明日は大事なプレゼンがあるのに異世界転生ってマジですか?

葛城 惶

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まずは体験、現状把握?!

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 まずは特産品の売り込みから...て思ったんだけど、はてどうしたものか、と悩む私。だって前世もオフィスと家との往復だったから生産現場なんて知らない。アプローチの仕方、わからない。

「なに鼻筋にシワ寄せてんだよっ!旦那が来たときくらい、笑顔で迎えろよっ!」

「何やってんのよ!」

 いきなり現れて机の前で人の頬っぺた引っ張らないで、ルノアのバカ。ギルドのみんなが見てるじゃんよ。まぁ約五名くらいだけど、それだって恥ずかしい。

「あんたがなんでここにいるんだ!仕事中だろ!」

「巡回中だ。ちゃんと見廻りして、確認しないとな。嫁さんの尻の無事も...」

「バカっ!最低っ!」

 ペロリと私のお尻を撫でようとする手を払いのけ、返す勢いでビンタ!...と思ったら避けられた。クヤシイ!

「で、何を無い頭を抱えてんだ?」

 抑える間もなく、私の机の上のメモをひったくり、マジマジと眺めるルノア。

「お前なぁ.....。何を考えてるんだ?」

「地域の活性化です。民間活力の有効利用です。イメージアップで若者を呼び戻すのです」

 息巻く私の顔とメモを見比べて、ルノアは、はぁ...と大きな溜め息。

「またワケのわからんことを...。第一、食ったことあるのか?」

「......無いです」

 だって、まだ市場に買い物に行ったことも無いんだもん、忙しくて。そんなに呆れないでよ。前世はコンビニ御用達だったんだから。

「来い...」

 いきなり腕を掴んで、机の前から引き摺り出された。何すんのよ、あんた。

「大将、こいつ今から借りてっていいか?」

 借りるって、あんたねぇ。猫の子じゃないんだから。いや猫だけど大人だから、大人になったんだから。

「あぁ、いいよ。あらかた書類も片付いたし、少し町を見てくるといい」

 支部長さぁん、おおらかすぎです。こいつ私のお尻を狙ってるんですよ。狼なんです、見たまんまですけど。

ーヤバい、拉致されるー

 辺りを見回すと、後は暇こいてる冒険者と、アライグマのお母さん。.....あ、いるじゃないですか、辺境警備隊のお連れさま。

「あのさ、ルノア、あんた仕事の途中だろ?忙しいんだろ?サボったらダメだろ」

 目線で助けを求めても、何故か知らん顔のお連れさま。

「俺、ちょっとコイツ連れて市場の方に巡回に行くから、後は頼むぜ」

「はい、わかりました」

 ルノアの言葉に素直に敬礼する隊員さん。はぁ?いいの、それ?どう見ても明らかにサボりよこれ。

「お気をつけて」

って物分かり良すぎよ、おおらかすぎますよ、皆さん。にこにこ手を振ってる場合じゃありません。

「どこ行くんだよ!」

 ずるずる引き摺られてギルドから連れ出された。

「市場だ。行ったことないんだろ?」

 ルノアは構わず、ぐいぐい私の手を引いて大通りを歩いていく。

「止めろよ。俺は犯罪者じゃないんだから。一人で行けるってば」

「方向音痴のくせに」

ぐ......。

「手を繋ぐのがイヤなら、ほら」

 肱のあたりをくいくいするの止めて、わかりました、大人しく案内していただきます。うぅ.....街の人の暖かい視線が痛い。


 そして、連れていかれた市場は......楽しかった。
 色んな食べ物やら食材やら並んでて、初めてこの世界の野菜やら果物やらをしみじみ見た。
 妖精さんに聞いたラクアの実はリンゴと柿の中間みたいな感じで、甘いけどやっぱり渋みが強い。蒸留酒に漬けると渋味が抜けるって、なんかわかる。
 グルワンのお芋は、わりと大きめだけど、やっぱり私の知ってる芋に近い。ルノアが買ってくれた焼き芋は、私の知ってるのより大味だったけど、悪くない。

「これも美味いぞ」

 ルノアのお勧めは、レモンのようなベリーのような不思議な味のジェラート。甘いけど、爽やかな酸味があって絶品。ミルアっていう果物だって。形はラズベリーを大きくして黄色くした感じ。

 結局、日が暮れるまで市場のあっちこっちを見て、野菜や果物を買い込んで帰った。お金はルノア持ちだったけど、
『今度、一緒に夕飯食べさせろ、前払いだ』
って言ってたからそういうことにしておこう。
 夕方、大きな袋を抱えて帰ったら、アライグマのお母さんは大喜び。

「デート、楽しかった?」

 いや、デート違います。市場の視察です。見学です。仕事です。デートじゃありません。
 夕御飯の話、快く引き受けてくれたのは有り難いんだけど、なんでそんなにルンルンしてますか?
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