精霊使いだって、恋したい

プロローグ

　すべての命に、精霊は宿る。大いなる海も、太陽が照らす光も、木の葉を揺らす風も、そのすべてに精霊が宿る。世界中に精霊は溢れ、人々は精霊の力を借りながら暮らしてきた。気まぐれで悪戯好きな精霊と、時には隣人として、時には友として、共に歴史を歩んできた。いつしか精霊は人間にその力を分け与え、人は魔法を使えるようになった。ただ、どんな偉大な魔法使いでも、精霊を使役することだけはできなかった。

　しかし、何百年かに一度、そんな精霊を召喚する力を持った人間が現れる――。

　ユーフィリア＝レディスハーク。名門の侯爵家に生まれたユーフィリアは、産声を上げたその時から、大精霊を召喚しその力を発揮した。

　ランディオン王国に、三百年ぶりの精霊使いが誕生した。

　人々はユーフィリアを見てこう囁く。

「精霊は彼女に全てを与え、彼女を祝福した」

　ユーフィリアはたった一人でこう呟く。

「こんな力、ただの呪いだわ」

　精霊に忌み嫌われた黒い瞳を持った男は、こう告げる。

「ユーフィリア、その苦しみは俺が全部引き受ける。だから――」


　これは精霊にいのちを握られた、一人の令嬢の物語。