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嫌とは言えない
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お茶会はその日の昼に開かれた。ウィーネは肩まである水色の髪の毛をきれいにとかしてもらった後に、母からもらったお気に入りのピンを髪の毛にさして、婚約者の到着をそわそわしながら待っていた。
だがしかし、突然婚約者を目の前にするとそわそわは緊張へと変わり、頭は真っ白になってしまった。
どんな話をしようとしてたんだっけ…
ウィーネはカチコチに固まったまま、向かい側で同じくカチコチに固まっている婚約者を見た。今二人は庭のバルコニーに来ており、周りには婚約者の護衛が一人と自分の護衛が一人、メイドが二人、距離を取ってウィーネたちを見守っている。
突然、婚約者が息を吸って、ウィーネの方を見た。
「初めまして!僕はフィオルド・ヴェネストロです。…ウィーネ嬢」
意を決したような口調はだんだんと小さくなって、しまいに彼はしゅんとうなだれた。
「あの、僕、そんなにお話が上手ではなくて…その、退屈させてしまってたら申し訳ないです…」
最後には涙目になり、そういうフィオルドにウィーネは慌ててフォローに入る。
「いいえ、そんな退屈だなんて!フィオルド様…せっかく婚約者になったのですから、私の事は呼び捨てで構いませんわ。」
ウィーネがぎゅっとのフィオルドの手を握り、そういうと、フィオルドも小さな声で「僕も、フィンでいいです。…ウィーネ」
と言って、真っ赤に染まった顔を下に向けた。
ウィーネは今まで出会ったことのないタイプだと思いつつうまくやっていけそうだと安どの息をついた。
「はい、フィン。これからよろしくお願いします」
そういってウィーネが嬉しそうに笑うと、フィオルドもつられて笑顔になった。
***
こうして出会ったウィーネとフィオルドは無事に成長し、関係も良好なまま、15歳になった。
因みに。ウィーネは婚約してからというもの、めきめきと強くなりついに護衛を打ち負かすほどになった。そのことに満足したのかどうかは定かではないが、それ以降木刀を一切振り回さなくなった。彼女に弟が生まれてからはマナーを身に着け立派な淑女へと成長していた。外見だけは。
貴族は15歳になると学園に入学するという国の規則があるので、二人は例外なく、学園に入学したのであった。
そして半年の月日がたち、いろいろな情報を仕入れたウィーネはさっそく実践しようとフィオルドの教室を訪れた。
「フィンはいるかしら?」
その声は、フィオルドと同じクラスならもう誰もが聞きなれた声なので、皆がフィオルドの方を見る。
「…はい。」
正直、今この昼食をとる時間にウィーネがくることに嫌な予感しかしないフィオルドはしぶしぶ教室の扉のもとへ向かおうと席を立つと、ウィーネは慌てたようにフィオルドの席の近くまで来て、「立つだけでいいの」といった。
「???」
何をしようとしているのか全くつかめないフィオルドはとりあえず言われたとおりに席から立ち上がった。
するとその席に意を決したような顔でウィーネが座った。
「えっと…?ウィーネ?」
フィオルドの困惑をよそに、ウィーネはぐっと自分の方にフィオルドを引き寄せた。突然のことによろけたフィオルドはそのままウィーネの膝の上に座る形で着地する。
「わ!ごめん」
そういって立ち上がろうとするフィオルドをウィーネが後ろからぎゅっと抱き着いて阻止してきた。ぎゅっとガキ疲れてはフィオルドも動きを止めるほかない。
それに、小さい頃はなかった、やわらかいものが背中に当たって…それを意識した瞬間、フィオルドは顔を真っ赤に染めた。
「ウィ、ウィーネ?」
腰に絡まったウィーネの腕をほどこうとすると、彼女の腕の力は強まった。
どうする事も出来ずにおろおろしているとクラスメイトの一人で、隣の席のビルが笑いながら近づいてきた。
「おうおう、仲がよろしい事で。」
クックックと笑うビルにフィオルドは涙目になって助けを求めるが、華麗にスルーされる。
「ビル!助けてくれよ!僕はどうしたらいいんだよ…お昼は?っていうかこの格好、恥ずかしい!」
思いのたけをビルにぶつけると、彼はフィオルドの頭をよしよしとなでてからこういった。
「自分で考えろ」
颯爽と去っていった友人を恨めし気に見つめながら後ろから抱き着いているウィーネの腕をトントンとたたいた。
「ねぇ、ウィーネ、どうしたの?」
そういうとウィーネは
「この体制のまま、フィンにご飯を食べさせたい。」
と言った。
クラスメイトの多くは食堂に消え、クラスに残っている者は端の方によっている。教室の窓からは秘かにこちらを観察している人たちもいるのに…この状況で!?
恐る恐るウィーネの方をフィオルドが見るときらきらした目をこちらに向けてきた。
「そんなことするわけないだろ!後々恥ずかしかったり、文句を言われるのは俺なんだぞ!と言うか、そんなのどこで学んだんだよ!!!」とは言えないフィオルドである。
結果、フィオルドはその日の昼食をすべてウィーネの手から食べることになり、クラスメイトから散々からかわれたのであった。
「ビル、そこまで言うのなら、お前も婚約者にやってもらったらどうだ?」
フィオルドがすっと隣に座る友人をにらむと彼は両手を上げて笑いながら「ぜってーやだ。」ときっぱり。
「僕だって…嫌だった。」
そう不貞腐れたようにフィオルドが告げると、ビルはにやにやしながら「でも本当は?」「うれしかったんじゃない?」とか聞いてきたので、「まぁそりゃ…少しはうれしかったけどさ」とボソッとつぶやくと。
「そう!ならよかったわ!!!」と背後からなれた声が聞こえてきた。
ギギギと恐る恐る振り返ると、そこには満面の笑みのウィーネがいた。
「ちょっと待って・・・?そういう意味じゃ…」
「私もっと頑張りますわ!!!」
「いや、だからね、」
「少し遅くなります。今日は先に帰っていてくださいな。」
それだけ言うとウィーネは嬉しそうに小走りで去っていった。
「お前、いろいろと苦労してんだな…」
ポンポンと背中をビルにたたかれながら、フィオルドは机に突っ伏した。
それから彼女の姿を思い出して、ふと笑みを浮かべながら「まぁ、ウィーネが嬉しそうだから別にいいけど」とこぼした。
だがしかし、突然婚約者を目の前にするとそわそわは緊張へと変わり、頭は真っ白になってしまった。
どんな話をしようとしてたんだっけ…
ウィーネはカチコチに固まったまま、向かい側で同じくカチコチに固まっている婚約者を見た。今二人は庭のバルコニーに来ており、周りには婚約者の護衛が一人と自分の護衛が一人、メイドが二人、距離を取ってウィーネたちを見守っている。
突然、婚約者が息を吸って、ウィーネの方を見た。
「初めまして!僕はフィオルド・ヴェネストロです。…ウィーネ嬢」
意を決したような口調はだんだんと小さくなって、しまいに彼はしゅんとうなだれた。
「あの、僕、そんなにお話が上手ではなくて…その、退屈させてしまってたら申し訳ないです…」
最後には涙目になり、そういうフィオルドにウィーネは慌ててフォローに入る。
「いいえ、そんな退屈だなんて!フィオルド様…せっかく婚約者になったのですから、私の事は呼び捨てで構いませんわ。」
ウィーネがぎゅっとのフィオルドの手を握り、そういうと、フィオルドも小さな声で「僕も、フィンでいいです。…ウィーネ」
と言って、真っ赤に染まった顔を下に向けた。
ウィーネは今まで出会ったことのないタイプだと思いつつうまくやっていけそうだと安どの息をついた。
「はい、フィン。これからよろしくお願いします」
そういってウィーネが嬉しそうに笑うと、フィオルドもつられて笑顔になった。
***
こうして出会ったウィーネとフィオルドは無事に成長し、関係も良好なまま、15歳になった。
因みに。ウィーネは婚約してからというもの、めきめきと強くなりついに護衛を打ち負かすほどになった。そのことに満足したのかどうかは定かではないが、それ以降木刀を一切振り回さなくなった。彼女に弟が生まれてからはマナーを身に着け立派な淑女へと成長していた。外見だけは。
貴族は15歳になると学園に入学するという国の規則があるので、二人は例外なく、学園に入学したのであった。
そして半年の月日がたち、いろいろな情報を仕入れたウィーネはさっそく実践しようとフィオルドの教室を訪れた。
「フィンはいるかしら?」
その声は、フィオルドと同じクラスならもう誰もが聞きなれた声なので、皆がフィオルドの方を見る。
「…はい。」
正直、今この昼食をとる時間にウィーネがくることに嫌な予感しかしないフィオルドはしぶしぶ教室の扉のもとへ向かおうと席を立つと、ウィーネは慌てたようにフィオルドの席の近くまで来て、「立つだけでいいの」といった。
「???」
何をしようとしているのか全くつかめないフィオルドはとりあえず言われたとおりに席から立ち上がった。
するとその席に意を決したような顔でウィーネが座った。
「えっと…?ウィーネ?」
フィオルドの困惑をよそに、ウィーネはぐっと自分の方にフィオルドを引き寄せた。突然のことによろけたフィオルドはそのままウィーネの膝の上に座る形で着地する。
「わ!ごめん」
そういって立ち上がろうとするフィオルドをウィーネが後ろからぎゅっと抱き着いて阻止してきた。ぎゅっとガキ疲れてはフィオルドも動きを止めるほかない。
それに、小さい頃はなかった、やわらかいものが背中に当たって…それを意識した瞬間、フィオルドは顔を真っ赤に染めた。
「ウィ、ウィーネ?」
腰に絡まったウィーネの腕をほどこうとすると、彼女の腕の力は強まった。
どうする事も出来ずにおろおろしているとクラスメイトの一人で、隣の席のビルが笑いながら近づいてきた。
「おうおう、仲がよろしい事で。」
クックックと笑うビルにフィオルドは涙目になって助けを求めるが、華麗にスルーされる。
「ビル!助けてくれよ!僕はどうしたらいいんだよ…お昼は?っていうかこの格好、恥ずかしい!」
思いのたけをビルにぶつけると、彼はフィオルドの頭をよしよしとなでてからこういった。
「自分で考えろ」
颯爽と去っていった友人を恨めし気に見つめながら後ろから抱き着いているウィーネの腕をトントンとたたいた。
「ねぇ、ウィーネ、どうしたの?」
そういうとウィーネは
「この体制のまま、フィンにご飯を食べさせたい。」
と言った。
クラスメイトの多くは食堂に消え、クラスに残っている者は端の方によっている。教室の窓からは秘かにこちらを観察している人たちもいるのに…この状況で!?
恐る恐るウィーネの方をフィオルドが見るときらきらした目をこちらに向けてきた。
「そんなことするわけないだろ!後々恥ずかしかったり、文句を言われるのは俺なんだぞ!と言うか、そんなのどこで学んだんだよ!!!」とは言えないフィオルドである。
結果、フィオルドはその日の昼食をすべてウィーネの手から食べることになり、クラスメイトから散々からかわれたのであった。
「ビル、そこまで言うのなら、お前も婚約者にやってもらったらどうだ?」
フィオルドがすっと隣に座る友人をにらむと彼は両手を上げて笑いながら「ぜってーやだ。」ときっぱり。
「僕だって…嫌だった。」
そう不貞腐れたようにフィオルドが告げると、ビルはにやにやしながら「でも本当は?」「うれしかったんじゃない?」とか聞いてきたので、「まぁそりゃ…少しはうれしかったけどさ」とボソッとつぶやくと。
「そう!ならよかったわ!!!」と背後からなれた声が聞こえてきた。
ギギギと恐る恐る振り返ると、そこには満面の笑みのウィーネがいた。
「ちょっと待って・・・?そういう意味じゃ…」
「私もっと頑張りますわ!!!」
「いや、だからね、」
「少し遅くなります。今日は先に帰っていてくださいな。」
それだけ言うとウィーネは嬉しそうに小走りで去っていった。
「お前、いろいろと苦労してんだな…」
ポンポンと背中をビルにたたかれながら、フィオルドは机に突っ伏した。
それから彼女の姿を思い出して、ふと笑みを浮かべながら「まぁ、ウィーネが嬉しそうだから別にいいけど」とこぼした。
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