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油断大敵、口は災いのもと?

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 そうして馬鹿馬鹿しくも真面目な命懸けの早口言葉の応酬合戦が始まった。だんだん難易度は高くなる。魔物の顔もひきつってきて、息も荒くなってきている。私がなんとか坊主くらいまではクリアしたところでサイラがおもむろに口を開く。



「そろそろネタも尽きてきたんじゃない?今度はこっちからいくよ」

『おう、望むところだ』

 魔物も息を整え直す。で、サイラが今度はニヤリと笑った。

「斜め七十七度の並びで泣く泣くいななくナナハン七台難なく並べて長眺め成す撫子撫でて宥めて流す.....さぁどうだ!」

長っ...!そこは隣の塀、じゃないんだ...。

『なんだそりゃ?そんなのあるのか?』

 魔物も呆れて目を白黒。

「あるよ。『化○語』、知らないのぉ?若干、アレンジしてあるけどぉ」

 さすがサイラ、BLだけじゃなかったのね。
ーアニオタ、舐めんなよ。ー
と不敵に嘯くサイラ。魔物はぐぬぬと拳を握りしめる。そこにサイラの煽りが追い討ちで飛ぶ。

「あれどしたの?早く言ったら?」

 オタク、最強かもしれん。サイラの笑顔が怖い。

『ななめなにゃじゅうなにゃ...言えるか、おのれ~!』

 舌噛んでキレたらしい魔物が怒りの表情で巨大化し、牙を剥き出してサイラ目掛けて飛びかかった。

「危ない!」

 ルノアが二人を押し退け、三人して倒れ込む。見ると、ルノアの袖が裂けて血が滲んでる。

「ルノア、あんた大丈夫?」

 駆け寄ると袖がザックリいってる。傷は深きはないけど、痛そう。眉をしかめてルノアが叫んだ。

「バカ、危ねぇぞ。お前は隠れてろ!」

バカって何よ、バカって.....。腕を押さえるルノアの指先から血が滴る。

ーよくもルノアに血ぃ流させてくれたわね!ー   

ルノアに傷つけられて、なんかめっちゃ腹たった。
 
「よくもやったわね~!」

『ひ弱な癖に調子に乗るからだ』

ヘラヘラと笑う魔物。そして私、ブチ切れました。

「全集中、獣体の型っ!」

 気合いを込めて、獣の体に変化する。......○○ファンの方、ごめんなさい。
私だってやる時はやるんだから!

「みぎゃー!(コンニャロー!)」  

 山猫の姿になって牙を剥いて思いっきり威嚇、間髪いれずに飛びかかる。尖った爪で斜めに切りつける。

「ね、ネコ~!?」

ーんや?ー
 
 魔物は反撃に出るかと思ったら、後ろを向いてスタコラ走り出した。ネコ嫌いなの?ネコ怖いの?ますます許せないわ!

「ふぎゃをー!(逃がすかぁ~!)」

 走って追いかける。けど、やつの走り出した後が忽ち泥々になって足を取られる。

ーくそっ、早いじゃないよー

 距離が開いて茂みの中に紛れられそうになったその時、どこからかーバッチーンーという小気味良い音。そして揉んどり打って倒れ込む魔物。

ーえ、バッチーン?ー

 キョロキョロと辺りを見回しても、誰もいない.....。そして、どこから伸びているのか、太い枝が一本。

ーえ?な、なに?ー
  
 私の目の前で枝はするすると縮み......ふと見上げると頭上で梢がさわさわ鳴った。

『みんな大丈夫ぅ~?』

その声は.....聖樹たん!?

『早くその髪留め外して。それが魔力のもとだよ』

 聖樹たんが、枝葉をさわさわ鳴らしてのたまう。 

「わかった!」

 聖樹たんの御神木ラリアット(イツキ命名)を喰らって伸びていた魔物は追い付いてきたルノアとボーゲさんに押さえつけられ、じたばたしてた。

『何すんだよ~!やめろ~!』

髪からぐるぐる模様の髪留めを引き剥がす。魔物は悲鳴を上げて暴れる。私はそれをあらんかぎり遠くに放り投げて、魔物を振り向いた。途端に魔物の身体は白い煙を上げてしゅるしゅると縮み......。

「「「「カタツムリぃい?!」」」」

 みんなの声が見事にハモった。
 そう、魔物の正体は.....カタツムリだった。




 





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