8 / 39
やっぱり腐ってた...
しおりを挟む
「久しぶり~社畜ちゃん」
妙に高いテンションに振り向けば、前髪ぱっつん、細目のカワウソ獣人が、木の陰から手を振ってる。なんだこの既視感。しかも、社畜って...この世界で初めて聞いたぞ。だいたい会社なんて存在してないのに......こいつ、まさか
ー転生者?ー
ドン引きする私の方にスタスタ歩み寄る、その独特な歩き方.....。
「わたしよ。わ・た・し、忘れたの~?」
「まさか、隣の部屋の腐れ女!?」
「やぁね~、貴腐人て言ってよ」
憶えてる。前世で隣の部屋に住んでた漫画書きの姉ちゃん。BがLする漫画書いてコミケとかで売りまくってたやつ。時々、ベタ塗りとか手伝わされて、いつぞやは休日出勤の私の後ろに隠れて会社に紛れこんで、印刷室で薄い本を印刷しまくってた。
「なんで、あんたがここにいるのよ!?」
「まぁ、そんなにイキらないの。シワになるわよ~。立ち話もなんだし、家来てお茶飲まない?」
返事する間もなく、元腐女子のカワウソ獣人は、ぐいぐい私の腕を引っ張っていく。相変わらず陰キャっぽいずるずるな服だけど、しなやかボディになって前よりは少しマシかも、うん。
で、連れていかれたのは、お城からほど近い、ちょっと裏道に入った一軒家。
「さぁ入って、入って」
玄関から押し込まれた部屋は.....なんか前世のやつの部屋とあんまり変わらない気配。
「んもぅ、すっかり若くなっちゃって~。なかなか気付かなかったわよ」
ティーポットから紅茶っぽいお茶を淹れてくれてニンマリ笑う。その笑いかたも変わらんねぇ。
「前世じゃ私の方が若かったのにさぁ~」
「なんでわかったのよっ!」
紅茶を勢い良く飲み干して...って、あっちち...舌やけどしたわよ。私、猫舌なんだから。
「あらぁ、ちょっと前にお城の門を通りかかったらさぁ、『イツキ~、イツキ~』って狼野郎がデカイ声で呼んでたからさぁ、ひょっと見たら、どっかで見たようなつり目な我が儘っぽい猫がいるじゃない。まさか......とは思ったんだけど、『社畜』って囁いてみたら、モロ反応したから、やっぱり社畜ちゃんだと思ってさ~」
あんのバカ狼!.....それにしても、なんでコイツがこの世界に転生してんの?
「やぁだぁ~社畜ちゃん、私さぁ、事故で死んだじゃない。コミケの帰りに、買ったばかりの二次創作のやつ、つい夢中になって読んでてさぁ~」
思い出した。三十そこそこで事故で死んでたんだわ、この人。
はっ......!
「あんたねぇ.....部屋の片付けに来て、親御さん固まってたわよ。エチエチな本、しこたま溜め込んで...。どうやって捨てようか悩んでたわよ」
そう、仕方なく、こっそり会社持っていってシュレッダー掛けてあげた。私まで腐女子かと思われたわよ、一時。単なる燃えないゴミなのに。
「あ~、あれは思いっきり黒歴史になっちゃたわねぇ。でも隣が社畜ちゃんで良かったわぁ」
良くない。全然、良くない。いや問題はそこじゃない。
「いや、なんであんたの転生先がここなのよ?」
「そりゃあ、神様にリクエストしたから.....人外のエチエチ流行ってたじゃない、前世で」
腐れ沼の流行りなんぞ知らんがな。まぁルンルンしてるとこを見ると満喫してるみたいね~。イケメン獣人多いしね。
「社畜ちゃんは、どうして?...やっぱり事故死?」
違うわ!カワウソ女め。
「会社で倒れたのよ、残業中に」
額をピシャリと自分で叩いて、やつが笑った。
「名誉の戦死?らしすぎてウケるぅ~」
ずずっとお茶をすすってやつは、はあぁと大きな息をついて、やつはマジマジと私の顔を見た。
「しばらく様子を見てたら、相っ変わらず社畜ちゃんしてるみたいね~。まぁ会社じゃなく王宮勤め?あんたも好きよね?少しは懲りなさいよ」
ぐさっ.....。いいじゃん、趣味なのよ、仕事がっ。
「そういうあんたは何やってんのよ?相変わらず漫画書き?男しかいないのに、需要あんの?BL って」
「それがあるのよ~」
訝る私に、ぴらぴら手を振って、やつが言った。
「この世界には、妖精とか精霊とかってのも住んでいてさぁ......この世界じゃそういう種族は性別が無いらしいの。赤ちゃんも木の実とかから出てくるらしくて.....」
ファンタジー通り越して童話の世界かよ。
「だ、か、ら獣人のエチエチに興味深々らしくて......もぅ売れっ子なんだからぁ.....あ、あんた今度、結婚するんでしょ。取材させてよ。一途でヤンデレなワンコ攻めと生意気ニャンコ受け、滾るわぁ...」
誰がヤンデレだ?そんなだったら今すぐ縁切るぞ、ルノア!第一、結婚なんかしねーし!
「結婚なんか、しないもん!取材したけりゃ、自分でパートナー作れば?」
「あ~ら、いるわよ。パートナー」
へっ?
妙に高いテンションに振り向けば、前髪ぱっつん、細目のカワウソ獣人が、木の陰から手を振ってる。なんだこの既視感。しかも、社畜って...この世界で初めて聞いたぞ。だいたい会社なんて存在してないのに......こいつ、まさか
ー転生者?ー
ドン引きする私の方にスタスタ歩み寄る、その独特な歩き方.....。
「わたしよ。わ・た・し、忘れたの~?」
「まさか、隣の部屋の腐れ女!?」
「やぁね~、貴腐人て言ってよ」
憶えてる。前世で隣の部屋に住んでた漫画書きの姉ちゃん。BがLする漫画書いてコミケとかで売りまくってたやつ。時々、ベタ塗りとか手伝わされて、いつぞやは休日出勤の私の後ろに隠れて会社に紛れこんで、印刷室で薄い本を印刷しまくってた。
「なんで、あんたがここにいるのよ!?」
「まぁ、そんなにイキらないの。シワになるわよ~。立ち話もなんだし、家来てお茶飲まない?」
返事する間もなく、元腐女子のカワウソ獣人は、ぐいぐい私の腕を引っ張っていく。相変わらず陰キャっぽいずるずるな服だけど、しなやかボディになって前よりは少しマシかも、うん。
で、連れていかれたのは、お城からほど近い、ちょっと裏道に入った一軒家。
「さぁ入って、入って」
玄関から押し込まれた部屋は.....なんか前世のやつの部屋とあんまり変わらない気配。
「んもぅ、すっかり若くなっちゃって~。なかなか気付かなかったわよ」
ティーポットから紅茶っぽいお茶を淹れてくれてニンマリ笑う。その笑いかたも変わらんねぇ。
「前世じゃ私の方が若かったのにさぁ~」
「なんでわかったのよっ!」
紅茶を勢い良く飲み干して...って、あっちち...舌やけどしたわよ。私、猫舌なんだから。
「あらぁ、ちょっと前にお城の門を通りかかったらさぁ、『イツキ~、イツキ~』って狼野郎がデカイ声で呼んでたからさぁ、ひょっと見たら、どっかで見たようなつり目な我が儘っぽい猫がいるじゃない。まさか......とは思ったんだけど、『社畜』って囁いてみたら、モロ反応したから、やっぱり社畜ちゃんだと思ってさ~」
あんのバカ狼!.....それにしても、なんでコイツがこの世界に転生してんの?
「やぁだぁ~社畜ちゃん、私さぁ、事故で死んだじゃない。コミケの帰りに、買ったばかりの二次創作のやつ、つい夢中になって読んでてさぁ~」
思い出した。三十そこそこで事故で死んでたんだわ、この人。
はっ......!
「あんたねぇ.....部屋の片付けに来て、親御さん固まってたわよ。エチエチな本、しこたま溜め込んで...。どうやって捨てようか悩んでたわよ」
そう、仕方なく、こっそり会社持っていってシュレッダー掛けてあげた。私まで腐女子かと思われたわよ、一時。単なる燃えないゴミなのに。
「あ~、あれは思いっきり黒歴史になっちゃたわねぇ。でも隣が社畜ちゃんで良かったわぁ」
良くない。全然、良くない。いや問題はそこじゃない。
「いや、なんであんたの転生先がここなのよ?」
「そりゃあ、神様にリクエストしたから.....人外のエチエチ流行ってたじゃない、前世で」
腐れ沼の流行りなんぞ知らんがな。まぁルンルンしてるとこを見ると満喫してるみたいね~。イケメン獣人多いしね。
「社畜ちゃんは、どうして?...やっぱり事故死?」
違うわ!カワウソ女め。
「会社で倒れたのよ、残業中に」
額をピシャリと自分で叩いて、やつが笑った。
「名誉の戦死?らしすぎてウケるぅ~」
ずずっとお茶をすすってやつは、はあぁと大きな息をついて、やつはマジマジと私の顔を見た。
「しばらく様子を見てたら、相っ変わらず社畜ちゃんしてるみたいね~。まぁ会社じゃなく王宮勤め?あんたも好きよね?少しは懲りなさいよ」
ぐさっ.....。いいじゃん、趣味なのよ、仕事がっ。
「そういうあんたは何やってんのよ?相変わらず漫画書き?男しかいないのに、需要あんの?BL って」
「それがあるのよ~」
訝る私に、ぴらぴら手を振って、やつが言った。
「この世界には、妖精とか精霊とかってのも住んでいてさぁ......この世界じゃそういう種族は性別が無いらしいの。赤ちゃんも木の実とかから出てくるらしくて.....」
ファンタジー通り越して童話の世界かよ。
「だ、か、ら獣人のエチエチに興味深々らしくて......もぅ売れっ子なんだからぁ.....あ、あんた今度、結婚するんでしょ。取材させてよ。一途でヤンデレなワンコ攻めと生意気ニャンコ受け、滾るわぁ...」
誰がヤンデレだ?そんなだったら今すぐ縁切るぞ、ルノア!第一、結婚なんかしねーし!
「結婚なんか、しないもん!取材したけりゃ、自分でパートナー作れば?」
「あ~ら、いるわよ。パートナー」
へっ?
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編
日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました
むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる