転生・小野小町(♂)の受難~DK 冥官修行録~

葛城 惶

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二 通小町

鉄輪(一)

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 翌朝早く、俺たちは観光バスで京都へと向かった。



 勿論、あの男の子にもらった折り紙は、小野崎先生に話して、朝も明けきらないうちに、近くの川原で燃やした。

 ワイシャツのポケットから取り出したそれは、もらった時には鮮やかな朱色だったのに、真っ黒に変色していた。

「これって.....」

「君の身代わりに陰の気を吸ったからな」

 小野崎先生は顔色も変えずに折り紙に火をつけた。
 それは瞬く間に真っ黒な灰になった。

「そのままで川に流すこともある.....」

 流し雛というんだそうだ。雛人形の原形らしい。






『古都というのは、歴史が長ければ長いほど、色々な事件があり、その痕跡が残っている。注意して歩きなさい』

 京都に着いて、まず菅原先生が注意事項だ、と生徒全員に言っていた。

 最初の見学先は京都御所。予約制で入れる人数が決まっているので、前もって申請を出して、見学させてもらわなきゃいけなくて、なおかつ今日と明日の二手に別れて見学した。
 その中でも、俺たちは一番最初のグループ。
 当然、入れる場所と入れない場所があるんだけど、腐才女ふたりの盛り上がりかたは半端ない。

「あそこが弘微殿で、あっちが飛香舎よね」

って後宮のあたりを地図も無しに指差してあれこれ語り合うふたり。凄まじい記憶力だな。
 あまりに詳し過ぎて、案内のおじさんがドン引きしてますけど。

 片や引率の菅原先生は御帳台を前にえらく沁々している。

「これって即位の大礼の時のアレだよな」

 俺たちのノリにちょっと眉をしかめていたけど、仕方ないじゃん、俺たちは令和の若者なんだから。決して平安貴族じゃありませんから。
 菅原先生の説明を受けながら、見学する約二十人くらいの生徒の中には深草もいて、なんだか懐かしそうだった。もしかしてお前も仲間なの?

「では、後はグループ行動。破目を外し過ぎないように」

 菅原先生はそう言って俺たちを送り出し、いそいそと次のグループの引率に向かった。これを四回くらい繰り返すらしいんだけど、先生はなんか嬉しそうだ。
 昔を思い出すんだろうな、きっと。嫌な奴らもいないしね。

 で、次のグループが出てくるのを待って、希望先で、幾つかに別れてまとまって引率の先生に着いていく。

 俺たちは歴史オタクな水本がリクエストしたので、伏見方面へ。立花先生に引率してもらって、伏見城を見て、お稲荷さんの総本山に参拝。
 それから本能寺や新撰組の屯所のあった壬生や寺田屋を巡った。男子ばかりかと思ったら、女子も結構いて、蘊蓄に花を咲かせていた。うちの学校にもいたんだな、歴女。
 

 色部と清原達は市の中心部の神社や寺を巡る平安ロマンをご所望。やっぱり圧倒的に女子が多いなか、紀本や深草、山部はこっちに残った。引率は勿論、古文の小野崎先生。

 隣のクラスは今日、先に宇治や太秦を回る予定になっていた。


「面白かったよな~、やっぱり」

 歴史オタクの水本、ご満悦。俺は歴史は得意じゃないけど、立花先生の石垣の傾斜角とかの話は面白かったし、伏見稲荷の千本鳥居は圧巻だった。

「こっちも良かったわよ」

 色部や清原達は市内の寺社巡りで、お抹茶や和菓子の振る舞いを受けたり、大原あたりまで足を伸ばしたらしい。

 夕飯が終わってからは男子どおしで、部屋でだべっていた。もちろん枕投げもした。
 俺の部屋は俺と水本、それに大伴と柿本、山部の五人。みんな同じ中学校から上がった気のおけない連中だから、楽しく夜を過ごせるはずだった。

 けれど......
 
 





 




 
 





 
 
 
 

 

 

 
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