3 / 39
おはようございます
しおりを挟む
「おはようございます」
欠伸をしながら、階段を降りていくと、母さんと弟のちゃむとロアが既にテーブルについていた。ロアは、ちゃむの先代猫、アロアにそっくりの真っ白ふわふわな尻尾をしている。髪も白。獣体もモフモフふわふわな長毛種だ。
「おはよう、にぃたん」
てちてちと駆け寄ってくるのをきゅっと抱きしめる。
「おはよう、ロア」
すんすん......日溜まりの枯れ草のような匂い。あぁ猫の匂いだ。癒されるぅ。
「猫だからって、あんまりお寝坊さんはダメだよ。早くテーブルについて、朝ごはんにしよう」
「うん」
目の前に湯気を立てているのは母さん特製の豆と肉のスープとナンのような釜焼きのパン。
「いただきま~す」
この母さんの作るナンは美味い。塩加減が絶妙で、ココイチなんか足許にも及ばない。豆のスープも、グリーンピース系やらひよこ豆系やらいっぱい入っていてヘルシーだ。肉はアラビア~ンな世界っぼいラム肉みたい。まあ異世界だから羊じゃなく魔獣の肉らしいけど......世界の料理がクロスオーバー。うん、ファンタジーだ。
「あちっ...」
慌ててスープを掻き込もうとしたちゃむが小さな声をあげる。
「急ぎすぎだよ、落ちついて食べなさい」
母さんが苦笑する。異世界に来ても猫は猫舌なのだ。
「父たんはぁ~?」
ロアが空色の目をくりくりさせながら言う。
「お仕事だよ。あと三つ寝たら帰ってくる」
私達の父さんの仕事は外交官の護衛。偉いさんのSP みたいなもん。山猫だもんね、斥候は得意。
長毛猫の母さんとは、旅の途中の母さん一家が魔獣に襲われそうになったのを助けたのが縁だって。母さん家は商人。父さんが留守がちなんで、私いや俺達は母さんの実家で生活している。
「母さん、俺、今から仕事行くわ」
と私が言うと、母さんはちょっと顔をしかめる。アイボリーのふわふわ尻尾が心配そうに揺れる。
「無理はしなくていいのよ。上役の方も、ゆっくり休みなさいって」
「いいよ.....」
私、仕事好きなんです。仕事してないと不安になるんです。今はチビなんで王宮の侍従見習い=パシリですけど、いずれ立派な文官になって、脳筋のルノアをこき使ってやるのです。と、そこにちょっとハスキーがかった声。
「そうだぞ~、イツキ。ちゃんと大人しくしてろ」
ひょっこり顔を出すのは、ガタイのいい灰色狼。まあ狼だけに体格はいい、動きも俊敏。人間型ならそこそこイケメン...な奴が長くて太い尻尾をパタパタさせて立っている。
「もう大丈夫なの。それよりルノア、あんた仕事は?」
「え、いや見廻りの途中でちょっと様子を見に来たんだ」
「サボるな、こら!」
母さん、お茶出さなくていいから。
喫茶店で暇潰す営業さんと違うんだから。こいつは立派な王宮の武官で王様の側近、近衛隊の一員、サボりが出来る立場じゃないんだから。
前世のあいつとそんなとこまでそっくり。あいつも会議とかサボりまくって、そのくせ結果出すんだよな、憎たらしい。
「サボりじゃない。嫁の具合を看に行ってやれって、王様が言ってくださったんだ。隊長もOK 出してくれたし」
王様ぁ~寛容過ぎますよ。貫禄たっぷりの金獅子なのに。
隊長ぉ~優し過ぎますよ、いくらおっとりな熊だって。上司が甘過ぎるのは部下のためになりませんっ。
そもそも、まだ嫁じゃねぇし、嫁にもならんしっ!
「元気なら、デートでもするか?」
「しませんっ!」
必殺の猫パンチを喰らえっ!
