7 / 50
一 奥の細道
筑波嶺の......(一)
しおりを挟む
「さて、出掛けるか.....」
数日後、やっぱり小野篁の小野崎先生と平野先生に引き摺られて牛頭さんの車に乗り込む俺。今日は大きめのワンボックス。
で、俺より先に、嬉しそうに若侍のウサギを抱いて乗り込む親友、水本透。
「なんでお前も着いてくるわけ?」
訝る俺に、ウサギの頭を撫でながら、にっこり笑う。
「え?歴史ネタで俺を置いてくつもり?ーそんなん許すわけないじゃん」
はい。コイツは歴史オタク。山越えて、坂東太郎の史跡を尋ねる......って言ったら嬉々として着いてきた。
で、車の中では勉強会。
『蘆名盛隆』さんというのは、戦国時代の会津の殿様。若くして、家来に殺された。可哀想。
元々、須賀川の二階堂氏からの人質なんだけど、蘆名氏の後継ぎ息子が早死にして、血縁だからって後継指名されたらしい。
当然、部下は舐めてるし、言うことなんか聞かない。イジメもあったらしい。ホント可哀想。
世間では同性愛のもつれと言うけど、そんなに甘いもんじゃないーというのが、平野先生さんと水本の共通見解。
『あの時代は領地支配を巡って日本中で熾烈な争いが繰り広げられていた。奥州だって例外じゃない』
つまりは会津を狙う他の大名の陰謀で殺された、てことらしい。黒幕はたぶん伊達輝宗ー伊達政宗のお父さんね。
『盛隆公が亡くなってすぐ、政宗公に家督を譲って、次男の小次郎に蘆名氏を継がせようとしたからね』
あ、一番ズルいやつ。......て、ウサギさん顔怖いです。目が尖ってます、ウサギなのに。
『で、それを阻止したのが、常陸介こと、佐竹義重公。別名、坂東太郎というわけだ』
あ、ちなみに『坂東太郎』ってのは、「利根川」のことね。だから茨城=常陸の強い武将の誉め詞に使われるんだって。将門さんもそう言われたって、胸を張る平野先生。そりゃ強かったもんね、将門さん。
「でもなんで佐竹さんが、介入すんの?」
余所事じゃん。山の向こうよ?
「盛隆公の恋人だもん。佐竹義重公」
え?
はい?
何ですと?
「戦場で佐竹さんが、ラブレター送りまくって、愛が芽生えたらしい。部下達がアホらしくなって戦を止めた、って有名な話だよ」
まぁ...そりゃあ....やってらんないわな。家来さん、馬に蹴りまくられるわ、うん。
「でも、男同士だよね?」
いわゆる腐女子が喜ぶB がL な世界だよね......。
「昔はわりと普通だよ。武田信玄が家臣に送ったラブレターとかあるし、伊達政宗さんも、家臣に浮気の言い訳してるし.....」
さいですか。みんな浮気者なのね。
「でも、義重公は一途だったみたいでさ。盛隆公が亡くなって、その子に跡を継がせるんだけど、三歳で亡くなって。次男に蘆名を継がせるんだけど、伊達政宗に負けて、常陸に逃げたんだ」
摺上原の戦いってやつですね。地元じゃ有名。
「で、逃げてきた息子だけじゃなく、盛隆公の姪や娘もちゃんと面倒みたし、嫁にもちゃんと出したんだよ」
水本いわく、それは誠意なんだって。自分の側室にしたりせず、息子の正室とか、縁のある大名にお輿入れさせて、後までちゃんと考えてた。ー若い姫とみれば側室にした豊臣秀吉とはえらい違い......って、色ボケ過ぎだろ、あのオッサンは。
「まぁ盛隆公の母親まで引き取ったからな」
と、平野先生。
盛隆公のお母さんは於南姫っていう、伊達政宗の叔母さんに当たる人。
早くに夫と息子を亡くして、須賀川の城主やってた。けど、伊達と戦争になって『降服してください、俺がちゃんと養いますから』という政宗さんの言葉をガン無視。
結局、佐竹に身を寄せた......という。
どんだけ嫌われたのよ、政宗さん。
反対に盛隆公が生きてる間も死んでからも誠意を尽くしたーのが、義重公ということらしい。いや~、どんだけラブラブだったんだか、男同士なのに。
ウサギさん、何気に目が潤んでるよ。感涙?
「で、問題は何処にいるか?ですよね」
牛頭さんがナビをチェック。佐竹氏は関ヶ原以降、秋田に転封になったけど、そっちにはいないらしい。
事前に地図チェックしてたら、秋田の地図、ズタズタにされたもん、ウサギさんに。で、ちょっこり手を乗せて動かなかったのが、茨城県北。
まあ、領地支配の本拠地だったもんね。まだいるのね。
でも、県北広いのよ?
元のお城の跡にはいなかったし......。
と、ここで、小野崎先生さま、う~んと唸って、牛頭さんに確認。
「何処か、近くに、大きい湖とか滝とかあるか?」
牛頭さん、ナビをじぃっと見る。
「龍神の住む湖ってか、淵がありますね。ーちょっと山越えになりますが」
「そこだ!」
と、小野崎先生さま。なんで?
「恋ぞ積もりて淵となりぬる......だ」
いや、筑波山、あっちですよ?
