明日は大事なプレゼンがあるのに異世界転生ってマジですか?

葛城 惶

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おはようございます

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「おはようございます」

 欠伸をしながら、階段を降りていくと、母さんと弟のちゃむとロアが既にテーブルについていた。ロアは、ちゃむの先代猫、アロアにそっくりの真っ白ふわふわな尻尾をしている。髪も白。獣体もモフモフふわふわな長毛種だ。

「おはよう、にぃたん」

 てちてちと駆け寄ってくるのをきゅっと抱きしめる。

「おはよう、ロア」

 すんすん......日溜まりの枯れ草のような匂い。あぁ猫の匂いだ。癒されるぅ。

「猫だからって、あんまりお寝坊さんはダメだよ。早くテーブルについて、朝ごはんにしよう」

「うん」

 目の前に湯気を立てているのは母さん特製の豆と肉のスープとナンのような釜焼きのパン。

「いただきま~す」 
 
 この母さんの作るナンは美味い。塩加減が絶妙で、ココイチなんか足許にも及ばない。豆のスープも、グリーンピース系やらひよこ豆系やらいっぱい入っていてヘルシーだ。肉はアラビア~ンな世界っぼいラム肉みたい。まあ異世界だから羊じゃなく魔獣の肉らしいけど......世界の料理がクロスオーバー。うん、ファンタジーだ。

「あちっ...」

 慌ててスープを掻き込もうとしたちゃむが小さな声をあげる。

「急ぎすぎだよ、落ちついて食べなさい」

 母さんが苦笑する。異世界に来ても猫は猫舌なのだ。

「父たんはぁ~?」

 ロアが空色の目をくりくりさせながら言う。

「お仕事だよ。あと三つ寝たら帰ってくる」

 私達の父さんの仕事は外交官の護衛。偉いさんのSP みたいなもん。山猫だもんね、斥候は得意。

 長毛猫の母さんとは、旅の途中の母さん一家が魔獣に襲われそうになったのを助けたのが縁だって。母さん家は商人。父さんが留守がちなんで、私いや俺達は母さんの実家で生活している。

「母さん、俺、今から仕事行くわ」

 と私が言うと、母さんはちょっと顔をしかめる。アイボリーのふわふわ尻尾が心配そうに揺れる。

「無理はしなくていいのよ。上役の方も、ゆっくり休みなさいって」

「いいよ.....」

 私、仕事好きなんです。仕事してないと不安になるんです。今はチビなんで王宮の侍従見習い=パシリですけど、いずれ立派な文官になって、脳筋のルノアあいつをこき使ってやるのです。と、そこにちょっとハスキーがかった声。

「そうだぞ~、イツキ。ちゃんと大人しくしてろ」

 ひょっこり顔を出すのは、ガタイのいい灰色狼。まあ狼だけに体格はいい、動きも俊敏。人間型ならそこそこイケメン...な奴が長くて太い尻尾をパタパタさせて立っている。

「もう大丈夫なの。それよりルノア、あんた仕事は?」

「え、いや見廻りの途中でちょっと様子を見に来たんだ」

「サボるな、こら!」

 母さん、お茶出さなくていいから。
 喫茶店で暇潰す営業さんと違うんだから。こいつは立派な王宮の武官で王様の側近、近衛隊の一員、サボりが出来る立場じゃないんだから。

 前世のあいつとそんなとこまでそっくり。あいつも会議とかサボりまくって、そのくせ結果出すんだよな、憎たらしい。

「サボりじゃない。嫁の具合を看に行ってやれって、王様が言ってくださったんだ。隊長もOK 出してくれたし」

 王様ぁ~寛容過ぎますよ。貫禄たっぷりの金獅子なのに。
 隊長ぉ~優し過ぎますよ、いくらおっとりな熊だって。上司が甘過ぎるのは部下のためになりませんっ。
 そもそも、まだ嫁じゃねぇし、嫁にもならんしっ!

「元気なら、デートでもするか?」

「しませんっ!」

 必殺の猫パンチを喰らえっ!
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