欠伸をしながら、階段を降りていくと、母さんと弟のちゃむとロアが既にテーブルについていた。ロアは、ちゃむの先代猫、アロアにそっくりの真っ白ふわふわな尻尾をしている。髪も白。獣体もモフモフふわふわな長毛種だ。
「おはよう、にぃたん」
てちてちと駆け寄ってくるのをきゅっと抱きしめる。
「おはよう、ロア」
すんすん......日溜まりの枯れ草のような匂い。あぁ猫の匂いだ。癒されるぅ。
「猫だからって、あんまりお寝坊さんはダメだよ。早くテーブルについて、朝ごはんにしよう」
「うん」
目の前に湯気を立てているのは母さん特製の豆と肉のスープとナンのような釜焼きのパン。
「いただきま~す」
この母さんの作るナンは美味い。塩加減が絶妙で、ココイチなんか足許にも及ばない。豆のスープも、グリーンピース系やらひよこ豆系やらいっぱい入っていてヘルシーだ。肉はアラビア~ンな世界っぼいラム肉みたい。まあ異世界だから羊じゃなく魔獣の肉らしいけど......世界の料理がクロスオーバー。うん、ファンタジーだ。
「あちっ...」
慌ててスープを掻き込もうとしたちゃむが小さな声をあげる。
「急ぎすぎだよ、落ちついて食べなさい」
母さんが苦笑する。異世界に来ても猫は猫舌なのだ。
「父たんはぁ~?」
ロアが空色の目をくりくりさせながら言う。
「お仕事だよ。あと三つ寝たら帰ってくる」
私達の父さんの仕事は外交官の護衛。偉いさんのSP みたいなもん。山猫だもんね、斥候は得意。
長毛猫の母さんとは、旅の途中の母さん一家が魔獣に襲われそうになったのを助けたのが縁だって。母さん家は商人。父さんが留守がちなんで、私いや俺達は母さんの実家で生活している。
「母さん、俺、今から仕事行くわ」
と私が言うと、母さんはちょっと顔をしかめる。アイボリーのふわふわ尻尾が心配そうに揺れる。
「無理はしなくていいのよ。上役の方も、ゆっくり休みなさいって」
「いいよ.....」
私、仕事好きなんです。仕事してないと不安になるんです。今はチビなんで王宮の侍従見習い=パシリですけど、いずれ立派な文官になって、脳筋のルノアをこき使ってやるのです。と、そこにちょっとハスキーがかった声。
「そうだぞ~、イツキ。ちゃんと大人しくしてろ」
ひょっこり顔を出すのは、ガタイのいい灰色狼。まあ狼だけに体格はいい、動きも俊敏。人間型ならそこそこイケメン...な奴が長くて太い尻尾をパタパタさせて立っている。
「もう大丈夫なの。それよりルノア、あんた仕事は?」
「え、いや見廻りの途中でちょっと様子を見に来たんだ」
「サボるな、こら!」
母さん、お茶出さなくていいから。
喫茶店で暇潰す営業さんと違うんだから。こいつは立派な王宮の武官で王様の側近、近衛隊の一員、サボりが出来る立場じゃないんだから。
前世のあいつとそんなとこまでそっくり。あいつも会議とかサボりまくって、そのくせ結果出すんだよな、憎たらしい。
「サボりじゃない。嫁の具合を看に行ってやれって、王様が言ってくださったんだ。隊長もOK 出してくれたし」
王様ぁ~寛容過ぎますよ。貫禄たっぷりの金獅子なのに。
隊長ぉ~優し過ぎますよ、いくらおっとりな熊だって。上司が甘過ぎるのは部下のためになりませんっ。
そもそも、まだ嫁じゃねぇし、嫁にもならんしっ!
「元気なら、デートでもするか?」
「しませんっ!」
必殺の猫パンチを喰らえっ!
0
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編
日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m
【完結】元魔王、今世では想い人を愛で倒したい!
N2O
BL
元魔王×元勇者一行の魔法使い
拗らせてる人と、猫かぶってる人のはなし。
Special thanks
illustration by ろ(x(旧Twitter) @OwfSHqfs9P56560)
※独自設定です。
※視点が変わる場合には、タイトルに◎を付けます。
当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。
マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。
いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。
こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。
続編、ゆっくりとですが連載開始します。
「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

【完結】試練の塔最上階で待ち構えるの飽きたので下階に降りたら騎士見習いに惚れちゃいました
むらびっと
BL
塔のラスボスであるイミルは毎日自堕落な生活を送ることに飽き飽きしていた。暇つぶしに下階に降りてみるとそこには騎士見習いがいた。騎士見習いのナーシンに取り入るために奮闘するバトルコメディ。
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

華麗に素敵な俺様最高!
モカ
BL
俺は天才だ。
これは驕りでも、自惚れでもなく、紛れも無い事実だ。決してナルシストなどではない!
そんな俺に、成し遂げられないことなど、ないと思っていた。
……けれど、
「好きだよ、史彦」
何で、よりよってあんたがそんなこと言うんだ…!
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる