く噛んだ少年を、王が静かに見下ろす。
「……お前は、私の美しさがそんなにも簡単に損なわれてしまうものだと思っているのか? お前を愛し、お前に触れるだけで、私という人間は汚れてしまうと、そう思っているのか?」
 その言葉に、少年は弾かれたように目を開けて王を見た。その瞳が、不安と恐怖で頼りなく揺れる。
「そ、そんなことはないです。ごめんなさい。僕、そんなつもりは……、」
 王に対してこの上ない侮辱を吐いてしまったのかもしれないと青褪めた少年に、王が少しだけ困ったような表情を浮かべた。
「責めているのではない。ただ、尋ねているだけだ。もしお前が本当にそう思っているのならば、私の驕りが過ぎたのだろう。お前の言葉を事実として深く受け止め、考えを改める」
「ち、違うんです、そんなこと、だって、貴方は、とても綺麗だから……」
 そんな簡単にその美しさが損なわれてしまうなんて、思うはずがない。この人の美しさは、そんな儚くか弱いものではないのだから。
「ふむ。それでは、お前が気にすることはもう何もないではないか」
「……え、ええと……?」
 王の手が、少年の手をそっと包み込んだ。そうされて初めて気づいたが、どうやら自分の指はもうずっと前から震えていたらしい。
「たとえお前がどんなに醜く汚れた存在だとしても、私の美しさが損なわれることはない。ならば、私がお前を愛し、お前を望んだところで、そこに問題などありはしないだろう?」
「…………どうして……、」
 どうして、この人はこんなにも自信で満ち溢れた言葉を紡ぐのだろうか。王の美しさが至上のものである知っていてなお、少年は自分がそれを汚してしまう可能性を思ってしまうのに。どうして王は、僅かな可能性すら存在しないと言い切れるのだろうか。
「お前が私の在り方を美しいと言ったのだ。それならば、私が私である限り、それが揺らぐことなどありはせんよ」
 王の言っていることはやはり半分以上理解できなかったが、それでも、きっと、彼の言葉は少年が求めていたものに近かったのだろう。
「……ほんとう……?」
 細い声が、少年の喉から零れ落ちた。
「……本当に? 本当に、貴方は、ずっと綺麗なままでいてくれる……?」
 自分の手を包む王の指を、少年が僅かに握り返す。それはやはり、あのときと同じなけなしの勇気で、しかしあのときとは違って、もっとずっと本質的な一歩であった。それならば、王がその歩みを祝福しない訳がないのだ。
「ああ、約束しよう」
 短くも確かな誓いの言葉を受け、少年は王を見つめた。ああ、本当に綺麗で、強い人だ。この人が誓ったのならば、きっとその誓いは果たされるのだろう。きっとこの人は、永遠に綺麗なままで、自分と接してくれるのだろう。
 それは最上の幸福で、同時に最大の罪のようだった。それでも、少年は王の誓いに心の底から安堵した。このことが何を意味しているのか、少年にはまだ判らない。けれど、彼の中で何か大きな変化があったのは事実だった。
 そうして、ようやく少年の表情が少しだけ穏やかなものになる。そんな彼に優しい笑みを浮かべた王は、少年の黒髪を撫でながら、少しの間だけ何かを考えるように目を伏せた。
 そして暫しの静寂の後、王が再び口を開く。
「お前が勇気を出して過去の話をしてくれたのだ。ならば、今度は私の番だな」
「貴方の……?」
 王の過去、と言われても、そんなにわざわざ話すようなことはないだろうに。そう思った少年だったが、勿論王の言葉を遮るような真似はしない。それ以上言葉を続けることはせず、ただ黙って話の続きを待った。
「私はな、お前が思っているほど優れた人間ではないし、王として立つにふさわしい人生を送ってきた訳ではないのだ。そもそもがして、私は庶子だからな。本来であれば王位継承権は持たぬし、実際のところ私にその権利が与えられることはない予定だった」
「庶子……」
 呟いた少年に、王がゆるりと笑む。
「ああ、私の母は身分のない女性だった。それどころか、名前や素性すら知れない人だったそうだ。臨月を迎えた頃に突然王宮を訪ねた母は、腹の子が王の子であると主張し、それを認めた前王によって保護された。王には既に正妃も側室もおり、それらの間に数人の子も設けた後だったから、素性の知れぬ女との子など、いなかったことにした方が都合は良かったはずだ。その方が後の禍根を生む恐れもなくなっただろうからな。だがそれでも、前王である父上は子の誕生を強く望んだそうだ。そうして、母は王宮にて私を産み落とし、それと同時に亡くなった」
 王の言葉に、少年が息を呑む。
「……お母さん、いないんですか……?」
 思わず零れ落ちたその言葉に、王はやはり優しい笑みのまま頷きを返した。
「ああ。母は王宮に訪れてすぐに私を産み、死んでしまったからな。困ったことに肖像画のひとつすら残っていないので、私は母の顔も声も、それに名前すら知らんのだ」
「名前も……?」
「母は王宮の人間に名を名乗ることはせず、唯一母の名を知っていたのだろう父上も、結局誰かにそれを明かすことはなかったからな」
 王の告白に、少年は心の底から動揺していた。まさか、王にそんな過去があっただなんて、想像すらしていなかった。多くに望まれ、多くに祝福されている王だからこそ、その生涯は常に恵まれたもので、これまでもこの先も何ひとつ不幸に見舞われることなどないのだろうと、漠然とそう思っていた。
「私を産んだ後の母の胎は、内側から炎で焼かれたかのように爛れきっており、恐らくはそれが死因だったのだろうと言われている。だから私はいわば、母を殺して産まれてきた忌み子なのだ。今でこそそのようなことを言う者はいなくなったが、私が子供の頃は、よく陰口を聞いたものだ。……まあ、その言葉は概ね正しいのだろう。私はこれまでに三人の妻を娶り、王妃として迎えたが、三人が三人とも、子を身籠ってすぐに胎が焼け爛れる奇病に罹り、苦しんだ末に赤子ともども命を落としてしまったからな。こうなってはもう、認めるよりほかあるまい。母の胎を焼き、妻の胎を焼いたのは、恐らく私なのだ」
 淡々と告げる王に、少年の鼓動がどくんどくんと早くなる。この美しい王が、母を殺して産まれ、失った母のことを何ひとつ知らないで生きてきたなど。
(……なんて、かわいそうな人なんだろう)
 この至高の王に対して抱くには、あまりにも不釣り合いな感情だ。それでも、少年はそう思わずにはいられなかった。
 そんなことを考えていたから、きっと少年は酷い顔をしていたのだろう。少しだけ笑った王が、まるであやすように少年の頭を優しく撫でた。
「これは困ったな。そんなに悲しそうな顔をしないでくれ」
「え、あ、……すみません……」
「こらこら、謝る必要はないというのに。……しかし、お前に話しておくべきことはまだまだあるのだが、どれもこれも愉快な話ではないからな。この辺でやめておくか?」
 気遣う言葉に、少年は少しだけ迷うように瞳を揺らした。けれど、少しの逡巡の後、ゆっくりと首を横に振る。王のつらい話を聞くのは怖かったが、なけなしの勇気が残っている限りは頑張ろうと思ったのだ。
 そんな少年の覚悟が伝わったのか、そうかと頷いた王が、再び話を始める。
「母の命を奪ってまで生まれてきた私だったが、これがまた大きな欠陥を抱えていてな。困ったことに、感情の一切を持たずに生を受けてしまったのだ」
「……どういうこと、ですか……?」
「言葉通りの意味だ。私は生まれたときからずっと、感情というものを知らずに生きてきた。喜怒哀楽の全てを持たずに生まれたせいで、他者から見た幼い頃の私は、まるで人形のようだったそうだ。確かに、その所見は間違いではなかったのだろう。人形と違うところといえば、呼吸をして自発的に動けるところくらいだったからな」
 感情がないということがどういうものなのかは判らなかったが、ただ漠然と、それは時に幸福なことで、時に不幸なことなのかもしれないと少年は思った。
