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「…ところで君ぃ、名は?」
晴明がのほほんと問いかけてくる。
ーいや知らなかったんですかっ
「…優陽。笠原、優陽。」
「ーほう、ええ名前やん」
ーこの名前をつけてくれたのは私のおじいちゃんらしい。優しい陽だまりのような素敵な子になるように、と。まぁ実際あまり可愛げのない子に育ってしまったようではあるけど。画数が多くてテストの度にやや苦労はするものの、この名前は割と気に入ってる。
「えー、それではただ今を持ちましてー、期間は3年間の笠原優陽嬢をめぐる嫁取り合戦!スタートとさせていただきます!」
晴明がカァンとゴングを鳴らした。
ーどっからもって来たんですかそれ?!
私が心の中でツッコミを入れていると、次の瞬間。
ふわり。
私は白狐の…玉藻と名乗った男に抱き上げられていた。世間で言うお姫様だっこというやつである。
「?!」
「ーってことは早いもん勝ちやな。僕が貰ってくわー。」
そう言って私の方を見つめてくる。
「ーあかん、ほんま可愛いわ」
そして、愛しくてたまらないという風に私の頬に…優しく、口付けを落とした。
「っ~~~~っ!?!?」
ちょっと!!いくらなんでも手を出してくるの早すぎでしょ!
「…おい、ふざけんなよ。そいつは俺のもんや」
ガチャリと音を立てて、山伏が持つような錫杖を手にした烏天狗の…鬼道丸が一歩前に出た。
「…お?何や?錫杖なんか構えちゃってぇ、お前僕とやり合うつもりなんか??ーはぁー、嫌やわーこれやから北のもんは霊力低い上に野蛮でかなわんわー。」
「…あ?今てめぇ何つった」
鬼道丸の言葉を無視して、玉藻はもう一度周りに見せつける様に私にキスを落とす。
「こいつらに構ってたらこっちの霊力まで腐りそうやし、晴明、僕もう帰らしてもらいますわ」
そう言って玉藻は私を抱いたまま、紅の引かれた目をキュッと細めた。
私は、周りの空気がサッと変わるのを感じた。次に周囲を見渡すと、先ほどの神社の本殿や安倍晴明、他の3人の神様達の姿はもう無く、無数の朱い鳥居が立ち並ぶ小高い山の様な場所に来ていた。
「…ここ…伏見稲荷大社?」
「そう♪ご名答♪」
私の呟きに玉藻が機嫌良さそうに答える。
「ここが僕の本拠地で、京都の中で最も力の発揮できる場所なんやー」
社の方へ歩みを進めると、社の近くや鳥居の側から、たくさんの小さな白い狐たちが飛び出てきた。…か、かわいい…。
「おかえりなさいませ玉藻様!その女性は…お話されていた方ですね!もう手に入れなさるとは、さすが我らの玉藻様です!」
「ああ、まぁほんまはまだ手には入れてはないんやけどな…。すぐに僕のもんになるわ。」
ー何勝手に話進めてるんですか!誰の物にもなりませんから!!
私は今さら泣きたくなってきた。
晴明がのほほんと問いかけてくる。
ーいや知らなかったんですかっ
「…優陽。笠原、優陽。」
「ーほう、ええ名前やん」
ーこの名前をつけてくれたのは私のおじいちゃんらしい。優しい陽だまりのような素敵な子になるように、と。まぁ実際あまり可愛げのない子に育ってしまったようではあるけど。画数が多くてテストの度にやや苦労はするものの、この名前は割と気に入ってる。
「えー、それではただ今を持ちましてー、期間は3年間の笠原優陽嬢をめぐる嫁取り合戦!スタートとさせていただきます!」
晴明がカァンとゴングを鳴らした。
ーどっからもって来たんですかそれ?!
私が心の中でツッコミを入れていると、次の瞬間。
ふわり。
私は白狐の…玉藻と名乗った男に抱き上げられていた。世間で言うお姫様だっこというやつである。
「?!」
「ーってことは早いもん勝ちやな。僕が貰ってくわー。」
そう言って私の方を見つめてくる。
「ーあかん、ほんま可愛いわ」
そして、愛しくてたまらないという風に私の頬に…優しく、口付けを落とした。
「っ~~~~っ!?!?」
ちょっと!!いくらなんでも手を出してくるの早すぎでしょ!
「…おい、ふざけんなよ。そいつは俺のもんや」
ガチャリと音を立てて、山伏が持つような錫杖を手にした烏天狗の…鬼道丸が一歩前に出た。
「…お?何や?錫杖なんか構えちゃってぇ、お前僕とやり合うつもりなんか??ーはぁー、嫌やわーこれやから北のもんは霊力低い上に野蛮でかなわんわー。」
「…あ?今てめぇ何つった」
鬼道丸の言葉を無視して、玉藻はもう一度周りに見せつける様に私にキスを落とす。
「こいつらに構ってたらこっちの霊力まで腐りそうやし、晴明、僕もう帰らしてもらいますわ」
そう言って玉藻は私を抱いたまま、紅の引かれた目をキュッと細めた。
私は、周りの空気がサッと変わるのを感じた。次に周囲を見渡すと、先ほどの神社の本殿や安倍晴明、他の3人の神様達の姿はもう無く、無数の朱い鳥居が立ち並ぶ小高い山の様な場所に来ていた。
「…ここ…伏見稲荷大社?」
「そう♪ご名答♪」
私の呟きに玉藻が機嫌良さそうに答える。
「ここが僕の本拠地で、京都の中で最も力の発揮できる場所なんやー」
社の方へ歩みを進めると、社の近くや鳥居の側から、たくさんの小さな白い狐たちが飛び出てきた。…か、かわいい…。
「おかえりなさいませ玉藻様!その女性は…お話されていた方ですね!もう手に入れなさるとは、さすが我らの玉藻様です!」
「ああ、まぁほんまはまだ手には入れてはないんやけどな…。すぐに僕のもんになるわ。」
ー何勝手に話進めてるんですか!誰の物にもなりませんから!!
私は今さら泣きたくなってきた。
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