転生・小野小町(♂)の受難~DK 冥官修行録~

葛城 惶

文字の大きさ
上 下
5 / 50
一 奥の細道

みちのくの... (一)

しおりを挟む
 今日も暑い。
 こういう日はやっぱり『そうめん』だよね。
 牛頭あかさんが昼飯に呼びに来たんで行ってみたら、氷水に締めた美味そうなそうめん......ではなく冷や麦だった。
 色つきの麺が珍しくて、そっちにしたらしい。まぁいいけど。
 

「宿題は終わったんですか?」

 馬頭あおさんが、つるるんと器用に麺を啜りながら言う。

「高校に宿題は無いよ」

 みんな受験を控えて、夏期講習とかインターハイ前の部活の合宿とかで忙しい。

「俺は帰宅部だから気楽だけどね」

『そうはいかん』

 て誰よ。その野太い声でわかるけどね。
 ざくざくと雑草踏んで、庭の奥から平将門たいらのまさかどもとい平野先生が片手にスイカを下げてご登場。

『土産じゃ』

 気が利いてるじゃん、先生。

『そこの農協で買ってきたから心配ないぞ』

 お気遣いどうも。地産地消は大事です。先生の冷気でよく冷えてるし。

「切ってきますね」

と座を立った馬頭あおさんの代わりにどっかり座り込み、冷や麦に手を伸ばす平野先生まさかどさん

「あ、新しい器ありますよ」

牛頭あかさんからきれいな蕎麦猪口を受け取って、まずは一口。

「ほぅ、美味いのう」

「もう少し茹でますか?」

と言う牛頭あかさんに、『それには及ばん』とのたまいながら、赤いのや緑色の麺を珍しそうに啜り込む。

 こっちでの食事どうしてんのよ?と思ったらコンビニ弁当か外食なんだって。学校の斜め前のお蕎麦屋さんがご贔屓らしい。

『勉強は進んでるか?』

 ちーっともです、先生。だって興味無いから、全然頭に入ってこないんです。

『仕方ないのぅ......』

 深~い溜め息。
 と、表の玄関の辺りに人の気配。



「こっちにいま~す!」

「あ、いた!」

 俺の叫びに答えて、庭石踏んで走り寄ってきたのは、親友の水本。あれ?今日お前、バスケの練習は?

「今日、練習休みだから遊びに来た。......あれ、平野先生?」

「よぅ、水本。お前も食うか?」

 目をまん丸する水本にニッカリ笑い、縁側にどっかと座って、スイカをカプつく平野先生まさかどさん

「どしたんですか?先生。......あれ、コマチ、そっちの人達は?」

「あ、あぁ、じいちゃんのお弟子さん。牛尾さんと馬込さん。家の留守番頼んだんだって」

「駒治くんの家庭教師もね」

しどろもどろになる俺を馬頭あおさんがにっこり笑ってフォロー。うん、イケメンな爽やか笑顔。地獄の鬼とは思えません。ー実は地獄でも若いお姉さんの亡者に人気なんだって。まあ、わかる。

「家庭教師って......あ、お前、日本史ボロボロだもんな。俺が教えてやったのに」

 ひょいとスイカを一切れ掴んで頷く、悪友。

「だってお前、教えるって言いながら、ゲームの話ばっかだったじゃんか」

 そう、実はコイツ、歴史オタクで平野先生まさかどさんとは大の仲良し。歴史シミュレーション・ゲームにハマってて、来るたんびに『推し』を熱く語るんだけど、俺にはイミフ。

「そんなこと無ぇよ。この辺が小野小町の出身地だから、コマチの家があるんだって、教えたろう?」

「伝説じゃねぇか、それ」

 そういう伝説はあるけど、こんなド田舎に絶世の美女なんかいるわけないじゃん。まあ、和泉先輩は別格だけど。

 俺たちのやり取りを聞いてた平野先生、ははは......と豪快に笑って立ち上がった。

「せっかく水本もいるんだ。校外学習にでも行くか?」

「校外学習?どこですか?」

 キラッキラに目を輝かせる水本。本当にお前、歴史好きだな。

「来ればわかるさ。おい、誰か車出せるか?」

「出せますよ」

平野先生まさかどさんの言葉に、サクッと車のキーをちらつかせる牛頭あかさん。

 え?運転免許持ってるの?

『教習所もあります』

って、こっそり馬頭あおさんが俺に耳打ち。
 すげぇわ、地獄。自動車教習所まであるんかい?!

「じゃあ、行ってきます」

 牛頭あかさんのハイブリッド・カーに乗り込む、俺と水本。そして平野先生まさかどさん。#馬頭__あお__#さんは留守番だって。

「夕飯作っておきます。お赤飯炊いておきますから、デビュー戦、頑張って!」

 にっこり笑ってお見送りの__#。#馬頭__あお__#さんから何やら不穏な発言が......。

 
 え、えっ?......今の何ぃ~?

 




 

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

このブラジャーは誰のもの?

本田 壱好
ミステリー
ある日、体育の授業で頭に怪我をし早退した本前 建音に不幸な事が起こる。 保健室にいて帰った通学鞄を、隣に住む幼馴染の日脚 色が持ってくる。その中から、見知らぬブラジャーとパンティが入っていて‥。 誰が、一体、なんの為に。 この物語は、モテナイ・冴えない・ごく平凡な男が、突然手に入った女性用下着の持ち主を探す、ミステリー作品である。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

強制憑依アプリを使ってみた。

本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。 校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈ これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。 不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。 その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。 話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。 頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。 まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...