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本編
静かな夜
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楠原さんは怖がっている僕のために敷き布団まで用意して家にきてくれた。こんな親切な人がこの世にいていいのだろうか。
雷はまだ鳴っていて、体が光に反応し音にも反応するビビりな僕は部屋の角に体育館座りをする。それに比べて、初めて通した僕の自室でも楠原さんは着々と就寝の準備をしてくれている。
全く、家主はどちらなんだろう。
「準備させてごめんなさい。」
「大丈夫ですよ。こちらこそ押し掛けてすみません。」
眉が垂れる楠原さん。謝ることなんて何もないのに、僕があまりに申し訳なさそうにするから気を遣ってくれたんだろう。
「楠原さんがいてくれて安心です。」
「よかった。お風呂は一人ではいれますか?」
笑いながら言われて子ども扱いされていることに気がついた。自然に頬が丸くなる。
「大丈夫です。それくらい…。」
「そうですか、残念です。」
「もう入ってきちゃいます!」
足早に風呂場に駆け込みドアを閉める。
カチャッとドアのしまる音と共に少しの後悔が押し寄せた。
冗談を真に受けて拗ねるなんて、本当に子どもみたいなことをしてしまった。こんな僕では子ども扱いされてもしょうがなかったのかもしれない。
気を取り直してシャワーを浴びていると冷めた体が熱くなる。
それに、これから楠原さんとお泊まりすることになったからシャワーが余計に熱く感じて、熱気冷ましに冷水を浴びた。
楠原さんがシャワーに入っている間、僕はシャワーの音を聴きながらドアの前をうろうろしていた。雷の音や光が怖いだけであって、決して変な気持ちがあるわけではない。
シャワーの音が止まったので僕は急いで部屋に戻る。
雷が怖いからといって楠原さんが風呂から出るのを待っていたなんて恥ずかしくて気づかれたくはない。
ドライヤーをして雷を誤魔化しながら待っていると楠原さんはすぐに部屋に戻ってきてくれた。僕の男にしては長めな髪ももう乾ききっていたのでドライヤーを手渡す。
前髪があると楠原さんも結構髪が長いことに気がついた。いつもはワックスで固めているから新鮮で、僕がじっと見つめてしまっていたからか目が合う。
「もう寝ちゃいましょう。寝てれば雷なんて聞こえませんから。」
ドライヤーを切って楠原さんは先に布団にはいった。
「そうで…!」
そうですね。なんてありきたりな返事をしようとしたら今日一番大きな雷の光が部屋を照らす。ビビりな僕は布団に土下座する勢いで頭から突っ込んだ。
「楠原さん、布団くっつけていいですか!」
返事を聞くこと無く、拳二個分あった布団同士を合わせて毛布にくるまる。もし途中で起きて不安になってもすぐに安心できるように楠原さんの方を向いて横になった。
「…大丈夫ですよ。ずっと俺が隣にいるから。」
怖がっている僕を見かねて楠原さんは子どもをあやすように布団越しに腰をポンポンしながら目を閉じた。楠原さんに触れられると途端に安心して、さっきまで冴えていた目も閉じ始める。
「お休みなさい。」
「お休み。」
寝る前の挨拶もちゃんとして目を閉じると嵐の夜中に起きること無く、次に目を開けたのは休日の起床アラームを止めるためだった。
雷はまだ鳴っていて、体が光に反応し音にも反応するビビりな僕は部屋の角に体育館座りをする。それに比べて、初めて通した僕の自室でも楠原さんは着々と就寝の準備をしてくれている。
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「大丈夫です。それくらい…。」
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足早に風呂場に駆け込みドアを閉める。
カチャッとドアのしまる音と共に少しの後悔が押し寄せた。
冗談を真に受けて拗ねるなんて、本当に子どもみたいなことをしてしまった。こんな僕では子ども扱いされてもしょうがなかったのかもしれない。
気を取り直してシャワーを浴びていると冷めた体が熱くなる。
それに、これから楠原さんとお泊まりすることになったからシャワーが余計に熱く感じて、熱気冷ましに冷水を浴びた。
楠原さんがシャワーに入っている間、僕はシャワーの音を聴きながらドアの前をうろうろしていた。雷の音や光が怖いだけであって、決して変な気持ちがあるわけではない。
シャワーの音が止まったので僕は急いで部屋に戻る。
雷が怖いからといって楠原さんが風呂から出るのを待っていたなんて恥ずかしくて気づかれたくはない。
ドライヤーをして雷を誤魔化しながら待っていると楠原さんはすぐに部屋に戻ってきてくれた。僕の男にしては長めな髪ももう乾ききっていたのでドライヤーを手渡す。
前髪があると楠原さんも結構髪が長いことに気がついた。いつもはワックスで固めているから新鮮で、僕がじっと見つめてしまっていたからか目が合う。
「もう寝ちゃいましょう。寝てれば雷なんて聞こえませんから。」
ドライヤーを切って楠原さんは先に布団にはいった。
「そうで…!」
そうですね。なんてありきたりな返事をしようとしたら今日一番大きな雷の光が部屋を照らす。ビビりな僕は布団に土下座する勢いで頭から突っ込んだ。
「楠原さん、布団くっつけていいですか!」
返事を聞くこと無く、拳二個分あった布団同士を合わせて毛布にくるまる。もし途中で起きて不安になってもすぐに安心できるように楠原さんの方を向いて横になった。
「…大丈夫ですよ。ずっと俺が隣にいるから。」
怖がっている僕を見かねて楠原さんは子どもをあやすように布団越しに腰をポンポンしながら目を閉じた。楠原さんに触れられると途端に安心して、さっきまで冴えていた目も閉じ始める。
「お休みなさい。」
「お休み。」
寝る前の挨拶もちゃんとして目を閉じると嵐の夜中に起きること無く、次に目を開けたのは休日の起床アラームを止めるためだった。
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