「筑波峰は常陸国とイコールだ。だからまず、常陸国の淵を探すんだ」
さいですか......。
数日後、やっぱり小野篁の小野崎先生と平野先生に引き摺られて牛頭さんの車に乗り込む俺。今日は大きめのワンボックス。
で、俺より先に、嬉しそうに若侍のウサギを抱いて乗り込む親友、水本透。
「なんでお前も着いてくるわけ?」
訝る俺に、ウサギの頭を撫でながら、にっこり笑う。
「え?歴史ネタで俺を置いてくつもり?ーそんなん許すわけないじゃん」
はい。コイツは歴史オタク。山越えて、坂東太郎の史跡を尋ねる......って言ったら嬉々として着いてきた。
で、車の中では勉強会。
『蘆名盛隆』さんというのは、戦国時代の会津の殿様。若くして、家来に殺された。可哀想。
元々、須賀川の二階堂氏からの人質なんだけど、蘆名氏の後継ぎ息子が早死にして、血縁だからって後継指名されたらしい。
当然、部下は舐めてるし、言うことなんか聞かない。イジメもあったらしい。ホント可哀想。
世間では同性愛のもつれと言うけど、そんなに甘いもんじゃないーというのが、平野先生さんと水本の共通見解。
『あの時代は領地支配を巡って日本中で熾烈な争いが繰り広げられていた。奥州だって例外じゃない』
つまりは会津を狙う他の大名の陰謀で殺された、てことらしい。黒幕はたぶん伊達輝宗ー伊達政宗のお父さんね。
『盛隆公が亡くなってすぐ、政宗公に家督を譲って、次男の小次郎に蘆名氏を継がせようとしたからね』
あ、一番ズルいやつ。......て、ウサギさん顔怖いです。目が尖ってます、ウサギなのに。
『で、それを阻止したのが、常陸介こと、佐竹義重公。別名、坂東太郎というわけだ』
あ、ちなみに『坂東太郎』ってのは、「利根川」のことね。だから茨城=常陸の強い武将の誉め詞に使われるんだって。将門さんもそう言われたって、胸を張る平野先生。そりゃ強かったもんね、将門さん。
「でもなんで佐竹さんが、介入すんの?」
余所事じゃん。山の向こうよ?
「盛隆公の恋人だもん。佐竹義重公」
え?
はい?
何ですと?
「戦場で佐竹さんが、ラブレター送りまくって、愛が芽生えたらしい。部下達がアホらしくなって戦を止めた、って有名な話だよ」
まぁ...そりゃあ....やってらんないわな。家来さん、馬に蹴りまくられるわ、うん。
「でも、男同士だよね?」
いわゆる腐女子が喜ぶB がL な世界だよね......。
「昔はわりと普通だよ。武田信玄が家臣に送ったラブレターとかあるし、伊達政宗さんも、家臣に浮気の言い訳してるし.....」
さいですか。みんな浮気者なのね。
「でも、義重公は一途だったみたいでさ。盛隆公が亡くなって、その子に跡を継がせるんだけど、三歳で亡くなって。次男に蘆名を継がせるんだけど、伊達政宗に負けて、常陸に逃げたんだ」
摺上原の戦いってやつですね。地元じゃ有名。
「で、逃げてきた息子だけじゃなく、盛隆公の姪や娘もちゃんと面倒みたし、嫁にもちゃんと出したんだよ」
水本いわく、それは誠意なんだって。自分の側室にしたりせず、息子の正室とか、縁のある大名にお輿入れさせて、後までちゃんと考えてた。ー若い姫とみれば側室にした豊臣秀吉とはえらい違い......って、色ボケ過ぎだろ、あのオッサンは。
「まぁ盛隆公の母親まで引き取ったからな」
と、平野先生。
盛隆公のお母さんは於南姫っていう、伊達政宗の叔母さんに当たる人。
早くに夫と息子を亡くして、須賀川の城主やってた。けど、伊達と戦争になって『降服してください、俺がちゃんと養いますから』という政宗さんの言葉をガン無視。
結局、佐竹に身を寄せた......という。
どんだけ嫌われたのよ、政宗さん。
反対に盛隆公が生きてる間も死んでからも誠意を尽くしたーのが、義重公ということらしい。いや~、どんだけラブラブだったんだか、男同士なのに。
ウサギさん、何気に目が潤んでるよ。感涙?
「で、問題は何処にいるか?ですよね」
牛頭さんがナビをチェック。佐竹氏は関ヶ原以降、秋田に転封になったけど、そっちにはいないらしい。
事前に地図チェックしてたら、秋田の地図、ズタズタにされたもん、ウサギさんに。で、ちょっこり手を乗せて動かなかったのが、茨城県北。
まあ、領地支配の本拠地だったもんね。まだいるのね。
でも、県北広いのよ?
元のお城の跡にはいなかったし......。
と、ここで、小野崎先生さま、う~んと唸って、牛頭さんに確認。
「何処か、近くに、大きい湖とか滝とかあるか?」
牛頭さん、ナビをじぃっと見る。
「龍神の住む湖ってか、淵がありますね。ーちょっと山越えになりますが」
「そこだ!」
と、小野崎先生さま。なんで?
「恋ぞ積もりて淵となりぬる......だ」
いや、筑波山、あっちですよ?
「筑波峰は常陸国とイコールだ。だからまず、常陸国の淵を探すんだ」
さいですか......。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
このブラジャーは誰のもの?
本田 壱好
ミステリー
ある日、体育の授業で頭に怪我をし早退した本前 建音に不幸な事が起こる。
保健室にいて帰った通学鞄を、隣に住む幼馴染の日脚 色が持ってくる。その中から、見知らぬブラジャーとパンティが入っていて‥。
誰が、一体、なんの為に。
この物語は、モテナイ・冴えない・ごく平凡な男が、突然手に入った女性用下着の持ち主を探す、ミステリー作品である。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる