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2024年9月
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9月2日 痛み 月明かり カクテル
1 閑静な住宅街の一角にある洋館。地下へと続く階段を降りると、月明かりが差し込むバーがある。俺が彼と作った秘密基地だ。二人分のカクテルを作り、カウンターに並べる。一人で飲む酒は寂しい。思い出のカクテルを飲んでも、胸の痛みは治ってくれない。「なんでだよ」嘆きは夜の空気に溶けていった。
2 月明かりを溶かして混ぜたようなカクテル。ブルーパールというらしいそれは刺激的な味だった。「きっつ」痛みにも似た感覚が舌に残る。カクテルを提供した当の本人は、悶える僕を笑っている。いいさ、よく覚えていろよ。今夜は徹底的に責め立てて啼かせてやる。泣いて縋って懇願したって知るもんか!
9月5日 閉じこめる 抱きしめる ニヤリ
1 親友だと思っていた奴は悪魔だった。俺の魂を狙って近づいた。ニヤリと酷薄な笑みを浮かべる悪魔は、俺を不思議な空間に閉じこめた。走っても走っても、どこにも辿り着けない。呆然とする俺の背中を、悪魔は抱きしめる。「諦めて堕ちてこい」耳元で囁かれる甘言に首を振った俺を、奴は嘲笑った。
2 彼の部屋で、彼の服に埋もれながら一人で致していたことがバレた。彼は服を引っ掛けたまま逃げようとする俺を抱きしめ、腕の中に閉じこめた。「そんな可愛いことしちゃって、無事に帰れると思ってんの?」ああ、思っていたさ。さっきまではな!恐る恐る顔を上げれば、ニヤリと笑った彼と目が合った。
9月7日 化粧 あの日 あえて
1 和平のために、俺の意思に関係なく結ばれた婚姻。式に合わせて作られた真っ白な敵国の民族衣装。式のために、あえて濃く施された化粧。聖堂で待つのは憎い相手。そして、いつか結婚しようと約束した幼馴染。あの日、花園で交わした約束は守れないまま、俺は愛しい人の前で、別の人と誓いのキスをする。
2 あの日は文化祭だった。俺のクラスはメイド喫茶をすることになっていたが、メイド役の女子生徒が風邪で休んでしまった。細身の俺はあえて立候補し、薄く化粧をしてメイドに変身した。彼に意識して欲しかったから。「うわ懐かしい」「だろ?」思い出のメイド服は今も現役。俺は今夜も寝られないだろう。
9月8日 あの日 逃げられない 窓
1 あの日、あの場所で、あいつと出会ったのが運の尽き。まさか一年後に窓のない部屋に軟禁されるなんて。出入口は生体認証の鍵で閉ざされて逃げられない。かと言って何かされるわけでもない。あいつが何をしたいのかわからなかった。でも、たった今、それがわかった。「抱くよ」視線の意味も、その心も。
2 窓から差し込む月明かり。遠い昔、あの日と同じ状況。でも、今度こそ逃げられない。「好きなのは俺だけ?」ベッドに押し倒され、腕で囲まれ懇願するような顔で問われる。関係が壊れるのが怖くて逃げ続けていた。でも、そろそろ年貢の納め時らしい。「俺も好きだ」重なった唇は火傷するように熱かった。
9月17日 よかったね 離さない 憐憫
1 「絶対に離さない」赤く痛々しい噛み跡が散らばる体を力の限り抱き締める。腕の中の彼に、抵抗する力は残っていない。これは俺が望んだこと。なのに、心はちっとも満たされない。どうして、何故。「そう。よかったね」掠れた声が鼓膜を震わせる。彼の顔を覗き込めば、憐憫の眼差しが俺を貫いてきた。
2 駆け落ちなんて今時流行らない。でも、俺たちはやっと解放された。「逃げ切れてよかったね」「ああ。もう二度と離さない」頼るものは何もない。でも、二人でいれば、きっとなんでもできる。鎖から解き放たれた俺たちに憐憫はいらない。道なき道を、俺たちは支え合いながら進んでいく。永遠に、幸せに。
1 閑静な住宅街の一角にある洋館。地下へと続く階段を降りると、月明かりが差し込むバーがある。俺が彼と作った秘密基地だ。二人分のカクテルを作り、カウンターに並べる。一人で飲む酒は寂しい。思い出のカクテルを飲んでも、胸の痛みは治ってくれない。「なんでだよ」嘆きは夜の空気に溶けていった。
2 月明かりを溶かして混ぜたようなカクテル。ブルーパールというらしいそれは刺激的な味だった。「きっつ」痛みにも似た感覚が舌に残る。カクテルを提供した当の本人は、悶える僕を笑っている。いいさ、よく覚えていろよ。今夜は徹底的に責め立てて啼かせてやる。泣いて縋って懇願したって知るもんか!
9月5日 閉じこめる 抱きしめる ニヤリ
1 親友だと思っていた奴は悪魔だった。俺の魂を狙って近づいた。ニヤリと酷薄な笑みを浮かべる悪魔は、俺を不思議な空間に閉じこめた。走っても走っても、どこにも辿り着けない。呆然とする俺の背中を、悪魔は抱きしめる。「諦めて堕ちてこい」耳元で囁かれる甘言に首を振った俺を、奴は嘲笑った。
2 彼の部屋で、彼の服に埋もれながら一人で致していたことがバレた。彼は服を引っ掛けたまま逃げようとする俺を抱きしめ、腕の中に閉じこめた。「そんな可愛いことしちゃって、無事に帰れると思ってんの?」ああ、思っていたさ。さっきまではな!恐る恐る顔を上げれば、ニヤリと笑った彼と目が合った。
9月7日 化粧 あの日 あえて
1 和平のために、俺の意思に関係なく結ばれた婚姻。式に合わせて作られた真っ白な敵国の民族衣装。式のために、あえて濃く施された化粧。聖堂で待つのは憎い相手。そして、いつか結婚しようと約束した幼馴染。あの日、花園で交わした約束は守れないまま、俺は愛しい人の前で、別の人と誓いのキスをする。
2 あの日は文化祭だった。俺のクラスはメイド喫茶をすることになっていたが、メイド役の女子生徒が風邪で休んでしまった。細身の俺はあえて立候補し、薄く化粧をしてメイドに変身した。彼に意識して欲しかったから。「うわ懐かしい」「だろ?」思い出のメイド服は今も現役。俺は今夜も寝られないだろう。
9月8日 あの日 逃げられない 窓
1 あの日、あの場所で、あいつと出会ったのが運の尽き。まさか一年後に窓のない部屋に軟禁されるなんて。出入口は生体認証の鍵で閉ざされて逃げられない。かと言って何かされるわけでもない。あいつが何をしたいのかわからなかった。でも、たった今、それがわかった。「抱くよ」視線の意味も、その心も。
2 窓から差し込む月明かり。遠い昔、あの日と同じ状況。でも、今度こそ逃げられない。「好きなのは俺だけ?」ベッドに押し倒され、腕で囲まれ懇願するような顔で問われる。関係が壊れるのが怖くて逃げ続けていた。でも、そろそろ年貢の納め時らしい。「俺も好きだ」重なった唇は火傷するように熱かった。
9月17日 よかったね 離さない 憐憫
1 「絶対に離さない」赤く痛々しい噛み跡が散らばる体を力の限り抱き締める。腕の中の彼に、抵抗する力は残っていない。これは俺が望んだこと。なのに、心はちっとも満たされない。どうして、何故。「そう。よかったね」掠れた声が鼓膜を震わせる。彼の顔を覗き込めば、憐憫の眼差しが俺を貫いてきた。
2 駆け落ちなんて今時流行らない。でも、俺たちはやっと解放された。「逃げ切れてよかったね」「ああ。もう二度と離さない」頼るものは何もない。でも、二人でいれば、きっとなんでもできる。鎖から解き放たれた俺たちに憐憫はいらない。道なき道を、俺たちは支え合いながら進んでいく。永遠に、幸せに。
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