3 / 50
一 奥の細道
地獄な夏休み
しおりを挟む
期末が終わって、もうすぐ夏休み...てところで、職員室にお呼び出し。
まあ、期末の定例イベントなんだけど、さ。
俺はもともと勉強が好きな方じゃないから、まあ成績はいつも通り。
「どうして君はこう落差が激しいのかねぇ......」
溜め息混じりに成績評価と俺の顔を交互に見比べているのは、担任の立花。
担当の教科は物理。まぁまぁ俺の得意科目だ。ちゃんと平均点以上は取ってる。
「理系はほぼ満点近いんだけどなぁ......」
だって俺、理工学部志望ですもん。就職するにもその方が有利でしょ?
「英語はよし......。現国はまぁなんとかなるが」
立花先生、モジャモジャの頭を掻きながら、上目遣いで俺をジトーっと睨む。
「この壊滅的な古文と日本史はなんとかならんのか......。毎回追試じゃ、困るだろ」
「いや、別に......。入試には影響無いですし」
昔の事なんか知らなくても生活には困らないしね。
「お、ま、えは......日本人だろうが、自分の国の文化くらい身につけんでどうする!?」
背後からなんか冷気が......。いきなり寒気がしてるんですけど。あれ、立花先生、顔色が悪い.......ですよ?
そーっと後ろを振り向くと、強面のイケメンが仁王立ち。
「ったくお前は、日本を舐めてんのか!?」
雷みたいなデカイ声で吠えるの止めて。
「まぁまぁ、平野先生、落ち着いて......」
そうそう、落ち着いて。平野将先生。先生の日本史愛はわかるけどさ。これからはグローバル、国際化の時代だよ?
昔、ダサい鎧とか着て刃物振り回してた時代のことなんか忘れたいよね?
「本当に日本人にあるまじき生徒ですな」
おわ、ブリザードがダブルになった。古文の小野崎乱入。俺の背後が局地的氷河期になってます。立花先生、助けて。硬直している場合じゃないでしょ。
「ま、とりあえず、休み明けに追試な。......補習の相談は先生達としてくれ」
え、ちょっと待って。立花先生逃げるの?
止める間もなく、そそくさと職員室から出ていく担任。
「えっと、その......」
辺りに目をやっても職員室の中には、小野崎と平野と俺......だけ。
えっと、この状態は、慣用句で言うところの
「前門の虎、後門の狼ってやつだな」
て、俺を睨み付けながら、ジリジリ寄ってくる平野先生。近い近い、近すぎますってば。
「篁、子孫を甘やかし過ぎではないのか?これで役に立つのか?」
え?先生、今なんて......?
「そう言うな、将門。これからみっちり仕込む」
え?あの......将門って?
また、ふぉんと空間が歪んで、髭面の怖い顔したおっさんが目の前に......。
「あの、先生.......将門って?」
「ワシは平将門じゃ」
うっそぉーーーーーー!
なんで平将門さんが?
「お前の『役目』の手伝いに赴任してもらったのじゃ。そのボロクソな日本史の知識では御霊に激怒されて殺される」
そ、そんなの嫌です~。
まだ彼女も作ったこと無いのに。
「てことで、みっちり補習してやる。.......家庭教師も付けてやるから、安心しろ」
小野崎先生、いやご先祖さま、嫌な予感しかしないんですけど......。
「大王さまが、冥府から牛頭と馬頭を派遣してくださるそうだ」
えーーーーーーっ!!
そうして、俺の地獄の夏休みは始まったのでした。トホホ......。
ーあひみての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけりー
(藤原 敦忠 百人一首第43番『拾遺和歌集』)
まあ、期末の定例イベントなんだけど、さ。
俺はもともと勉強が好きな方じゃないから、まあ成績はいつも通り。
「どうして君はこう落差が激しいのかねぇ......」
溜め息混じりに成績評価と俺の顔を交互に見比べているのは、担任の立花。
担当の教科は物理。まぁまぁ俺の得意科目だ。ちゃんと平均点以上は取ってる。
「理系はほぼ満点近いんだけどなぁ......」
だって俺、理工学部志望ですもん。就職するにもその方が有利でしょ?
「英語はよし......。現国はまぁなんとかなるが」
立花先生、モジャモジャの頭を掻きながら、上目遣いで俺をジトーっと睨む。
「この壊滅的な古文と日本史はなんとかならんのか......。毎回追試じゃ、困るだろ」
「いや、別に......。入試には影響無いですし」
昔の事なんか知らなくても生活には困らないしね。
「お、ま、えは......日本人だろうが、自分の国の文化くらい身につけんでどうする!?」
背後からなんか冷気が......。いきなり寒気がしてるんですけど。あれ、立花先生、顔色が悪い.......ですよ?
そーっと後ろを振り向くと、強面のイケメンが仁王立ち。
「ったくお前は、日本を舐めてんのか!?」
雷みたいなデカイ声で吠えるの止めて。
「まぁまぁ、平野先生、落ち着いて......」
そうそう、落ち着いて。平野将先生。先生の日本史愛はわかるけどさ。これからはグローバル、国際化の時代だよ?
昔、ダサい鎧とか着て刃物振り回してた時代のことなんか忘れたいよね?
「本当に日本人にあるまじき生徒ですな」
おわ、ブリザードがダブルになった。古文の小野崎乱入。俺の背後が局地的氷河期になってます。立花先生、助けて。硬直している場合じゃないでしょ。
「ま、とりあえず、休み明けに追試な。......補習の相談は先生達としてくれ」
え、ちょっと待って。立花先生逃げるの?
止める間もなく、そそくさと職員室から出ていく担任。
「えっと、その......」
辺りに目をやっても職員室の中には、小野崎と平野と俺......だけ。
えっと、この状態は、慣用句で言うところの
「前門の虎、後門の狼ってやつだな」
て、俺を睨み付けながら、ジリジリ寄ってくる平野先生。近い近い、近すぎますってば。
「篁、子孫を甘やかし過ぎではないのか?これで役に立つのか?」
え?先生、今なんて......?
「そう言うな、将門。これからみっちり仕込む」
え?あの......将門って?
また、ふぉんと空間が歪んで、髭面の怖い顔したおっさんが目の前に......。
「あの、先生.......将門って?」
「ワシは平将門じゃ」
うっそぉーーーーーー!
なんで平将門さんが?
「お前の『役目』の手伝いに赴任してもらったのじゃ。そのボロクソな日本史の知識では御霊に激怒されて殺される」
そ、そんなの嫌です~。
まだ彼女も作ったこと無いのに。
「てことで、みっちり補習してやる。.......家庭教師も付けてやるから、安心しろ」
小野崎先生、いやご先祖さま、嫌な予感しかしないんですけど......。
「大王さまが、冥府から牛頭と馬頭を派遣してくださるそうだ」
えーーーーーーっ!!
そうして、俺の地獄の夏休みは始まったのでした。トホホ......。
ーあひみての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけりー
(藤原 敦忠 百人一首第43番『拾遺和歌集』)
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
このブラジャーは誰のもの?
本田 壱好
ミステリー
ある日、体育の授業で頭に怪我をし早退した本前 建音に不幸な事が起こる。
保健室にいて帰った通学鞄を、隣に住む幼馴染の日脚 色が持ってくる。その中から、見知らぬブラジャーとパンティが入っていて‥。
誰が、一体、なんの為に。
この物語は、モテナイ・冴えない・ごく平凡な男が、突然手に入った女性用下着の持ち主を探す、ミステリー作品である。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる