26 / 50
二 通小町
巡り合いて......(三)
しおりを挟む
それより目下の俺の問題は、古典の小テスト。
今回は漢文てことで、いや~参りました。レ点なんて付いていたって、ちっとも読めません。
ここはもう、奥の手を使うしかない。
「清原~、ドーナツ奢るから、漢文教えて」
俺は恥も外聞もなく、教室の後ろで女子に手を合わせる。
相手は清原那岐子。
ウチのクラス委員長で、学年で一二を争うインテリ才女。
結構キツイことバンバン言うんだけど、陽気でさっぱりした性格で、結構、男子に人気がある。気さくな質で俺の成績もよく気にしてくれます。特に古典。
プチ小野崎でございます。
「小野君、自助努力してる?」
してるしてる、だからお願い、教えて。
「しょうがないわね......」
ふうっとため息つきながら、栗色のふんわりウェーブの髪を揺らして頷いてくれた。ありがたし。
とりあえず水本もバスケの練習、本格的にヘビーになってきているらしいので、放課後、水本の練習が終わるまで、小テストまで清原に漢文の特訓をしてもらうことになった。
ちなみに清原は文芸部で、自分でエッセイとか評論なんか書いて、有名サイトに投稿していて、結構人気らしい。
令和の清少納言て言われてるらしい。たぶん、まんまだろうけど。
ついでに......
ウチの高校の文芸部にはもうひとり人気web作家がいる。
名前は、色部紫。
清原とは真逆でストレートの黒髪ロングのお姫様ふうな容姿で、大長編の恋愛小説を書いているらしい。うん、女子っぽいね....と思ってサイト覗いてみたらB がL する方の小説だった。ひえぇ。
でも結構、熱烈なファンがいるらしい。
『え、だって需要大きいのよ。大河ロマン書きたいんだもん』
さようでございますか。でも、どやって女子がB 同士の恋愛を妄想すんの?
『大丈夫、モデルはコマチ君と水本君だから、ネタには困らない』
やーめーろー!!
この二人が、以前は千年昔からライバルやってたとしか思えないくらい仲悪かった。
仲悪いんだけど、意識し合ってて、たまに最強タッグ組むんだよね。特に文学方面。
男子とかが迂闊に古典文学バカにしようもんなら、二人がかりで言い込められて、土下座させられた奴もいる。
そりゃ才女ふたりにタッグ組まれたら、敵うわけないわな。
そして賢い俺は大人しく下手に出ることにしたのです。女子コワイ。
こいつら、お互いに辛辣に批判し合っているわりには互いにちょっかい出さずにはおれないらしくて、毎日、口喧嘩してた。で、つい言っちゃったんだよね......。
『あのさ、昔はともかく、今世はしがらみとか無いんだから、仲良くすれば?お互い才能あるんだからさ』
ふたりとも、一瞬、変な顔をしてたけど、まぁね。
ずっと昔からライバル同士だったのかもしれないし、色々あるけど、やっぱり今は今じゃん?
休み明け早々の俺の爆弾発言により......こいつら、すげぇ仲良くなりました。
んでもって、俺は二人がかりでご指導していただく破目になりました。アリガトウゴザイマス(棒読み)
「そう言えばさ.......」
この二人もなんか、転入生、深草陸海のことがなんとなく気になるらしい。他の女子と違う意味で。
今日もふたりして、俺の漢文のご指導してくれつつ、のたまう。
「やっぱ、水本君の心配は正しいかもしれない」
と清原。
「うん。視線がやっぱり小野君、見てるよね」
色部、それ気のせいだから。
「もしかしたら、小野君、ストーカーされてない?」
無い無い。なんで男が男にストーカーされなあかんのよ。
「噂をすれば......じゃない?」
教室の窓から外を覗いた清原が色部を突っつく。ふっと窓の外を見ると、校庭の木の陰からこちらを窺う目線。.......女子じゃない。背高い。いやいやいや、気のせい、気のせい。
ニンマリと顔を見合せる女子ふたり。気のせいだから、錯覚だから。
いきなり真顔になるしきべ。お前、和風美人なんだから、真顔怖いよ。ホラーだよ、ほら笑って。
「う~ん、まぁあれは物語なはずだから、気のせいだと思うけど。コマチ君、三角関係はマズイよ」
俺は、コ・マ・ハ・ル!
三角関係?なんだそりゃ。
「コマチ君を巡ってシノギを削る水本君と深草君ってなんかエモくない?」
おいおい色部、それはお前の小説の世界だろ。俺と水本は親友。フツーにトモダチなの!
「滾るわね」
乗るな、清原。
俺たちをヤバいおかしな異世界に引きずり込むの止めてもらえます?この腐れ女子高生達。
頼むから、源氏物語的な普通の恋愛に萌えてて、お願い。
俺がタジタジしていると、ガラリと教室の戸が開き、そこに颯爽と現れる光源氏こと水本。
「あれ?水本君、部活終わったの?」
顔を見合せて、によによする女子ふたり。水本、お前、タイミング良すぎ。
「おぅ。コマチ帰ろうぜ!」
「お、おぅ」
なんか期待してる眼の女子ふたりの目の前、俺の鞄をさりげなく手に取る水本。
「奢るからマック食って帰ろうぜ、コマチ」
水本、鞄、持ってくれなくても大丈夫だから。付き合うから。
腐才女ふたりが目ぇキラキラさせてるじゃんか。
「尊い......」
ってお嬢さん達、目線がヤバいです。
わかった、シェイク奢るから。俺たちで妄想しないで、お願い。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
(紫式部 百人一首第57番『新古今集』雑上・1499)
今回は漢文てことで、いや~参りました。レ点なんて付いていたって、ちっとも読めません。
ここはもう、奥の手を使うしかない。
「清原~、ドーナツ奢るから、漢文教えて」
俺は恥も外聞もなく、教室の後ろで女子に手を合わせる。
相手は清原那岐子。
ウチのクラス委員長で、学年で一二を争うインテリ才女。
結構キツイことバンバン言うんだけど、陽気でさっぱりした性格で、結構、男子に人気がある。気さくな質で俺の成績もよく気にしてくれます。特に古典。
プチ小野崎でございます。
「小野君、自助努力してる?」
してるしてる、だからお願い、教えて。
「しょうがないわね......」
ふうっとため息つきながら、栗色のふんわりウェーブの髪を揺らして頷いてくれた。ありがたし。
とりあえず水本もバスケの練習、本格的にヘビーになってきているらしいので、放課後、水本の練習が終わるまで、小テストまで清原に漢文の特訓をしてもらうことになった。
ちなみに清原は文芸部で、自分でエッセイとか評論なんか書いて、有名サイトに投稿していて、結構人気らしい。
令和の清少納言て言われてるらしい。たぶん、まんまだろうけど。
ついでに......
ウチの高校の文芸部にはもうひとり人気web作家がいる。
名前は、色部紫。
清原とは真逆でストレートの黒髪ロングのお姫様ふうな容姿で、大長編の恋愛小説を書いているらしい。うん、女子っぽいね....と思ってサイト覗いてみたらB がL する方の小説だった。ひえぇ。
でも結構、熱烈なファンがいるらしい。
『え、だって需要大きいのよ。大河ロマン書きたいんだもん』
さようでございますか。でも、どやって女子がB 同士の恋愛を妄想すんの?
『大丈夫、モデルはコマチ君と水本君だから、ネタには困らない』
やーめーろー!!
