異能少女〜私と母と菖蒲さん〜

練習開始！

暗闇空間

　また広がる暗闇の空間。あてもなく歩いていたら、女の人が一人立っていた。まるで唯一周りを照らす光のようだ。
「起きなさい。」
そっと優しく話しかけてくる女性。まるでお母さんみたいだ。
「貴方は…誰なの？」
そう尋ねると、少し悲しそうな顔をして、
「私はあなたを知っている人よ。私にとってあなたはとても大切な人。さぁ、起きて。目を覚まして。あなたの大切な人達が待ってる。お父さんも、菖蒲も。」
そうだ。私には私を待っている人がいる。なら、あの人は？一体誰なの？なぜ私の名前を知っているの？菖蒲さんの事まで呼び捨てで呼んでる。
　様々な疑問から導き出された答えは一つ。だが、答えを問おうとしたとき、目が覚め始めた。
（だめ。もう少し待って。まだ聞かなければいけないことがある。）
「待って！最後にひとつだけ！あなたは私のお母さんですか？」
覚め始める目。答えまであと少し。
「私はあなたのお母さんを名乗る権利はないわ。」
「権利が無いなんて事は無いから！それでもないって言うんなら私が認める！そしたら私にとってあなたはお母さんになるから！」
ずっと会いたかった私を産んでくれたお母さん。
「待って！お母さん！」
さっきの言葉に母は涙を流したが、すぐに後ろを向いて遠のいていくお母さん。いや、勝手に光の方へ導かれている。まだあなたと話したいこと、沢山ある。こんな所でさようならは嫌だ。けど、待ってくれている人がいる。
聞こえるかもわからないが、自分の出せる全力で声を出した。
「お母さん！私、頑張るから見ててね！」
その言葉に母は振り向いた。声が届いたんだ。
「頑張ってね。私はいつもあなたの中で見守ってるよ。」
そう言って優しく笑いかけてくれた。
「お母さん！」