「だが、幸いなことに友に恵まれた。レクシィが、ろくな反応も返せぬ私に根気よく感情のなんたるかを教えてくれたのだ。お陰様で、今ではそこまで意識をせずとも表情を用意することができるようになった」
 なんでもないことのように言って笑った王だったが、少年は困惑の表情を隠せないでいた。
「表情を、用意……?」
 戸惑うような声に、王が頷く。
「そうだ。基本的な法則を記憶しさえすれば、その声音や瞬きの速さ、言葉数などの様々な情報から他者の感情を読み取ることは容易だった。後は、私自身もそれらと同様の所作を心がければ良いのだ。一般的に人が楽しいと感じるときに笑い、悲しいと感じるときに泣く。それを実行するだけで、周囲の私を見る目は如実に変化した。まあ、生き物が環境に適応していくようなものだったのだろう。こんなことを続けるうちに、すっかり慣れてしまってな。今はもう、呼吸をするのと同じくらい自然に表情が用意されるようになった。ここに至るまでにかなりの労を要しはしたが、努力の甲斐はあったようだ」
 そう言って微笑んでみせた王に、少年はどんな言葉を返せば良いのか判らなかった。だが、王に感情がないと言うのならば、少年に寄せているという好意すらも嘘だということになりはしないのだろうか。
 そんな考えが一瞬頭をよぎった少年だったが、すぐにそれを否定する。あのとき、他の何者でもなく少年にその誕生を祝われたいのだと言った王の言葉に、嘘偽りなどなかったはずだ。そしてそれは、王が口にする好意の言葉たちだって同じである。明確な根拠を示すことなどできないくせに、何故か少年は強くそう思った。
 そんな少年の心の内が判ったのだろうか。少年の手を握った王は、炎を孕んだ瞳で彼を見つめた。
「私はお前に出逢って、初めて感情を知ったのだ。お前と言葉を交わせることに喜びを感じ、お前と共に過ごせることを楽しいと思う。そして、もしもお前に拒絶されることがあったなら、そのときは深い絶望と悲嘆に暮れるのだろう。こういった感情の数々を、他でもないお前が私に与えてくれた。私は、お前と接しているときだけは、己の感情を知ることができるのだ。きっと、これまでも、これから先もずっと、お前だけが私の特別なのだ」
 それは熱烈な告白だった。この世でたったひとり、少年だけが王にとって特別な存在なのだと、王はそう言っているのだ。
 この煌炎の瞳に嘘はない。だって、こんなにも真っ直ぐで、こんなにも美しいのだ。だから、少年は正しく、王にとっての唯一なのだろう。それがどうして少年だったのかは判らない。もしかすると少年でなければ駄目な理由があったのかもしれないし、元より理由など存在しなかったのかもしれない。それでも、王にとって少年は代わりの利かない唯一無二なのだということだけは、覆りようのない事実としてそこに在った。
「……僕……、」
 こんなとき、どんな言葉を返すのが正解なのだろうか。嬉しいような、悲しいような、不思議な心地だ。
 結局次に続けるべき言葉を見つけられないまま黙ってしまった少年に、王は少し首を傾げた後、悪戯っぽく笑って唇に人差し指を当てた。
「私の感情に関しては、レクシィしか知る者のいない最重要機密でな。他言無用だぞ?」
 軽い調子で言われた割には重すぎる言葉に、少年は僅かに青褪めた。
「そ、そんな大事なこと、僕に話して良かったんですか……?」
「何を言う。お前だからこそ話したのだ。愛しているお前を偽ることなどできるはずがない。お前に対しては心の底から抱いた感情のままに接しているが、それ以外の場での私の表情は作り物だからな。作り物である以上、お前には正直にそう話しておくべきだろう?」
 そんな理由で最重要機密を知らされてしまうのは困ってしまうが、きっとこれは王なりの誠意の示し方なのだろう。ならば少年がここで言うべきは、ひとつである。
「……そんな大切なことを僕に話してくれて、ありがとう、ございます」
