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戦略は大事です
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コミケから帰ってしばらく脱力していたけど、コミケに参加していた獣人の皆さんから、手紙が来ている.....との知らせがサイラから届いた。
ー各地のお土産も一緒に届いていたから、一緒に送るねー
サイラ、あんた優しい子だったのね。手紙と薄い本と一緒にいろんなパッケージのスイーツやら特産品、お酒や魚介の出汁みたいなものもあった。出汁に関しては誰よりアライグマのお母さんが大喜び。
「嬉しいな~。これ、なかなか手に入らないんだよ」
事実、その日に作ってくれたポトフのような肉じゃがのようなおかずは絶品に美味しかった。
「いろんなとこにいろんな名産品があるんだね~」
としみじみ。お礼にラクアの実とグルワンのお芋を送る。
「ちゃんとリスト残してるか?」
とルノア。
「.......あ、うん」
当然でしょ。顧客管理はビジネスの基本ですぅ。
「でも、いろんな土地でいろんな名産品あるんだね。......物産展、やりたいな。いろんな国とももっと交易やりたいな......」
賑わいが戻れば、人も戻る。そうすれば、村の人々の暮らしも良くなる...かなぁ。
「まだだ。もちょっと待て」
ルノアが半分苦笑いしながら言う。
「まずもっと『ブランド力』を上げないとな。それに街道の安全を確保しなきゃいけない」
「あ、野盗.....」
ルノアがこっくり頷いた。
「最近は大分減った。取り締まりを強化したからな。うちの国の連中は事情を聞いて、隊で雇用してる」
雇用してる.....って、あんたもしかして偉い人?
「ルノアさんは辺境警備隊長で赴任したんだよ」
と支部長さん。えぇーっ、知らなかったぁ!......って隊長がこんなとこでサボってていいの?
「俺は『代理』ですよ」
ルノアが珍しく鼻をポリポリ掻きながら言う。
「隊長が無事に戻るまでの穴埋めです。副隊長始め、隊員はみんな真面目で仕事熱心ですから」
へ~謙虚。けど、ちょっとだけ気になる。
「隊長さん.....て怪我でもしたの?」
「お前には関係ない」
何、その冷たい言い方。ふと見ると支部長さんも暗い顔をしている。
「それで.....野盗を捕まえてわかったんですが、やはりあの国のヤツらに村を荒らされて逃げてきた連中が大半でした。......本人達は隊で雇用して衣食住賄えますが、家族が.....」
ルノアの言葉をふんふんと聞いていた支部長さん、ぽん、と膝を打ってニカリと笑った。
「街の中に空き家になっちまった家も結構あるし、空いてる畑もある。こっちに呼び寄せさせたらいい。足りなきゃ作ればいい。なにビーバーの旦那が最近、暇で退屈してたからな。後は.....」
雇用創出ですねっ!頑張ります。
ラクアを提供してくれてるイタチさんの村でも、お芋をくれているイノシシ大将の村でも働き手が足りないって言ってた。それに他所でしか作っていなかったものも、ここでも作れるかもしれない。
「もう一つの問題......、あいつらの国の内情ですが、かなり酷いらしいです。捕まえたヤツに聞いたんですが、税金が重くて、庶民は酷い扱いをされているらしいです。獣人の国から拐かされて奴隷にされている者達はもっと酷い」
「我慢の限界だな.....」
え、怖い。何それ戦争すんの?やだ怖すぎる、戦争反対、平和主義国家万歳。憲法第九条遵守!...て国が違うか。
思わずうるうるの目で見上げる私の頭をぽん、と叩いて、ルノアがニカッと笑った。
「大丈夫だ。国王陛下に上申した。後はアンドルー殿下と軍隊が上手くやるだろう」
まあたぶんウチの軍は強い。アンドルー様は格好いい。.....え、殿下って?
「アンドルー様は北方の獣人国の王子だよ。ウチの国に修行にいらしているんだ。近く王様の第二王女とご結婚なさる」
ふぇ~王子さま。雲の上の人。どおりでまわりが五月蝿いわけだ。あ、でも.....くりくり目を動かす私をルノアがジロリと睨む。
「お前には俺がいる。第一、お前とアンドルー様では月とスッポンだ。雪と泥だ。釣り合わない」
んなこと分かってるわよ。でも、そこまで言うことないじゃん。私の関心はオトコじゃないし。
「あのさ...北の国ってことは、氷あるよね」
「そこかぃ!」
ルノアと支部長さん、ふたり揃って呆れ顔。うん、私の頭には仕事のことしかありません。ワーカホリックの二つ名は伊達じゃない。威張れないけど......。
結局、我が国の精鋭マングース隊と隣の国、鳥人国の火喰鳥将軍率いる精鋭部隊にメタメタにされた爬虫類人の国は降伏。我が国から拐われた獣人はみんな解放された。
前の国王を操っていた神官ヤマタノ=オロチは処刑され、王権はコブラ家でも温厚、平和主義のナーガ様に委譲されたとか......砂漠の開拓を進めるらしい。
まぁこれは別なお話。
ー各地のお土産も一緒に届いていたから、一緒に送るねー
サイラ、あんた優しい子だったのね。手紙と薄い本と一緒にいろんなパッケージのスイーツやら特産品、お酒や魚介の出汁みたいなものもあった。出汁に関しては誰よりアライグマのお母さんが大喜び。
「嬉しいな~。これ、なかなか手に入らないんだよ」
事実、その日に作ってくれたポトフのような肉じゃがのようなおかずは絶品に美味しかった。
「いろんなとこにいろんな名産品があるんだね~」
としみじみ。お礼にラクアの実とグルワンのお芋を送る。
「ちゃんとリスト残してるか?」
とルノア。
「.......あ、うん」
当然でしょ。顧客管理はビジネスの基本ですぅ。
「でも、いろんな土地でいろんな名産品あるんだね。......物産展、やりたいな。いろんな国とももっと交易やりたいな......」
賑わいが戻れば、人も戻る。そうすれば、村の人々の暮らしも良くなる...かなぁ。
「まだだ。もちょっと待て」
ルノアが半分苦笑いしながら言う。
「まずもっと『ブランド力』を上げないとな。それに街道の安全を確保しなきゃいけない」
「あ、野盗.....」
ルノアがこっくり頷いた。
「最近は大分減った。取り締まりを強化したからな。うちの国の連中は事情を聞いて、隊で雇用してる」
雇用してる.....って、あんたもしかして偉い人?
「ルノアさんは辺境警備隊長で赴任したんだよ」
と支部長さん。えぇーっ、知らなかったぁ!......って隊長がこんなとこでサボってていいの?
「俺は『代理』ですよ」
ルノアが珍しく鼻をポリポリ掻きながら言う。
「隊長が無事に戻るまでの穴埋めです。副隊長始め、隊員はみんな真面目で仕事熱心ですから」
へ~謙虚。けど、ちょっとだけ気になる。
「隊長さん.....て怪我でもしたの?」
「お前には関係ない」
何、その冷たい言い方。ふと見ると支部長さんも暗い顔をしている。
「それで.....野盗を捕まえてわかったんですが、やはりあの国のヤツらに村を荒らされて逃げてきた連中が大半でした。......本人達は隊で雇用して衣食住賄えますが、家族が.....」
ルノアの言葉をふんふんと聞いていた支部長さん、ぽん、と膝を打ってニカリと笑った。
「街の中に空き家になっちまった家も結構あるし、空いてる畑もある。こっちに呼び寄せさせたらいい。足りなきゃ作ればいい。なにビーバーの旦那が最近、暇で退屈してたからな。後は.....」
雇用創出ですねっ!頑張ります。
ラクアを提供してくれてるイタチさんの村でも、お芋をくれているイノシシ大将の村でも働き手が足りないって言ってた。それに他所でしか作っていなかったものも、ここでも作れるかもしれない。
「もう一つの問題......、あいつらの国の内情ですが、かなり酷いらしいです。捕まえたヤツに聞いたんですが、税金が重くて、庶民は酷い扱いをされているらしいです。獣人の国から拐かされて奴隷にされている者達はもっと酷い」
「我慢の限界だな.....」
え、怖い。何それ戦争すんの?やだ怖すぎる、戦争反対、平和主義国家万歳。憲法第九条遵守!...て国が違うか。
思わずうるうるの目で見上げる私の頭をぽん、と叩いて、ルノアがニカッと笑った。
「大丈夫だ。国王陛下に上申した。後はアンドルー殿下と軍隊が上手くやるだろう」
まあたぶんウチの軍は強い。アンドルー様は格好いい。.....え、殿下って?
「アンドルー様は北方の獣人国の王子だよ。ウチの国に修行にいらしているんだ。近く王様の第二王女とご結婚なさる」
ふぇ~王子さま。雲の上の人。どおりでまわりが五月蝿いわけだ。あ、でも.....くりくり目を動かす私をルノアがジロリと睨む。
「お前には俺がいる。第一、お前とアンドルー様では月とスッポンだ。雪と泥だ。釣り合わない」
んなこと分かってるわよ。でも、そこまで言うことないじゃん。私の関心はオトコじゃないし。
「あのさ...北の国ってことは、氷あるよね」
「そこかぃ!」
ルノアと支部長さん、ふたり揃って呆れ顔。うん、私の頭には仕事のことしかありません。ワーカホリックの二つ名は伊達じゃない。威張れないけど......。
結局、我が国の精鋭マングース隊と隣の国、鳥人国の火喰鳥将軍率いる精鋭部隊にメタメタにされた爬虫類人の国は降伏。我が国から拐われた獣人はみんな解放された。
前の国王を操っていた神官ヤマタノ=オロチは処刑され、王権はコブラ家でも温厚、平和主義のナーガ様に委譲されたとか......砂漠の開拓を進めるらしい。
まぁこれは別なお話。
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