転生・小野小町(♂)の受難~DK 冥官修行録~

葛城 惶

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一 奥の細道

筑波嶺の......(二)

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 と言う訳でやってきました、山のなか。
 現在は巨大なダム湖になっていて、真ん中に大きな橋がかかってる。
 かなり有名な観光スポットらしい。いっぱい止まっている車の中になんとか駐車して、てくてく歩く。

 で、なんか橋の真ん中あたりが異様に盛り上がってる。何?

「あぁ、バンジージャンプ出来るんですよ?やっていきます?」

って案内所の、元お姉さん。

バンジージャンプ?

あのTV でよく見る、お笑いの罰ゲーム?

本当にやる人いるの?

と思ったら、本当にいました。

 橋の真ん中辺りから、嬌声上げてダイブしてるのは、なんと若いお姉さん。

うっそー!

 そりゃ命綱は着いてるけど、相当高いのよ、橋。下見るのさえ怖いのに。

 で、ボートに拾われて、ニコニコして、こっちに大きく手を振ってる。どんだけ肝っ玉太いのよ。女は強い。

 俺たちは、次々に上がる歓声やら嬌声を無視して橋を渡る。
 本当に見るのもコワイから、そそくさと通り過ぎて、ダム湖の奥に続く遊歩道を進みます。

 でも、ダム湖とはいえ、本当に大きくて水も綺麗。
 周辺は連なる山の緑が眩しい。
 本当に龍神がいそうな景色。

「まぁいるからなぁ~」

平野先生まさかどさん
 え?龍神て本当にいるの?

「まぁ見るヤツのイメージの投影だけどな。デカイ自然エネルギーの固まり......かな」

あ、そうなんですね。
だから台風とか洪水の元みたいに言われるんですね。
 確かに膨大な自然エネルギーですもんね、台風とか。

「まあ、地脈とか水脈、気脈の象徴でもあるけどな」

と、小野崎先生ごせんぞさま。つまり『流れ』なんだそうです。地中の奥深くだったり、大気だったり。なるほどね。科学的な解釈ステキ。存在は科学的じゃないけど。

 そして、ずーっとずーっと歩いて、アスファルトの道が無くなって、滑落しそうな細い尾根道を越えたころ......。

 ありました源流。
 
 名前は亀が淵。

 虫の声とせせらぎだけが聞こえて、とても静かです。

 でも、どうやって探すん?


と思ったら、水本の腕からウサギが飛び出して、淵の際でぴょんぴょん飛び跳ねてる。

「ダメだよ、危ないよ」

 叫ぶ水本。うん、そうだよ危ないよ。ほら水がザバーって......。て、えぇーっ!


 淵の中心がいきなり盛り上がって.......。

 り、龍神?

 ウソー!

 自然エネルギーって言ったじゃない、先生。

「バカ!よく見ろ」

 平野先生まさかどさん、首根っこ掴むの止めて。馬鹿力なんだからっ!

 あれ......?

 ひぃひぃしながら、淵に目を凝らすと、龍神と思ったら人でした。平野先生まさかどさんといい勝負の厳ついオッサン。

 それだっておかしいでしょ。
あそこ、淵の真ん中だよ、水深十メートルじゃきかないんだよ。

ー太郎どの~!ー

 固まっている俺たちの目の前、ウサギさんが、ふぉんと若侍の姿に戻る。んでもって、淵の中のオッサンめがけてジャンプ!

ー平四郎どの!ー

 しかと抱きしめるオッサン。
 へー幽霊って溺れないんだ。って何を見せられてんの?俺たち。

なんも食べて無いのに、すんげえ甘いんですけど。そこの水、飲んでいい?

『義重、己のが未練も癒えたであろう』

 半ばドン引きながら、平野先生まさかどさん

『早う役目につけ』

ー共にあれるなら......ー

 じぃっと見つめ合う男ふたり。
若侍ー盛隆もりたか様が、そうと知らなきゃ男に見えないくらいの美人だから、まあ、見られなくはないけど。

 ねぇ、純情な青少年には目の毒なんですけどぉ?

『早くせぬか』

あ、小野崎ごせんぞさん、キレた。

 それでも、オッサンは余裕。
 若侍さんの髪を撫でて......え?若侍さんの姿が消えて、オッサンの掌にキラキラ光る虹色の玉。

 そして......
 
 オッサン、つまり佐竹義重さんはふぉんと姿を変え......。

 龍になって......。

 片手に盛隆もりたかさんの宝玉を握りしめて......。

 天に昇っていきました......。



 
.............自然エネルギーって言ったじゃん、先生!


「例外もある」

って、マジっすか!?

「まぁ上がったんだから、いいじゃないすか」

牛頭あかさん。

 水本は......完璧に固まってた。けど、何、目をキラッキラさせてんの~!?

「で、弟子にしてください!」

 おいおい、何言い出すの!?

平野先生まさかどさん、呆れモードで溜め息。

「まだ凝りてないのか.....」


 なんとも言えない顔の小野崎先生ごせんぞさまに、水本の前世が仙人志願だったと聞くのは、その後の話。








ー筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬるー
 
(陽成院 百人一首 第13番『後撰集』恋・777)
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