「いいや、こちらこそ聞いてくれてありがとう。何よりも大切なお前に私のことを知って貰えること、心から嬉しいと思う」
 そう言った王が、少年の頬に手を伸ばし、その肌にそっと掌を滑らせる。相変わらず接触が苦手な少年ではあったが、その掌を拒絶しようとは思わなかった。
「聞いてくれるついでに、もうひとつだけ話しても良いだろうか」
 恐らくそれも、愉快な話ではないのだろう。だが、王がそれを望むのならば、少年は出来得る限り叶えてあげたいと思った。
 小さく頷いて返せば、王の顔にまた笑みが浮かぶ。そして、ひとこと礼を述べて少年から視線を外した王は、何処か昔を懐かしむように話を始めた。
「これは、王位継承権を持たなかった私が王として即位することになった経緯に関係する話だ。……八年ほど前に、先王である父上が崩御した。当時の父上はまだ齢五十を過ぎたばかりでな。早すぎる崩御に国は一時騒然となり、王宮だけでなく国民までにも混乱が広まった。息子である私が言うのもおかしな話だが、父上は民に慕われる良き国王だった故、騒ぎが大きくなったのも仕方がないことだったのだろう。とは言え、崩御後すぐに、正妃との間に設けた長子に王位を譲る旨を記した書類が見つかったこともあり、王位継承に関する問題は全くなく、混乱はすぐに収まった。勿論、私も王位継承者に関する不満はなかったし、元より私には王位継承権がない。誰が王となろうと、ゆくゆくは中央騎士団の団長として国に仕える予定だった」
 静かに話す王に、少年は何も言わない。ただ黙って、王の横顔を見つめていた。
「ただ、私にはどうしても気になることがあったのだ。当時、宮廷医師によって、父上の死因は突発的な心機能の低下であるとの診断が下されたのだが、私だけが庶子であることを理由にその診断の立ち合いを拒否されたのだ。庶子とはいえ王の子である以上、本来であれば私にも立ち合う権利はあった。だがまあ、私はレクシィのいるロンター家以外の王家の人間からは嫌われていたので、こういう事態も仕方がないことではあるし、日頃の連中の態度を見ていれば往々にして有り得ることだ。……と、そう納得しようとは思った」
「……納得、しなかったんですか?」
「ああ。納得しようとしたのだが、隠されるとどうにも気になってしまうのが人間というものでな。……いや、この言い方はおかしいか。私にそんな感情はない。だから、ただ確信しただけだ。私にだけ隠すということは、私に知られては困る何かが絶対にあるのだと」
 淡々と話す王の顔には、一切の表情がない。もしかすると、これが本来の王の姿なのかもしれないと少年は思った。
「果たして、私の考えは正しかった。ロンター家に協力を仰いで秘密裏に調査した結果、父上はロンター家を除く王家に謀殺されたのだという事実が明らかになったのだ」
 王の言葉に、少年が小さく息を呑む。
「原因は明らかだった。恐らく、父上は私の母を深く愛しすぎたのだ。私の母に向けられたそれは、王妃や側室に向けるものとは異なる本物の愛情だったのだろう。そして、その恩恵は息子である私にも与えられた。つまり、父上は自分の子の中で私を一番に愛していたのだ。私だからではない。私が、愛する女の子供だったからだ」
 父親に愛されていたと言う王は、しかしやはり無表情のままで、与えられた愛情に対して何も感じていないように見えた。
「父上は、周りに気づかれぬように陰で私を優遇していたつもりのようだったが、妻や子というのは敏感なものでな。父上の愛情の全てが私の母に向いており、母の亡きあとはその矛先が私に向いたのを、きちんと感じ取っていた。だからこそ、私は義母や義兄弟たちから酷く嫌われていたのだ。彼らからすれば、私は自身の地位を揺るがしかねない存在だったのだろうから、無理もない。私とて、この件に関してのみ、父上のやり方は酷く稚拙だと感じたものだ。結局、息子が得るべき王位を私に奪われるのではないかと危惧した正妃は、王個人と親しかったロンター家以外の王家全体に働きかけて父上を殺し、自分の息子を王に立てるという偽の遺書を用意させた。……恐らく、身分も知れない女に心を奪われたままの父上に、いつか政をおろそかにし始めるのではと、王家全体が危惧し始めていたのだろう。勿論、父上はそんなことで国に不利益をもたらすような人ではなかった。だが、人というものは、少しの綻びを気にし、厭うものだ。そんな中、正妃である義母は、庶子である私が王になる可能性と、そうなった際に王家が被る損害がどれほどのものかを説き、王家全体を取り込んでいったのだ」
 王が目を閉じて、深く息を吐く。
「義母が抱いた懸念は理解できる。私や父上を恨むのも当然のことだ。義母は、父上からの本当の愛情が得られないと知ってなお、正妃として誠心誠意努めていた。そんな自分が報われず、ぽっと出の女が産んだ子供が全てを攫って行くなど、耐えがたいことだったのだろう。……だが、それでも義母は、王家は、父上を殺すべきではなかった。既に私怨に囚われていた彼らにとっては愚かな王だったのかもしれないが、父上は間違いなく良き王だった。決して、己の恋情と王の役目を混同するようなことはしない人だったのだ。……そもそも父上は、私に王位を譲る気など欠片もなかったのだから」
 そう言った王が、少年の手に触れる。優しく肌を撫でる大きな手は、どうしてだか縋っているようにも見えた。
「私が十五になり、成人したあの日、父上は私に向かって謝罪した。彼女の子であるお前は、きっと誰よりも王にふさわしい人間であるのに、その座を用意することができなくて本当に済まない、と。……だから、父上が私に王位を与えるなど有り得なかったのだ。父上は心から私に王位をと思っていたのだろうが、王の責務を果たすため、それを実行する気は全くなかったのだから」
 そう言った王の表情は、どこか寂し気なようにも見えた。尤もそれは一瞬のことで、すぐに無表情に戻ってしまったから、目の錯覚だったのかもしれない。
「そして、王家が父上を殺したのだという確信が持てたその日の夜。父上の謀殺に関わった王家や貴族の住居が突如噴き上がった巨大な火柱に呑まれ、関係者の全てが焼け死ぬという事件が起こった。国の広範囲に渡って局所的に、かつ同時に上がったその火柱には魔力の痕跡などはなく、明らかに不自然だというのに自然に生じたものであると結論づけるほかなかった。そしてその後、私がロンター家と共に提出した調査書により、父上の謀殺が白日の下に晒されることとなり、国中で、あの夜の不可思議な火柱は天にいる炎神が下した制裁なのだと噂されたものだ。だが勿論、事実はそうではない」
 きっぱりとそう言い切った王は、ひとつ息を吐き出してから、やはり表情のない顔のまま虚空を見つめた。
「あれは、私がやったのだ。どうやったのかなど覚えていない。だが、確かに私がやった。父親を殺されたことに対するものなのか、優れた王を民から奪ったことに対するものなのか。それは私にも判らない。だが、あのとき私は、きっと怒りを感じていたのだろう。その感情は、私が認識できるほど表層まで上がって来ることはなかったが、私はきっと怒りに満たされていたのだ。そして怒りのままに、父上を殺した人間を全て殺した。……私のことを母の息子としてしか認識してくれなかった父ではあるが、それでも、向けられた愛情に何がしか思うことがあったのかもしれないな。勿論、私にはよく判らないのだが」
 やはり淡々とそう述べた王は、そこでようやく少年に視線を戻し、緩く微笑んでみせた。
