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最終章 伝説の最果てで蝶が舞う
戦線 -薄紅の王-
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幻惑魔法で騎獣ごと姿を隠した薄紅の王は、基本的には黒の王のすぐ傍に控え、有事の際に彼をサポートするつもりだった。
それができなくなったのは、偏にこの目の前の魔物のせいである。
「……妾のことが見えると言うんだから、腹立たしいわねぇ」
言葉通り、その表情に不満をたっぷり乗せた女王が、敵を睨む。
まるで黒の王と薄紅の王を分断するかのように突如として割り込んできたのは、九つの尾をもつ白い獣だった。一見すると優美さを感じさせる見た目の獣は、しかし酷く厭な気配を漂わせている。感覚的に評するのならば、見た目は良いのに雰囲気が醜い、と言ったところだろうか。万人がその醜さを感じるかどうかは知らないが、少なくとも薄紅の王はこの獣を酷く醜いと感じた。
なんにせよ、幻惑魔法で身を隠している薄紅の王の姿を見出したことも厄介だが、前を進んでいた黒の王がこの獣に気づく様子が一切なかったことも厄介だ、と女王は思う。
(つまり、妾と同じ系統の能力、ってことなのよねぇ)
代々の薄紅の王は、円卓の王の中でも一、二を争うほど戦いが得手ではない。当代もその例に洩れず、防衛に特化している紫の女王よりも戦闘行為は苦手だった。
だが、その実薄紅の国は、歴史的に見ても戦争に駆り出される割合が非常に高い。偏に、幻惑魔法と戦争との相性が非常に良いためである。それこそ、時代によっては“円卓最弱にして最強の王”と呼称されることさえあるほどに、代々の薄紅の王が扱う幻惑魔法は強力だった。
だが困ったことに、今女王の目の前に立ちはだかる敵は、彼女と酷似した系統の能力を持つ魔物である。幻惑を扱う生き物というのは、総じて幻惑に対する耐性が非常に高いものなのだ。
(さっき征伐軍の一部を惑わした広範囲の幻惑術も、多分この魔物の力よねぇ。となると、ここでさっさと始末するのが一番なのだけれど)
幻惑系統の能力がぶつかり合う場合、基本的には能力値の高い方の幻惑が勝るものだ。その要素だけで判断するのであれば、薄紅の王が負けるなどということはまず有り得ない。だがそれは、彼女が万全の状態であればの話である。
自分が今担っている幻惑魔法の数々を脳裏でなぞった薄紅の王は、次いで深々と溜息をついた。
「どうしても、貴女の相手は片手間になってしまうのよねぇ……」
誰に届けようと思っての呟きではなかったのだが、その小さな声は、どうやら獣の耳に届いたらしい。獣は優雅に首を傾げて女王を睥睨した。
『片手間で我の相手が務まると思うのかえ?』
「あらぁ、珍しい。人語を喋る獣がいるのねぇ」
小馬鹿にするようにそう返した薄紅の王だったが、内心では一層良くない状況になったと考えていた。
己の種族の言語のみならず、人などの他種族の言語まで扱える魔物は、基本的に知力、能力共に高いことが多い。その上、この獣の声は非常に冷静だ。他の魔物のように、異世界に無理矢理召喚されて使役されている現状に怒りを覚えているようには思えない。仮にその怒りを抑え込んでいるだけなのだとしても、それはそれで強靭な精神の持ち主であることになる。
内心に怒りがあるにせよないにせよ、冷静さを失っていない敵というのは面倒なものだ。
『さて、おぬしのような小娘の技で、数千を生きた我を越えられるとでも思うておるのかえ? ほほほ、人というのはどの世界においても、ほんに傲慢な生き物よなぁ』
鈴の音が鳴るような声で軽やかに笑った獣に、女王は嫣然たる笑みを返す。
「どんなときでも、若く見られるというのは心地が良いものねぇ。そのお礼と言ってはなんだけれど、ご老体はきちんと労わらせていただくわぁ」
微笑みのままにそう言った女王が、乗っていた騎獣を上空へと逃がしたのち、火霊と水霊の名前を呼ぶ。すると、彼女の姿を覆い隠すように、周囲に深い霧が立ち込め始めた。
(正面から向かっていくと、きっと美しくない結果になるわ。まずはこの霧でもう一度姿を隠してから、今出せる範囲の幻惑魔法で相手の五感を奪いましょう)
見る見るうちに霧に溶け込んで見えなくなっていく薄紅の女王だったが、しかしそれを嘲笑うかのように、獣の尾の先に炎が燈った。
霧の向こうで女王が僅か息を呑んだ瞬間、尾から放たれた九つの炎が、彼女に襲い掛かる。
「っ!」
咄嗟に身を捩って回避した女王の肩や脚を、炎が掠める。衣や肌を焼くそれに、彼女はすぐさま水霊魔法を発動して対応したが、それでも無傷ではいられなかった。
己の姿を隠す魔法は依然として保っており、それに加えて霧の幻で二重に姿を隠したはずだ。その上万全を期して、使用している幻惑魔法は、視覚だけでなく五感の全てに作用するような等級のものを選択している。それでも尚、敵が己の居場所を正確に把握してくるということは、
(……五感ではない、何か別の独自能力で察知しているのね)
女王にとって、相手は未知の生物だ。どんな能力を持っているのかなど、皆目見当もつかない。
『おお、上手いこと避けたものだ。褒めてつかわすぞ』
楽しそうにころころと笑う獣に、薄紅の王は思わず顔を顰めそうになり、寸前で堪えた。しかめっ面は美しくない。
しかし、この霧でも身を隠せないとなると、これ以上この魔法を持続させるのは魔力の無駄だ。そう判断した女王が、潔く魔法を解除する。少なくとも、霧の魔法以前に行った幻惑魔法を保ちさえすれば、基本的には他の魔物や兵に存在を気取られることはない。
だが、霧を解除した女王は、直後目に入ってきた光景に、柄にもなく悪態を吐きそうになってしまった。
「…………似たような話を、ギルヴィス王から聞いた覚えがあるわぁ」
霧が晴れた先では、彼女を取り囲むようにして、無数の獣がその視界を埋め尽くしていたのだ。
この時点で、薄紅の王が危惧しなければならないことは複数あった。
まずは、ここは未だ戦場であり、周囲には多くの敵兵や魔物がいた点だ。それは確かな事実であるにも関わらず、今の彼女の視界にはそれが一切入ってこない。
そしてもうひとつ。薄紅の王の幻が生んだ霧は、相手の五感を奪うものであっても、自分の五感に影響を与えるものではなかった点だ。故に、霧があろうとなかろうと、彼女が見る世界が変わることはないはずだった。
これらを総合して考えるに、
(妾が魔法を解除するのに合わせて、妾に幻術をかけた、ということになるわねぇ……)
そう。この敵は、この世界における幻術使いの最高峰である薄紅の女王に、幻を見せることができるのである。
地平線の果てまでをも埋め尽くす量の獣が、獲物を狩るときの目をして薄紅の王を見る。そして彼女には、己を取り囲むそれらのうちのどれが本物なのか、全く判らなかった。
にやにや、とも表現できそうな厭な笑みを、獣が浮かべた。それを受けた薄紅の女王は、数度の瞬きのあと、ほう、と息を吐く。
「本来であれば、こういうときのためのヴェールゴール王なのだけれど……」
かの王ならば、幻になど惑わされない。無限の幻が敵ならば、その全てを一瞬で屠るのがあの王の理不尽さなのだ。本物が判らないんだったら全部殺せば良いんだよ、とは、一体いつ聞いた台詞だったか。
だが、その彼は今近くにいない。もしも彼がこの場にいたならば、この獣の幻術などものともせずに女王のピンチに現れ、面倒臭そうな顔をしながらも全てを屠ってくれたことだろう。
(まあ、ないものをねだっても仕方がないわねぇ)
ひとりごちた女王が水霊の名を呼び、ぱさりと広げた扇を撫でる。それとほぼ同時に、ひしめく獣たちの尾から、無数の炎が迸った。
一斉に襲い来るその熱気は本物にしか思えぬほどで、つまりそれは女王にとって本物と寸分違わないということなのだろう。生き物は幻で死ねるという事実は、女王自身が誰よりも知っていることだ。
全方位方からやってくる炎の塊は、とてもではないが避けきれるような代物ではない。故に、女王も避けようとはしなかった。代わりに、右手に広げた扇を構え、軽やかに舞うようにして閃かせる。
いや、これは最早舞いそのものであると言って良いのだろう。
彼女がしなやかに腕を振るごとに、水霊を纏わせた扇から水の衣が翻り、襲い来る火球をするりと受け止めいなしていく。くるりくるりと踊る水の衣は溜息が出るほどに幻想的であり、その中心で舞う絶世の美女も相まってか、酷く現実味の薄い光景だった。
ときに撫でるように逸れて弾け、ときに破裂するように打ち消える炎は、あたかも女王の舞に歓喜乱舞しているかのようだ。
その場のすべてを美そのものへと昇華する彼女の舞は、戦めいた要素を全く感じさせない。飽くまでも、これはただの舞踏なのだと。自分はただ、自分のためにと用意された極上の舞台で踊っているだけなのだと。彼女の全身がそう語り、周囲の風景全てがそう謳う。
予想だにしない光景に驚いたのは、女王を追い詰めている側である獣の方だった。
薄紅の女王は、戦闘ができない。故に、十二国の中でも一、二を争うほどにか弱い王だ。そう、それが獣の聞いていた話であり、まごうかたなき事実である。
だというのに、女王には獣の攻撃が通用しない。いや、正確には、全く通用していないわけではなかった。これだけの数の炎だ。女王の舞ではいなし切れなかった炎は確かに存在し、それは確実に彼女の身を焦がしている。だが、それでも女王は表情を変えない。それどころか、優雅な舞は寸分も狂うことなく続いていく。衣を焼かれ、肌を焼かれても、彼女はまるでそれすらも演出であるかのように、微笑みのままに舞い続ける。
その光景は、数千を生きる獣をも戦慄させた。同時に、このままではいけないと獣の直感が告げる。そしてその直感のまま、獣たちは炎と共に一斉に女王へと跳びかかった。
瞬間、女王の舞ががらりと変化する。先程までのそれが穏やかでたおやかな春の木漏れ日のようなものならば、今度のそれは荒れ狂う嵐のような激しさを伴っている。
ときに大地を踏みしめ、ときに大地を蹴って跳ぶように舞い。いつの間にやら水に加えて風も纏い出した扇が、炎もろとも獣を切り裂いていく。
弾ける血飛沫の中で、それすらも演出へと変えてしまう彼女は、血に濡れてもなお美しい。
水と風を操り、女王はひたすらに舞う。だが、永遠に続くかと思われたその舞は、不意に入った邪魔により止まることとなった。
女王の視界の端で、激しい光を伴う閃光弾が打ち上がったのだ。
瞬間、女王の舞が大きく乱れ、同時にやわらかな美を湛えた表情が崩れる。その先に表れたのは、まさに怒り一色であった。
「まあ! なんて迷惑なのかしら! せっかく妾が美しい舞を披露していたというのに!」
怒りのままに叫んだ女王が、半ばやけっぱちのように火霊と水霊の名を呼ぶ。互いに仲の悪い二つの精霊を調和させて何がしかの魔法を発動させた彼女は、次いで一層怒りに染まった顔で獣の群れを睨んだ。
「折角この妾が後々のことまで考えて行動していたのに、こうなっては全部が水の泡だわぁ!」
叫んだ薄紅の王が、舞もそこそこに炎や獣を切り刻みながら、形の良い唇から音を紡ぐ。
「火霊、水霊、征伐軍に掛けている“真実の幻”を解除してちょうだい。ええ、良いのよ。どうせ原因はこの魔物だわぁ。これさえ片づけてしまえば必要のない魔法よ」
『はっ、小娘がよう言う。ほんに我を片づけられると思うておるのかえ?』
小馬鹿にするような不快な声が多重に響く。それがなんとも不愉快で、薄紅の王は少しだけ眉を顰めた。だが、彼女が反応を見せたのはそれだけで、特に言葉を返すことはない。その代わりに、側に控える火霊と水霊に対して更に言葉を続ける。
「ヴェールゴール王の選択に合わせざるを得ないわ。先ではなく今を解決しましょ。――“万物映し出す真なる虚偽”」
魔法の名を唇に上らせると同時に、女王の周囲で炎と水が弾け、霧のような細かな粒子が彼女を撫でた。
“万物映し出す真なる虚偽”。征伐軍にかけたものよりもずっと高等な、幻術破りの魔法である。
その高等魔法を詠唱抜きで発動させた女王は、しかし魔法の完成を待たず、続けて更なる魔法の名を紡いだ。
「“永久へ誘う果てなき幻夢”」
女王が魔法の名を唱え終わると同時に、瞬きをする間すらなく獣の見る世界が一変した。
大地の果てまで埋め尽くしていた己の幻の一切が消失し、代わりに景色が昼から夜へと変化する。分厚い雲の立ち込める空は、月が隠れ、漆黒の闇に包まれていた。
突如変貌した光景に、しかしそれでも冷静さを欠かない聡明な獣は、それが正しく幻であると見破った。だが、幻を幻と認識してなお、世界はそのままそこにある。
獣の認識に揺らぐことなく、僅かな歪みも生まれない世界に、違和と焦りを覚えた獣は幻術破りを試みた。が、その強大な力を以てしても、やはり世界は変わらない。
そこで初めて、獣は己を囲む無数の何かに気づいた。いや、聡明な獣は、その認識すらも違うと知っている。
気づいたのではなく、気づかされたのだ。
この世界は薄紅の王が生み出した世界だ。ならば、そのすべては彼女の掌の上にある。
ぞわりと背筋を這う悪寒に、獣は全身の毛を逆立てた。
獣は幻術の極みの一端に位置する存在であるが故に、幻術というものをよく知っている。幻はどんなに真に近づこうとも幻にしか過ぎないが、その幻が偽を真と定義するほどの高位なものであれば、それは対象にとっての真になってしまうのだ。
