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菖蒲が見てきた世界

本当に…夢…?

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「おはよー。今日もよろしくね。」
まるで、気まずくて結局何もできなかった昨日が無かったかのような、いつもの対応の菖蒲さん。でも、私はあまりいつもの感じでいられない。何せ、人の過去を見たのだから。
「よろしくお願いします。」
こっちも一応いつもと同じだが、昨日あった事は嫌というほど鮮明に覚えている。もう、忘れる事は無いだろう。しっかりと肝に銘じた。あれほどはっきり記憶に残る夢。でも、あれは本当に夢だったのだろうか…
いつの間にか階段を上っていた。その時、ふと菖蒲さんから声をかけられた。
「シンちゃん、大丈夫?その足。」
「足…ですか?」
「そう。その足。誰かに掴まれた跡みたいになってる。」
見ると、左足首辺りが誰かに掴まれた跡のようになっていた。昨日の夜、沼の中に引きずり込まれるかと思ったときについたように見える。
「大丈夫?何かあった?」
そう言えば朝、起きたとき、顔の右半分に血がついていた。頬のところだけ、何かでなぞった後のようになっていた。
いよいよ、あれが本当に夢だったのか怪しくなってきた。
「ええっと…」
その時、丁度いつもの部屋についた。
言った方がいいだろうか。たしか、に菖蒲さんは言った。『何かおかしい事とか、今までに感じたことない事とかが起きたら、時間も申し訳ないも関係なくこの電話を使って。』
「昨日見た夢が…関係あるのかもしれません。」
私は、首が折れた男の人、沼に引き込ませてきたかと思えば、自ら首を切った女の人の事を話した。
「…何か、関係があるのでしょうか。」
…少しの沈黙。この時間が一番怖い。次の返事が何かを考えれば考えるほど、わからなくなる。考えたら駄目だと、空回りして余計混乱するとわかっているのに。
「…うん。多分、それが原因。もしかしたら、私がその話をした時に、異能が発動していたのかもしれないね。」
「…え」
「つまり、話していた時に、思考を読み取る異能が発動しようとしていた。けれど、もう抑えることができていたから発動が止まった。しかし、多分私の話にたじろいで、異能を抑えるのが不完全だった。そのツケで残ってた分が、夜に発動したんだよ。つまり、記憶を覗いたものの、本人に見せるまでは発動できなかった。言いたくて言いたくて、うずうずしてたって言ったらわかりやすいかな。長い時間空いたから、異能の力も積もりに積もった。だから、見ていた時間が長かったんじゃない?あと、印象に残り過ぎたせいで、普通に発動した時よりも現実味が増した。そのせいで、足に手で握ったような跡があったり、顔に血がついたりしたんじゃないのかな?けど、それも全部体が錯覚して起こしたんだと思う。血も汗を血だと錯覚したんだと思うよ。」
「…つまり、あの時見たものは全て菖蒲さんの記憶…ですか…?」
つい、聞いてしまった。いつもは絶対にやらないのに。
「…知りたい?残酷な話になるけど。」
「菖蒲さんが話してくれるのなら。」
どうせ教えてくれるのなら教えてほしい。けれど、いつもは聞かない事を聞いた思うと、少しだけ後悔を感じる。
「…わかった。なら、少し長いけど今日は私の昔話をしようか。」
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