「とにかく、この一件により王家の血を引いた人間は私とロンター家を残して皆滅んでしまい、その事実は、父上である前王の崩御よりも国を揺るがすこととなってしまった。結局のところ、私は事態をより悪化させてしまったのだ。だからこそ、私はその責任を取り、この国をより良く導けるような王を迎えようと思った。……だが、どんなに考えようとも、私が王になる以上に良い案が浮かばなかった。無論、王家の血を引くレクシィは優秀で、王の器として十二分であっただろう。だが、国王の崩御に加え、それを招いたのが王家そのものであるという事実は重すぎた。最早国内の混乱は一人の王の手に担いきれるものではなく、その重荷をレクシィに任せるのはあまりにも酷だ。……だから、私が王として立った。感情を持ち合わせない私ならば、一切の私情を抱かず民の意向のみを汲み取り、民の望むままに国を導くことができるからな。そして、私のこの考えは正しかった。民の望む通り、求める通りの治世に努めた結果、国はより安定し、民には笑顔が戻ったのだ」
 王の話が事実ならば、彼はこれ以上ないほどに優れた統治をしてみせたのだろう。それは誇るべきことだろうに、当の王はまるで他人事のような調子だった。
「……やっぱり、貴方はとてもすごくて、とても良い王様なんですね」
 王の様子に戸惑いながらも、少年はおずおずとそう言った。それは嘘偽りのない言葉だったのだが、しかし王はゆっくりと首を横に振った。
「いいや、私は決して良王などではない。無論、そうあろうと努めてはいるが、私は所詮民の理想の体現、すなわち、ただの傀儡にすぎん。それを証拠に、グランデルという一国のみにとっての最良に近い王になることが、私が出来得る精一杯だ。もし今の私がグランデル国民以外からも良王として見えるのなら、それは私の手柄ではなくグランデル国民の手柄なのだ。私は民の思うままに存在する王に過ぎない。故に、民が平和と平穏を望むのならばそのように努めるし、国土の拡大と戦争を求めるのならばその通りにする。だからな、この国が平和なのは、国民たちが自身の手で成し遂げた成果そのものなのだ。私はただ、その術を教え、導くだけの装置にしかすぎない。判るだろう? こんなものは良王とは呼べん。真に優れたる王ならば、すべての国、すべての大陸、ひいてはすべての世界をも、良き方向へと導いてしまうのだろうから」
 無機質な表情のまま吐き出された、どこか自分を戒めるようにすら聞こえるその言葉を、少年は理解できない。王の思考が判らないのだ。この煌炎の王が掲げるそれは、きっと絶対に存在することのない理想の極致だろう。そしてその理想は最早国王と呼べるものではなく、いっそ誇張を孕んだ妄言にすら思えてしまうかもしれない。だが少年には、王がそれが存在すると信じ、その極致に至れぬ己を無価値であると断じているように思えた。
 そんなことはない。貴方は素敵な王だし、それだけが貴方の価値ではないのだと。そう言えたら良かったのだろうか。だが、臆病な少年はそれを口にすることができず、結局彼が何かを言う前に、王はふっと表情を緩めて優しく微笑んだ。
「ああ、いや、つまらない話を聞かせてしまったな。どうか許して欲しい」
 そう言った王の掌が、少年の髪をゆるりと滑る。
「このような退屈な話を訊いてくれたこと、心から感謝する。……特に王家殺しの件については、誰にも言ったことがなくてな。レクシィなどは何か思うところがあるようだが、あれにすら話したことはない。だからだろうか。ほんの少しだけ、胸のつかえが取れたような気がするな。といっても、これもそうあれと用意された感情なのだが」
 そう言ってやはり笑った王が、少年の頭を撫でる。
「だが、お前に知って貰えて嬉しいというのは、本当の感情だ。……お前には私のすべてを知っていて欲しいと思うのは、きっとお前を愛しているからなのだろうな」
 そう囁く声が、先程の無機質なものとは似ても似つかないほどに暖かな響きをしているから。だから少年はまた、嬉しいような悲しいような、不思議な気持ちになってしまうのだ。
「重苦しい話ばかり聞かされて、精神が疲弊しただろう。私も少々話し疲れたし、お前も随分と眠そうだ。今日はもう、眠ると良い。なに、湯浴みならば明日の朝にでもできるさ。ゆっくり休んで、明日はもっと楽しい話をしよう」
「…………あなた、は……」
 小さな声に、王が少年を見つめる。王の言う通り、少年は疲れたのか眠そうな顔をしていた。
「……あなたは、さみしく……なかったの……?」
 薄く開いた唇から零れた問いは、まるで無意味なものだった。王には感情がないのだから、こんな質問に意味がある筈がない。それでも、少年は訊かずにはいられなかった。
「寂しいと思ったことはないな。寂しいという感情を知らないから」
 あたたかな掌が眠りを誘うように頭を撫でる。段々と眠気に身を委ね始めた少年の耳に届いた言葉は、予想通りのものだった。
(ああ、それは、とてもさみしいことだな……)
 漠然と抱いたその気持ちは、哀れみだったのだろうか。愛しさだったのだろうか。
 微睡始めた少年を愛おし気に見つめ、王がその頬にそっと唇を落とす。
「そうだ、昨日といい今日といい落ち着ける時間がなかったから、まだきちんと祝えていなかったな」
 一体何を祝うのだろうと、ぼんやりそう思った少年の鼓膜を、温もりに満ちた声が震わせた。
「お前が生まれてきてくれたことに深く感謝し、心から祝福しよう。……お誕生日おめでとう、キョウヤ」
 穏やかに静かに、しかしはっきりと向けられた言葉は、水面を揺らす雫のように、少年の胸の奥に落ちた。そうして広がった波紋が、じわりじわりと全身に広がっていく。それが何であるのかは判らない。凍えるような暖かいような、痛いような優しいような、苦しいのか楽しいのか悲しいのか嬉しいのか。そのどれとも、どちらとも判別できない、名付けようもない何かだった。
 けれど、それが全身に隙間なく行き渡ったそのとき、まなじりに集った熱が決壊して、たった一粒が少年の頬を滑り落ちる。何故泣いているのかなんて判らなかったし、眠気に侵された頭では、そもそも泣いていることも、その雫を王の指がすくい取ったことすら、判っていなかった。
 それでも、ただひとつ。
(……それが、)
 誰からも望まれず、ただ在るだけを呪われ、否定され続けていた少年は、
(…………ぼくは、ただそれが、ほしかったんだ)
 何かを求めて空を掻いた指先を、王がすくい上げるようにして握り返す。混じり合う熱が溶かしたさみしさは、果たしてどちらのものだったのだろうか。
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マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

旦那様と僕・番外編

三冬月マヨ
BL
『旦那様と僕』の番外編。 基本的にぽかぽか。

はじまりの恋

葉月めいこ
BL
生徒×教師/僕らの出逢いはきっと必然だった。 あの日くれた好きという言葉 それがすべてのはじまりだった 好きになるのに理由も時間もいらない 僕たちのはじまりとそれから 高校教師の西岡佐樹は 生徒の藤堂優哉に告白をされる。 突然のことに驚き戸惑う佐樹だが 藤堂の真っ直ぐな想いに 少しずつ心を動かされていく。 どうしてこんなに 彼のことが気になるのだろう。 いままでになかった想いが胸に広がる。 これは二人の出会いと日常 それからを描く純愛ストーリー 優しさばかりではない、切なく苦しい困難がたくさん待ち受けています。 二人は二人の選んだ道を信じて前に進んでいく。 ※作中にて視点変更されるシーンが多々あります。 ※素敵な表紙、挿絵イラストは朔羽ゆきさんに描いていただきました。 ※挿絵「想い03」「邂逅10」「邂逅12」「夏日13」「夏日48」「別離01」「別離34」「始まり06」

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

戸森鈴子 tomori rinco
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

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