全てを察した獣が、この後に起こる確定された未来からの抜け道を探す。だが、同時に獣は気づいていた。既に確定された未来を覆すことなど、己にはできはしないのだと。
獣を囲む何か――人々の怨嗟が込められた無数の矢が、獣に向かって一斉に放たれる。幾千幾万もの呪いを帯びた矢が身体中に突き刺さり、獣は悲鳴を上げた。
それは過去の再現だ。かつてその身が一度滅びたときの再来である。故に二度は有り得ぬはずの物語は、しかし至高の幻惑を御する女王の手によって再び紡がれた。
毛皮を、肉を、骨を焼き切る灼熱にその身を溶かしながら、獣はそこでようやく女王の姿を認める。いや、認めさせられた。終わる獣を前に、女王は自らの意思でその姿を晒したのだ。
どこまでも冷たく、しかし逸らされることなく己の死を見つめる彼女の瞳に、果たして獣は何を思ったのか。
その答えを述べることなく、獣の身体が崩れ、灰となって風に舞う。
しばしその場に留まって散っていくそれを見届けた女王は、そこでようやくそっと息を吐き出し、力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
この瞬間を以て“万物映し出す真なる虚偽”と“永久へ誘う果てなき幻夢”は即座に解除したが、己に掛けている姿を隠す幻惑魔法はまだ継続させている。だからこそ未だに周囲に魔物が溢れるこの場で座り込むことができ、そして誰からも見られることがないと判っているからこそ晒す姿だ。
(……さすがに、少し無理をしすぎたわぁ……)
魔法の多重発動は、それだけで負担になる。そんな中、先の戦闘の最中彼女が成し遂げたのは、高位なものを含む魔法の七重発動だ。
黒の王に関する魔法が三つ、そのうち一つを、あの閃光弾を合図に数段強力なものへと変化させた。また、黒の王が持っている閃光弾にも、どこにいても彼女自身が気づけるようにと、女王にだけ見えるような幻惑魔法がかけられている。それに加え、自身の姿を隠す幻惑魔法と、敵の幻術を越えた真実を写すための魔法に、敵を仕留めるための魔法。
そして彼女は今もなお、このうちの五つを継続させている。戦いの前に黒の王にはああ言ったが、もうとっくに限界など越えているのだ。
何よりも、あの獣に勝つために発動させた二つの魔法と、黒の王の合図を受けて強化させた幻惑魔法が問題だった。
これらは全て、異次元における未知の感覚にも対応すべく、五感を越えたありとあらゆる感覚を支配し惑わす魔法だ。故に、それだけ難易度が高く、魔力の消費も著しい。
ひとつひとつは、赤の王の存在を丸ごと世界に誤認させたあのときほどのものではないが、こうもいっぺんに発動するとなると、あのときに勝るとも劣らないほどに女王の体力と精神を消耗させた。それも、今回は支えとなる王獣がいないのだ。女王にかかる負担は、およそ凡人の想像など及ばないほどに大きなものだろう。
自慢の珠の肌は所々が焼け爛れ、崩れた肉からは血が流れている。顔に浮かぶ疲労も色濃く、肩で息をしている様は、痛々しいとすら表せた。だが、それでも凛とした表情は常の彼女そのままで、踏まれようとも手折られようとも、決して枯れずに真っ直ぐ立ち続ける大輪の華を思わせる。
上がった息を整える間も惜しむように、女王は風霊の名を呼び、空へと逃がした騎獣を呼び戻させた。そして、ほどなくして傍らに降り立った獣をひと撫でしてから、懐にしまっていた小型の魔術器を取り出す。
これは、緊急の伝達用にと金の王が開発して渡してくれた、音を記録する魔術器だ。記録できる時間は短いが、こういうときに便利な代物である。
「……悪いけれど、妾は戦線離脱だわぁ。どうしても処理しきれない幻術系統の問題が発生した場合のみ対応はするけれど、戦力としては考えないでちょうだい。その代わり、残りの幻惑魔法だけは死守してあげる」
そこで言葉を終え、声の記録が完了したことを確認した女王は、風霊に命じ、騎獣鎧に結んである鳥籠の中の雷光鳥に魔術器を取り付けさせた。そして直後、鳥籠を開ければ、空に滑り出した鳥が一目散に飛んでいく。
雷光鳥は扱いが難しく、伝令役の言うことしか聞かない場合が多いのが難点だが、あらかじめ帰巣場所を命じた上で鳥籠に入れておけば、解放され次第その場所に向かうので、こういった緊急連絡手段が考えられた。この方法は、黄の王と金の王が相談して生み出したものである。
そこまでを終えた女王が、のろりと立ち上がって騎獣に座る。
身体を動かすことすら億劫だったが、こんなところにいて流れ弾でも食らったら、たまったものではない。とにもかくにも、今はすぐに安全な場所へと移動する必要があった。
