明日は大事なプレゼンがあるのに異世界転生ってマジですか?

葛城 惶

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やっぱり腐ってた...

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「久しぶり~社畜ちゃん」

 妙に高いテンションに振り向けば、前髪ぱっつん、細目のカワウソ獣人が、木の陰から手を振ってる。なんだこの既視感デジャヴュ。しかも、社畜って...この世界で初めて聞いたぞ。だいたい会社なんて存在してないのに......こいつ、まさか

ー転生者?ー

 ドン引きする私の方にスタスタ歩み寄る、その独特な歩き方.....。

「わたしよ。わ・た・し、忘れたの~?」

「まさか、隣の部屋の腐れ女!?」

「やぁね~、貴腐人て言ってよ」

 憶えてる。前世で隣の部屋に住んでた漫画書きの姉ちゃん。BがLする漫画書いてコミケとかで売りまくってたやつ。時々、ベタ塗りとか手伝わされて、いつぞやは休日出勤の私の後ろに隠れて会社に紛れこんで、印刷室で薄い本を印刷しまくってた。

「なんで、あんたがここにいるのよ!?」

「まぁ、そんなにイキらないの。シワになるわよ~。立ち話もなんだし、家来てお茶飲まない?」

 返事する間もなく、元腐女子のカワウソ獣人は、ぐいぐい私の腕を引っ張っていく。相変わらず陰キャっぽいずるずるな服だけど、しなやかボディになって前よりは少しマシかも、うん。

 で、連れていかれたのは、お城からほど近い、ちょっと裏道に入った一軒家。

「さぁ入って、入って」

 玄関から押し込まれた部屋は.....なんか前世のやつの部屋とあんまり変わらない気配。

「んもぅ、すっかり若くなっちゃって~。なかなか気付かなかったわよ」

 ティーポットから紅茶っぽいお茶を淹れてくれてニンマリ笑う。その笑いかたも変わらんねぇ。

「前世じゃ私の方が若かったのにさぁ~」

「なんでわかったのよっ!」

 紅茶を勢い良く飲み干して...って、あっちち...舌やけどしたわよ。私、猫舌なんだから。

「あらぁ、ちょっと前にお城の門を通りかかったらさぁ、『イツキ~、イツキ~』って狼野郎がデカイ声で呼んでたからさぁ、ひょっと見たら、どっかで見たようなつり目な我が儘っぽい猫がいるじゃない。まさか......とは思ったんだけど、『社畜』って囁いてみたら、モロ反応したから、やっぱり社畜ちゃんだと思ってさ~」

 あんのバカ狼!.....それにしても、なんでコイツがこの世界に転生してんの?

「やぁだぁ~社畜ちゃん、私さぁ、事故で死んだじゃない。コミケの帰りに、買ったばかりの二次創作のやつ、つい夢中になって読んでてさぁ~」

 思い出した。三十そこそこで事故で死んでたんだわ、この人。
はっ......!

「あんたねぇ.....部屋の片付けに来て、親御さん固まってたわよ。エチエチな本、しこたま溜め込んで...。どうやって捨てようか悩んでたわよ」

 そう、仕方なく、こっそり会社持っていってシュレッダー掛けてあげた。私まで腐女子かと思われたわよ、一時。単なる燃えないゴミなのに。

「あ~、あれは思いっきり黒歴史になっちゃたわねぇ。でも隣が社畜ちゃんで良かったわぁ」

 良くない。全然、良くない。いや問題はそこじゃない。

「いや、なんであんたの転生先がここなのよ?」

「そりゃあ、神様にリクエストしたから.....人外のエチエチ流行ってたじゃない、前世で」

 腐れ沼の流行りなんぞ知らんがな。まぁルンルンしてるとこを見ると満喫してるみたいね~。イケメン獣人多いしね。

「社畜ちゃんは、どうして?...やっぱり事故死?」

 違うわ!カワウソ女め。

「会社で倒れたのよ、残業中に」

 額をピシャリと自分で叩いて、やつが笑った。

「名誉の戦死?らしすぎてウケるぅ~」 

 ずずっとお茶をすすってやつは、はあぁと大きな息をついて、やつはマジマジと私の顔を見た。

「しばらく様子を見てたら、相っ変わらず社畜ちゃんしてるみたいね~。まぁ会社じゃなく王宮勤め?あんたも好きよね?少しは懲りなさいよ」

 ぐさっ.....。いいじゃん、趣味なのよ、仕事がっ。

「そういうあんたは何やってんのよ?相変わらず漫画書き?ヤローしかいないのに、需要あんの?BL って」

「それがあるのよ~」

 訝る私に、ぴらぴら手を振って、やつが言った。

「この世界には、妖精とか精霊とかってのも住んでいてさぁ......この世界じゃそういう種族は性別が無いらしいの。赤ちゃんも木の実とかから出てくるらしくて.....」

 ファンタジー通り越して童話の世界かよ。

「だ、か、ら獣人にんげんのエチエチに興味深々らしくて......もぅ売れっ子なんだからぁ.....あ、あんた今度、結婚するんでしょ。取材させてよ。一途でヤンデレなワンコ攻めと生意気ニャンコ受け、滾るわぁ...」

 誰がヤンデレだ?そんなだったら今すぐ縁切るぞ、ルノア!第一、結婚なんかしねーし!

「結婚なんか、しないもん!取材したけりゃ、自分でパートナー作れば?」

「あ~ら、いるわよ。パートナー」

 へっ?

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