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気になるものは気になるんです!
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私達の『オヤツで町起こし作戦』はなかなか順調だった。サイラに作品の中で紹介してもらったり、冒険者さん達にお買い上げいただいたり、品物も売れたが、爬虫類人の国の人達に故郷を荒らされて逃げてきた人達が畑や樽漬を手伝ってくれて、収穫も増えた。
けどみんな自分の故郷に帰りたいのは本音で、ただ荒らされた畑や壊された家を建て直すために必要な資材や人手が足りないのと、いつまた爬虫類人に襲われるかという恐怖でなかなか勇気が出ないのが実情だ。
「なんとかしてやりてぇな......」
食後のお茶を飲みながら、支部長さんもアライグマのお母さんも一様に大きな溜め息をつく。
ー父さんに相談してみようかな......ー
そう言えば、キャネット・シティに赴任して、もう三年近くなる。
一年目の年越しには、支部長さんが息子さん達を紹介したいというので、キャネット・シティに残った。少しは『根性』なるものを見せなきゃと思ったということもある。母さんには泣かれたけど。
支部長さんのお子さんは、二人とも虎の獣人で、やっぱりガチムチで厳ついけど格好いい、というか頼もしい感じだった。王都の衛兵隊の小隊長さんを勤めてるお兄さんと副隊長の弟さんは良いライバルって感じだった。
二年目の年越しには父さんとちゃむが様子を見に来た。ラクアの干したのとグルワンのお芋を食べさせたら、ちゃむが夢中になって食べてた。ちゃむはいつの間にか背が伸びて逞しくなっていた。父さんに似たらしい。ずるい。お土産に沢山、ラクアとグルワンのオヤツを持たせて、元気だからと伝えた。けれど、やはり母さんには泣かれた。
ー今年は、家に帰ってきますー
と言ったら、アライグマのお母さんがー仕方ないわねーと溜め息をついた。今年はお兄さん虎がお嫁さんをもらったので紹介したかった、と言った。なんかお嫁さんも虎の獣人さんで、大恋愛の末、口説き落としたという。うん、バトルったんですね。お兄さん息子、勝ってアハン♡なさったんですね。でも、ならばなおさら家族水入らずの方がいいでしょ、それなら......ということで、私は久々の帰省を決めた。
母さんに手紙を書き、父さんに相談があるから家にいてくれるように頼んだ。母さんは大喜びだったらしい。ちなみにここの郵便は鳩の郵便屋さんが届けてくれる。急ぎの大事な郵便はもう少しお高いがカラスの特急便がある。貴族や王家は専属のハヤブサさんがいて、これは超早い。重要書類を運ぶので、装備も万全だ。
ちなみに、以前は山羊の郵便屋さんもいたが、郵便を途中で食べてしまって不着になることが多かったのでクビになったらしい。あの童謡はマジだったんか、この世界。
「じゃあ、行ってきます」
「気を付けてね」
漏れなく付いてくるルノアは、今回は職務のため、キャネット・シティに居残り。その代わり父さんが迎えに来てくれた。
見送りのルノアをジロリと睨む父さん。大丈夫よ、まだ清い関係だから。ちゅーはしたけど。
帰りの道すがら、父さんとマッカラーの幌馬車もどきの馭者席に座っていろんな話をした。幌馬車もどきの荷台の中には、みんなへのお土産と、故郷に帰りたい、という天竺ネズミさん一家と栗鼠さん一家が乗っている。
ー街道は怖くて...僕たちひ弱だし...ー
まあ確かにそうよね。弱い獣人さん達も安心して移動できる公共交通の整備も課題だわ。
そんな話ばかりしていたら、父さんが苦笑いした。
「お前は本当に仕事が好きだな。中毒だな、もう」
「うん」
はい前世からそうでした。仕事より面白いものはない。ま、面白くないこともいっぱいあったけどさ。でも思い描いていたことが形になるのは楽しい。
「ところでさ......」
私は気になっていたあの事を父さんに切り出した。
「キャネット・シティのとこの辺境警備隊の隊長さん、どうしたんだろう?」
「ん?」
父さんが少し眉をひそめて顔を曇らせた。
「ルノアも支部長さんも教えてくれないんだ。でも怪我じゃないみたいだし、どうしちゃったんだろう?」
「........」
父さんもなかなか口を開いてくれなかった。が家に着く頃、やっと少しだけ話してくれた。
隊長さん、ツヴェルの湖の森に魔物退治に行って、倒れて、ずっと眠ったきりなんだって。
「やはり、森に入った冒険者のパーティーが同じように眠ったきりになったり行方不明になったりしている。だから、絶対お前は森に入ってはいけないよ」
大丈夫、私は勇者じゃないから。しがない事務屋兼プランナーだから。
でもルノア大丈夫かな......無茶してないといいんだけど......。
けどみんな自分の故郷に帰りたいのは本音で、ただ荒らされた畑や壊された家を建て直すために必要な資材や人手が足りないのと、いつまた爬虫類人に襲われるかという恐怖でなかなか勇気が出ないのが実情だ。
「なんとかしてやりてぇな......」
食後のお茶を飲みながら、支部長さんもアライグマのお母さんも一様に大きな溜め息をつく。
ー父さんに相談してみようかな......ー
そう言えば、キャネット・シティに赴任して、もう三年近くなる。
一年目の年越しには、支部長さんが息子さん達を紹介したいというので、キャネット・シティに残った。少しは『根性』なるものを見せなきゃと思ったということもある。母さんには泣かれたけど。
支部長さんのお子さんは、二人とも虎の獣人で、やっぱりガチムチで厳ついけど格好いい、というか頼もしい感じだった。王都の衛兵隊の小隊長さんを勤めてるお兄さんと副隊長の弟さんは良いライバルって感じだった。
二年目の年越しには父さんとちゃむが様子を見に来た。ラクアの干したのとグルワンのお芋を食べさせたら、ちゃむが夢中になって食べてた。ちゃむはいつの間にか背が伸びて逞しくなっていた。父さんに似たらしい。ずるい。お土産に沢山、ラクアとグルワンのオヤツを持たせて、元気だからと伝えた。けれど、やはり母さんには泣かれた。
ー今年は、家に帰ってきますー
と言ったら、アライグマのお母さんがー仕方ないわねーと溜め息をついた。今年はお兄さん虎がお嫁さんをもらったので紹介したかった、と言った。なんかお嫁さんも虎の獣人さんで、大恋愛の末、口説き落としたという。うん、バトルったんですね。お兄さん息子、勝ってアハン♡なさったんですね。でも、ならばなおさら家族水入らずの方がいいでしょ、それなら......ということで、私は久々の帰省を決めた。
母さんに手紙を書き、父さんに相談があるから家にいてくれるように頼んだ。母さんは大喜びだったらしい。ちなみにここの郵便は鳩の郵便屋さんが届けてくれる。急ぎの大事な郵便はもう少しお高いがカラスの特急便がある。貴族や王家は専属のハヤブサさんがいて、これは超早い。重要書類を運ぶので、装備も万全だ。
ちなみに、以前は山羊の郵便屋さんもいたが、郵便を途中で食べてしまって不着になることが多かったのでクビになったらしい。あの童謡はマジだったんか、この世界。
「じゃあ、行ってきます」
「気を付けてね」
漏れなく付いてくるルノアは、今回は職務のため、キャネット・シティに居残り。その代わり父さんが迎えに来てくれた。
見送りのルノアをジロリと睨む父さん。大丈夫よ、まだ清い関係だから。ちゅーはしたけど。
帰りの道すがら、父さんとマッカラーの幌馬車もどきの馭者席に座っていろんな話をした。幌馬車もどきの荷台の中には、みんなへのお土産と、故郷に帰りたい、という天竺ネズミさん一家と栗鼠さん一家が乗っている。
ー街道は怖くて...僕たちひ弱だし...ー
まあ確かにそうよね。弱い獣人さん達も安心して移動できる公共交通の整備も課題だわ。
そんな話ばかりしていたら、父さんが苦笑いした。
「お前は本当に仕事が好きだな。中毒だな、もう」
「うん」
はい前世からそうでした。仕事より面白いものはない。ま、面白くないこともいっぱいあったけどさ。でも思い描いていたことが形になるのは楽しい。
「ところでさ......」
私は気になっていたあの事を父さんに切り出した。
「キャネット・シティのとこの辺境警備隊の隊長さん、どうしたんだろう?」
「ん?」
父さんが少し眉をひそめて顔を曇らせた。
「ルノアも支部長さんも教えてくれないんだ。でも怪我じゃないみたいだし、どうしちゃったんだろう?」
「........」
父さんもなかなか口を開いてくれなかった。が家に着く頃、やっと少しだけ話してくれた。
隊長さん、ツヴェルの湖の森に魔物退治に行って、倒れて、ずっと眠ったきりなんだって。
「やはり、森に入った冒険者のパーティーが同じように眠ったきりになったり行方不明になったりしている。だから、絶対お前は森に入ってはいけないよ」
大丈夫、私は勇者じゃないから。しがない事務屋兼プランナーだから。
でもルノア大丈夫かな......無茶してないといいんだけど......。
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