いっそ今すぐ眠ってしまいたい、などとひとりごちる満身創痍の女王を乗せ、騎獣は再び幻の彼方へと消えるのであった。
それができなくなったのは、偏にこの目の前の魔物のせいである。
「……妾のことが見えると言うんだから、腹立たしいわねぇ」
言葉通り、その表情に不満をたっぷり乗せた女王が、敵を睨む。
まるで黒の王と薄紅の王を分断するかのように突如として割り込んできたのは、九つの尾をもつ白い獣だった。一見すると優美さを感じさせる見た目の獣は、しかし酷く厭な気配を漂わせている。感覚的に評するのならば、見た目は良いのに雰囲気が醜い、と言ったところだろうか。万人がその醜さを感じるかどうかは知らないが、少なくとも薄紅の王はこの獣を酷く醜いと感じた。
なんにせよ、幻惑魔法で身を隠している薄紅の王の姿を見出したことも厄介だが、前を進んでいた黒の王がこの獣に気づく様子が一切なかったことも厄介だ、と女王は思う。
(つまり、妾と同じ系統の能力、ってことなのよねぇ)
代々の薄紅の王は、円卓の王の中でも一、二を争うほど戦いが得手ではない。当代もその例に洩れず、防衛に特化している紫の女王よりも戦闘行為は苦手だった。
だが、その実薄紅の国は、歴史的に見ても戦争に駆り出される割合が非常に高い。偏に、幻惑魔法と戦争との相性が非常に良いためである。それこそ、時代によっては“円卓最弱にして最強の王”と呼称されることさえあるほどに、代々の薄紅の王が扱う幻惑魔法は強力だった。
だが困ったことに、今女王の目の前に立ちはだかる敵は、彼女と酷似した系統の能力を持つ魔物である。幻惑を扱う生き物というのは、総じて幻惑に対する耐性が非常に高いものなのだ。
(さっき征伐軍の一部を惑わした広範囲の幻惑術も、多分この魔物の力よねぇ。となると、ここでさっさと始末するのが一番なのだけれど)
幻惑系統の能力がぶつかり合う場合、基本的には能力値の高い方の幻惑が勝るものだ。その要素だけで判断するのであれば、薄紅の王が負けるなどということはまず有り得ない。だがそれは、彼女が万全の状態であればの話である。
自分が今担っている幻惑魔法の数々を脳裏でなぞった薄紅の王は、次いで深々と溜息をついた。
「どうしても、貴女の相手は片手間になってしまうのよねぇ……」
誰に届けようと思っての呟きではなかったのだが、その小さな声は、どうやら獣の耳に届いたらしい。獣は優雅に首を傾げて女王を睥睨した。
『片手間で我の相手が務まると思うのかえ?』
「あらぁ、珍しい。人語を喋る獣がいるのねぇ」
小馬鹿にするようにそう返した薄紅の王だったが、内心では一層良くない状況になったと考えていた。
己の種族の言語のみならず、人などの他種族の言語まで扱える魔物は、基本的に知力、能力共に高いことが多い。その上、この獣の声は非常に冷静だ。他の魔物のように、異世界に無理矢理召喚されて使役されている現状に怒りを覚えているようには思えない。仮にその怒りを抑え込んでいるだけなのだとしても、それはそれで強靭な精神の持ち主であることになる。
内心に怒りがあるにせよないにせよ、冷静さを失っていない敵というのは面倒なものだ。
『さて、おぬしのような小娘の技で、数千を生きた我を越えられるとでも思うておるのかえ? ほほほ、人というのはどの世界においても、ほんに傲慢な生き物よなぁ』
鈴の音が鳴るような声で軽やかに笑った獣に、女王は嫣然たる笑みを返す。
「どんなときでも、若く見られるというのは心地が良いものねぇ。そのお礼と言ってはなんだけれど、ご老体はきちんと労わらせていただくわぁ」
微笑みのままにそう言った女王が、乗っていた騎獣を上空へと逃がしたのち、火霊と水霊の名前を呼ぶ。すると、彼女の姿を覆い隠すように、周囲に深い霧が立ち込め始めた。
(正面から向かっていくと、きっと美しくない結果になるわ。まずはこの霧でもう一度姿を隠してから、今出せる範囲の幻惑魔法で相手の五感を奪いましょう)
見る見るうちに霧に溶け込んで見えなくなっていく薄紅の女王だったが、しかしそれを嘲笑うかのように、獣の尾の先に炎が燈った。
霧の向こうで女王が僅か息を呑んだ瞬間、尾から放たれた九つの炎が、彼女に襲い掛かる。
「っ!」
咄嗟に身を捩って回避した女王の肩や脚を、炎が掠める。衣や肌を焼くそれに、彼女はすぐさま水霊魔法を発動して対応したが、それでも無傷ではいられなかった。
己の姿を隠す魔法は依然として保っており、それに加えて霧の幻で二重に姿を隠したはずだ。その上万全を期して、使用している幻惑魔法は、視覚だけでなく五感の全てに作用するような等級のものを選択している。それでも尚、敵が己の居場所を正確に把握してくるということは、
(……五感ではない、何か別の独自能力で察知しているのね)
女王にとって、相手は未知の生物だ。どんな能力を持っているのかなど、皆目見当もつかない。
『おお、上手いこと避けたものだ。褒めてつかわすぞ』
楽しそうにころころと笑う獣に、薄紅の王は思わず顔を顰めそうになり、寸前で堪えた。しかめっ面は美しくない。
しかし、この霧でも身を隠せないとなると、これ以上この魔法を持続させるのは魔力の無駄だ。そう判断した女王が、潔く魔法を解除する。少なくとも、霧の魔法以前に行った幻惑魔法を保ちさえすれば、基本的には他の魔物や兵に存在を気取られることはない。
だが、霧を解除した女王は、直後目に入ってきた光景に、柄にもなく悪態を吐きそうになってしまった。
「…………似たような話を、ギルヴィス王から聞いた覚えがあるわぁ」
霧が晴れた先では、彼女を取り囲むようにして、無数の獣がその視界を埋め尽くしていたのだ。
この時点で、薄紅の王が危惧しなければならないことは複数あった。
まずは、ここは未だ戦場であり、周囲には多くの敵兵や魔物がいた点だ。それは確かな事実であるにも関わらず、今の彼女の視界にはそれが一切入ってこない。
そしてもうひとつ。薄紅の王の幻が生んだ霧は、相手の五感を奪うものであっても、自分の五感に影響を与えるものではなかった点だ。故に、霧があろうとなかろうと、彼女が見る世界が変わることはないはずだった。
これらを総合して考えるに、
(妾が魔法を解除するのに合わせて、妾に幻術をかけた、ということになるわねぇ……)
そう。この敵は、この世界における幻術使いの最高峰である薄紅の女王に、幻を見せることができるのである。
地平線の果てまでをも埋め尽くす量の獣が、獲物を狩るときの目をして薄紅の王を見る。そして彼女には、己を取り囲むそれらのうちのどれが本物なのか、全く判らなかった。
にやにや、とも表現できそうな厭な笑みを、獣が浮かべた。それを受けた薄紅の女王は、数度の瞬きのあと、ほう、と息を吐く。
「本来であれば、こういうときのためのヴェールゴール王なのだけれど……」
かの王ならば、幻になど惑わされない。無限の幻が敵ならば、その全てを一瞬で屠るのがあの王の理不尽さなのだ。本物が判らないんだったら全部殺せば良いんだよ、とは、一体いつ聞いた台詞だったか。
だが、その彼は今近くにいない。もしも彼がこの場にいたならば、この獣の幻術などものともせずに女王のピンチに現れ、面倒臭そうな顔をしながらも全てを屠ってくれたことだろう。
(まあ、ないものをねだっても仕方がないわねぇ)
ひとりごちた女王が水霊の名を呼び、ぱさりと広げた扇を撫でる。それとほぼ同時に、ひしめく獣たちの尾から、無数の炎が迸った。
一斉に襲い来るその熱気は本物にしか思えぬほどで、つまりそれは女王にとって本物と寸分違わないということなのだろう。生き物は幻で死ねるという事実は、女王自身が誰よりも知っていることだ。
全方位方からやってくる炎の塊は、とてもではないが避けきれるような代物ではない。故に、女王も避けようとはしなかった。代わりに、右手に広げた扇を構え、軽やかに舞うようにして閃かせる。
いや、これは最早舞いそのものであると言って良いのだろう。
彼女がしなやかに腕を振るごとに、水霊を纏わせた扇から水の衣が翻り、襲い来る火球をするりと受け止めいなしていく。くるりくるりと踊る水の衣は溜息が出るほどに幻想的であり、その中心で舞う絶世の美女も相まってか、酷く現実味の薄い光景だった。
ときに撫でるように逸れて弾け、ときに破裂するように打ち消える炎は、あたかも女王の舞に歓喜乱舞しているかのようだ。
その場のすべてを美そのものへと昇華する彼女の舞は、戦めいた要素を全く感じさせない。飽くまでも、これはただの舞踏なのだと。自分はただ、自分のためにと用意された極上の舞台で踊っているだけなのだと。彼女の全身がそう語り、周囲の風景全てがそう謳う。
予想だにしない光景に驚いたのは、女王を追い詰めている側である獣の方だった。
薄紅の女王は、戦闘ができない。故に、十二国の中でも一、二を争うほどにか弱い王だ。そう、それが獣の聞いていた話であり、まごうかたなき事実である。
だというのに、女王には獣の攻撃が通用しない。いや、正確には、全く通用していないわけではなかった。これだけの数の炎だ。女王の舞ではいなし切れなかった炎は確かに存在し、それは確実に彼女の身を焦がしている。だが、それでも女王は表情を変えない。それどころか、優雅な舞は寸分も狂うことなく続いていく。衣を焼かれ、肌を焼かれても、彼女はまるでそれすらも演出であるかのように、微笑みのままに舞い続ける。
その光景は、数千を生きる獣をも戦慄させた。同時に、このままではいけないと獣の直感が告げる。そしてその直感のまま、獣たちは炎と共に一斉に女王へと跳びかかった。
瞬間、女王の舞ががらりと変化する。先程までのそれが穏やかでたおやかな春の木漏れ日のようなものならば、今度のそれは荒れ狂う嵐のような激しさを伴っている。
ときに大地を踏みしめ、ときに大地を蹴って跳ぶように舞い。いつの間にやら水に加えて風も纏い出した扇が、炎もろとも獣を切り裂いていく。
弾ける血飛沫の中で、それすらも演出へと変えてしまう彼女は、血に濡れてもなお美しい。
水と風を操り、女王はひたすらに舞う。だが、永遠に続くかと思われたその舞は、不意に入った邪魔により止まることとなった。
女王の視界の端で、激しい光を伴う閃光弾が打ち上がったのだ。
瞬間、女王の舞が大きく乱れ、同時にやわらかな美を湛えた表情が崩れる。その先に表れたのは、まさに怒り一色であった。
「まあ! なんて迷惑なのかしら! せっかく妾が美しい舞を披露していたというのに!」
怒りのままに叫んだ女王が、半ばやけっぱちのように火霊と水霊の名を呼ぶ。互いに仲の悪い二つの精霊を調和させて何がしかの魔法を発動させた彼女は、次いで一層怒りに染まった顔で獣の群れを睨んだ。
「折角この妾が後々のことまで考えて行動していたのに、こうなっては全部が水の泡だわぁ!」
叫んだ薄紅の王が、舞もそこそこに炎や獣を切り刻みながら、形の良い唇から音を紡ぐ。
「火霊、水霊、征伐軍に掛けている“真実の幻”を解除してちょうだい。ええ、良いのよ。どうせ原因はこの魔物だわぁ。これさえ片づけてしまえば必要のない魔法よ」
『はっ、小娘がよう言う。ほんに我を片づけられると思うておるのかえ?』
小馬鹿にするような不快な声が多重に響く。それがなんとも不愉快で、薄紅の王は少しだけ眉を顰めた。だが、彼女が反応を見せたのはそれだけで、特に言葉を返すことはない。その代わりに、側に控える火霊と水霊に対して更に言葉を続ける。
「ヴェールゴール王の選択に合わせざるを得ないわ。先ではなく今を解決しましょ。――“万物映し出す真なる虚偽”」
魔法の名を唇に上らせると同時に、女王の周囲で炎と水が弾け、霧のような細かな粒子が彼女を撫でた。
“万物映し出す真なる虚偽”。征伐軍にかけたものよりもずっと高等な、幻術破りの魔法である。
その高等魔法を詠唱抜きで発動させた女王は、しかし魔法の完成を待たず、続けて更なる魔法の名を紡いだ。
「“永久へ誘う果てなき幻夢”」
女王が魔法の名を唱え終わると同時に、瞬きをする間すらなく獣の見る世界が一変した。
大地の果てまで埋め尽くしていた己の幻の一切が消失し、代わりに景色が昼から夜へと変化する。分厚い雲の立ち込める空は、月が隠れ、漆黒の闇に包まれていた。
突如変貌した光景に、しかしそれでも冷静さを欠かない聡明な獣は、それが正しく幻であると見破った。だが、幻を幻と認識してなお、世界はそのままそこにある。
獣の認識に揺らぐことなく、僅かな歪みも生まれない世界に、違和と焦りを覚えた獣は幻術破りを試みた。が、その強大な力を以てしても、やはり世界は変わらない。
そこで初めて、獣は己を囲む無数の何かに気づいた。いや、聡明な獣は、その認識すらも違うと知っている。
気づいたのではなく、気づかされたのだ。
この世界は薄紅の王が生み出した世界だ。ならば、そのすべては彼女の掌の上にある。
ぞわりと背筋を這う悪寒に、獣は全身の毛を逆立てた。
獣は幻術の極みの一端に位置する存在であるが故に、幻術というものをよく知っている。幻はどんなに真に近づこうとも幻にしか過ぎないが、その幻が偽を真と定義するほどの高位なものであれば、それは対象にとっての真になってしまうのだ。
全てを察した獣が、この後に起こる確定された未来からの抜け道を探す。だが、同時に獣は気づいていた。既に確定された未来を覆すことなど、己にはできはしないのだと。
獣を囲む何か――人々の怨嗟が込められた無数の矢が、獣に向かって一斉に放たれる。幾千幾万もの呪いを帯びた矢が身体中に突き刺さり、獣は悲鳴を上げた。
それは過去の再現だ。かつてその身が一度滅びたときの再来である。故に二度は有り得ぬはずの物語は、しかし至高の幻惑を御する女王の手によって再び紡がれた。
毛皮を、肉を、骨を焼き切る灼熱にその身を溶かしながら、獣はそこでようやく女王の姿を認める。いや、認めさせられた。終わる獣を前に、女王は自らの意思でその姿を晒したのだ。
どこまでも冷たく、しかし逸らされることなく己の死を見つめる彼女の瞳に、果たして獣は何を思ったのか。
その答えを述べることなく、獣の身体が崩れ、灰となって風に舞う。
しばしその場に留まって散っていくそれを見届けた女王は、そこでようやくそっと息を吐き出し、力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
この瞬間を以て“万物映し出す真なる虚偽”と“永久へ誘う果てなき幻夢”は即座に解除したが、己に掛けている姿を隠す幻惑魔法はまだ継続させている。だからこそ未だに周囲に魔物が溢れるこの場で座り込むことができ、そして誰からも見られることがないと判っているからこそ晒す姿だ。
(……さすがに、少し無理をしすぎたわぁ……)
魔法の多重発動は、それだけで負担になる。そんな中、先の戦闘の最中彼女が成し遂げたのは、高位なものを含む魔法の七重発動だ。
黒の王に関する魔法が三つ、そのうち一つを、あの閃光弾を合図に数段強力なものへと変化させた。また、黒の王が持っている閃光弾にも、どこにいても彼女自身が気づけるようにと、女王にだけ見えるような幻惑魔法がかけられている。それに加え、自身の姿を隠す幻惑魔法と、敵の幻術を越えた真実を写すための魔法に、敵を仕留めるための魔法。
そして彼女は今もなお、このうちの五つを継続させている。戦いの前に黒の王にはああ言ったが、もうとっくに限界など越えているのだ。
何よりも、あの獣に勝つために発動させた二つの魔法と、黒の王の合図を受けて強化させた幻惑魔法が問題だった。
これらは全て、異次元における未知の感覚にも対応すべく、五感を越えたありとあらゆる感覚を支配し惑わす魔法だ。故に、それだけ難易度が高く、魔力の消費も著しい。
ひとつひとつは、赤の王の存在を丸ごと世界に誤認させたあのときほどのものではないが、こうもいっぺんに発動するとなると、あのときに勝るとも劣らないほどに女王の体力と精神を消耗させた。それも、今回は支えとなる王獣がいないのだ。女王にかかる負担は、およそ凡人の想像など及ばないほどに大きなものだろう。
自慢の珠の肌は所々が焼け爛れ、崩れた肉からは血が流れている。顔に浮かぶ疲労も色濃く、肩で息をしている様は、痛々しいとすら表せた。だが、それでも凛とした表情は常の彼女そのままで、踏まれようとも手折られようとも、決して枯れずに真っ直ぐ立ち続ける大輪の華を思わせる。
上がった息を整える間も惜しむように、女王は風霊の名を呼び、空へと逃がした騎獣を呼び戻させた。そして、ほどなくして傍らに降り立った獣をひと撫でしてから、懐にしまっていた小型の魔術器を取り出す。
これは、緊急の伝達用にと金の王が開発して渡してくれた、音を記録する魔術器だ。記録できる時間は短いが、こういうときに便利な代物である。
「……悪いけれど、妾は戦線離脱だわぁ。どうしても処理しきれない幻術系統の問題が発生した場合のみ対応はするけれど、戦力としては考えないでちょうだい。その代わり、残りの幻惑魔法だけは死守してあげる」
そこで言葉を終え、声の記録が完了したことを確認した女王は、風霊に命じ、騎獣鎧に結んである鳥籠の中の雷光鳥に魔術器を取り付けさせた。そして直後、鳥籠を開ければ、空に滑り出した鳥が一目散に飛んでいく。
雷光鳥は扱いが難しく、伝令役の言うことしか聞かない場合が多いのが難点だが、あらかじめ帰巣場所を命じた上で鳥籠に入れておけば、解放され次第その場所に向かうので、こういった緊急連絡手段が考えられた。この方法は、黄の王と金の王が相談して生み出したものである。
そこまでを終えた女王が、のろりと立ち上がって騎獣に座る。
身体を動かすことすら億劫だったが、こんなところにいて流れ弾でも食らったら、たまったものではない。とにもかくにも、今はすぐに安全な場所へと移動する必要があった。
いっそ今すぐ眠ってしまいたい、などとひとりごちる満身創痍の女王を乗せ、騎獣は再び幻の彼方へと消えるのであった。
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