この二人が、以前は千年昔からライバルやってたとしか思えないくらい仲悪かった。
仲悪いんだけど、意識し合ってて、たまに最強タッグ組むんだよね。特に文学方面。
男子とかが迂闊に古典文学バカにしようもんなら、二人がかりで言い込められて、土下座させられた奴もいる。
そりゃ才女ふたりにタッグ組まれたら、敵うわけないわな。
そして賢い俺は大人しく下手に出ることにしたのです。女子コワイ。
こいつら、お互いに辛辣に批判し合っているわりには互いにちょっかい出さずにはおれないらしくて、毎日、口喧嘩してた。で、つい言っちゃったんだよね......。
『あのさ、昔はともかく、今世はしがらみとか無いんだから、仲良くすれば?お互い才能あるんだからさ』
ふたりとも、一瞬、変な顔をしてたけど、まぁね。
ずっと昔からライバル同士だったのかもしれないし、色々あるけど、やっぱり今は今じゃん?
休み明け早々の俺の爆弾発言により......こいつら、すげぇ仲良くなりました。
んでもって、俺は二人がかりでご指導していただく破目になりました。アリガトウゴザイマス(棒読み)
「そう言えばさ.......」
この二人もなんか、転入生、深草陸海のことがなんとなく気になるらしい。他の女子と違う意味で。
今日もふたりして、俺の漢文のご指導してくれつつ、のたまう。
「やっぱ、水本君の心配は正しいかもしれない」
と清原。
「うん。視線がやっぱり小野君、見てるよね」
色部、それ気のせいだから。
「もしかしたら、小野君、ストーカーされてない?」
無い無い。なんで男が男にストーカーされなあかんのよ。
「噂をすれば......じゃない?」
教室の窓から外を覗いた清原が色部を突っつく。ふっと窓の外を見ると、校庭の木の陰からこちらを窺う目線。.......女子じゃない。背高い。いやいやいや、気のせい、気のせい。
ニンマリと顔を見合せる女子ふたり。気のせいだから、錯覚だから。
いきなり真顔になるしきべ。お前、和風美人なんだから、真顔怖いよ。ホラーだよ、ほら笑って。
「う~ん、まぁあれは物語なはずだから、気のせいだと思うけど。コマチ君、三角関係はマズイよ」
俺は、コ・マ・ハ・ル!
三角関係?なんだそりゃ。
「コマチ君を巡ってシノギを削る水本君と深草君ってなんかエモくない?」
おいおい色部、それはお前の小説の世界だろ。俺と水本は親友。フツーにトモダチなの!
「滾るわね」
乗るな、清原。
俺たちをヤバいおかしな異世界に引きずり込むの止めてもらえます?この腐れ女子高生達。
頼むから、源氏物語的な普通の恋愛に萌えてて、お願い。
俺がタジタジしていると、ガラリと教室の戸が開き、そこに颯爽と現れる光源氏こと水本。
「あれ?水本君、部活終わったの?」
顔を見合せて、によによする女子ふたり。水本、お前、タイミング良すぎ。
「おぅ。コマチ帰ろうぜ!」
「お、おぅ」
なんか期待してる眼の女子ふたりの目の前、俺の鞄をさりげなく手に取る水本。
「奢るからマック食って帰ろうぜ、コマチ」
水本、鞄、持ってくれなくても大丈夫だから。付き合うから。
腐才女ふたりが目ぇキラキラさせてるじゃんか。
「尊い......」
ってお嬢さん達、目線がヤバいです。
わかった、シェイク奢るから。俺たちで妄想しないで、お願い。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
(紫式部 百人一首第57番『新古今集』雑上・1499)
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
このブラジャーは誰のもの?
本田 壱好
ミステリー
ある日、体育の授業で頭に怪我をし早退した本前 建音に不幸な事が起こる。
保健室にいて帰った通学鞄を、隣に住む幼馴染の日脚 色が持ってくる。その中から、見知らぬブラジャーとパンティが入っていて‥。
誰が、一体、なんの為に。
この物語は、モテナイ・冴えない・ごく平凡な男が、突然手に入った女性用下着の持ち主を探す、ミステリー作品である。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる