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ビジネスパートナーのサム

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 翌日、史哉はサムに紹介され、彼以外のウテヤラカン星人と顔合わせをした。
 と言っても日本語を話せるのはサムしかおらず、彼らは皆英語しか話せないため、史哉はそれに合わせて英語で会話をすることにした。

「サムはなんで日本語が話せるのですか」
「私は知識欲が強いんです。生活に不要な知識もすべて知らないと気が済まなない性分でして、地球の言語も約六千九百種類のうちほとんどを習得しました。日本語は特に難しかったですね」

 サムは何ともないように言うが、そんなにさらっと話すことではない。
 英語を話すのにも苦労した史哉からすれば、趣味で六千九百種の言語を話すサムはとんでもなく優れた人物だ。
 他のウテヤラカン星人を見ると肩を竦めていた。
 どうやら彼らの中でもサムは変わり者扱いされているようだ。
 史哉は乾いた笑い声を上げた。
 
「ははっ……。そういうわりに、随分とお上手ですよ」
「ありがとうございます。聞きづらい発音があれば聞いてください」
「英語でいいですよ」
「いいえ。フミヤには慣れない環境で仕事をしてもらいますから、そういうところは日本語の方がいいでしょう」
「まあ、そうですけど……」
「このプロジェクトの担当は私だけですし、私ももっと日本のことを知りたいので。ね、いいでしょう?」
「はい、ではお言葉に甘えて」

 半ば強引に日本語で会話することが決まった。
 サム以外と話す時は英語での会話になる。
 史哉は湿気が凄い空間で食事をとると、サムに案内されて仕事部屋に向かった。

 その部屋はパソコンなどの周辺機器があるからか、湿気は最低限だった。
 彼らは体表が完全に乾く前に休憩を取りに行くらしい。
 史哉にあてがわれたのは日当たりのいい窓側の席だった。
 パソコンを起動すると横からサムが画面を操作し、容量の大きいフォルダを開いた。
 中には日本語でエイリアンの星の名前が書かれているファイルが何十個も保存されていた。

「フミヤ、これが現在地球に出入りしているエイリアンの情報です」
「ありがとうございます」
「参考までにこの一番上のデータを開きますね。えっと、アエロメコテソ星人の情報ですね」

 サムが開いたそれにはアエロメコテソ星の写真や位置情報、環境などが載っており、最後にアエロメコテソ星人の全身写真が表示されていた。
 アエロメコテソ星人は所謂動物型と言われる見た目をしていた。
 どこが手でどこが足なのかよくわからないタコのような見た目のアエロメコテソ星人のランジェリーを作るのが史哉の仕事だ。
 史哉は一発目の案件から頭を抱えることになった。

「あの、彼らはどこが足ですか?」
「このたくさんある手の奥に太い足が四本あります。あ、これを使った方がいいか」

 実際に頭を抱えた史哉を見て、サムは対面にある彼の机の中から手のひらサイズの楕円形の機械を取り出した。
 サムが何か操作して地面に置くと、その上にアエロメコテソ星人が現れた。

「これは……?」
「実物大のホログラムです。これならフミヤもわかりやすくですし、私も説明しやすいです」
「そうですね。いやぁ便利ですね」
「これはヘヨカペタリサオ星人が開発した物でして、彼らが作るホログラム装置が一番解像度が高くて重宝しているんです」
「地球からすればエイリアン様々ですね」
「ええ。この衣服問題が解決したら地球でも順次発売するらしいですよ」
「へえ。私も買おうかな」
「是非是非」

 話が一区切りついたところでランジェリー作りに戻る。
 ホログラムはサムの言う通り鮮明に映し出されていて全方向から観察できる。
 別ポーズもあった。
 手を万歳した状態のものがあったため、史哉はしばらくじっと凝視して観察したあと、さらさらと手に持っていた髪と鉛筆でスケッチし、まずは形を決めていく。

「凄いですね。あっという間にパンツの形ができています」
「この形で合うかは試着してもらわないと。デザインはそれからですね」
「私もこの任務が決まってから服飾の勉強をしました。全部あるうちの半分は私も考えますので、色々教えてくださいね」
「こちらこそ」

 それから史哉は猛スピードで仕事を進めていった。
 観察、アイデアの出力、スケッチ、そして次のエイリアンの観察……。
 史哉はある程度の形を決め、その後に熟考するタイプだ。
 その方が一番効率がよく、史哉に合ってある。

 その間、サムは史哉の疑問に受け答えしたり、他の星人のランジェリーの形をある程度考えたりしてくれた。
 サムは博識な上にきちんとそれを仕事にいかせるデキる男だった。
 打てば響くようなやり取りに史哉は夢中になった。
 日本に置いてきた仲間も優秀だが、それ以上に優秀なサムとこれからも一緒に仕事をしたいと思うのは自然なことだった。
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