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陛下、嘘でしょ?!
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目を丸くする賓客の間をレイトン先生が厳かに、皇帝陛下の前に進み出て跪く。
「王都学園の実践魔術教師、Dr.レイトンと申します」
「転移者か......」
あ、知ってたのね、皇帝陛下。先生は小さく頷き話を続ける。
「先頃、辺境にダンジョンが出現しました。魔物とそれを統轄する存在も確認されております」
「知っておる」
なんの話だ?と言いたげな陛下。
「その魔王は、ここにいるラフィアン・サイラスにしか倒せません」
「なんじゃと?」
身を乗り出す陛下。そんなにまじまじ観ないで、穴空くから。
「かの魔王を倒すには秘策がいります。それはラフィアン君にしかできないのです」
いや、そんなことは無いからね。別な異世界から取り寄せた薄い本を餌に隙をつくだけだから。でも、それは内緒。
「皇帝陛下、どうか私に討伐の命をお下しください」
俺はレイトン先生の半歩後ろで皇帝に跪く。行かせて、お願い。部下の失態は上司の責任、後輩のミスは先輩がカバーしなくちゃいけないんです。
う~ん、と唸る皇帝陛下。
「しかし、ひとりでは無理だろう」
お言葉はごもっともでございます。けれど、
「私達が、共に参ります」
人の群れの中から颯爽と現れたふたつの影。
「王都第一騎士団所属、マグリット・オーウェンと申します」
「王都初級魔術師、ルートヴィヒ・ワグナーにございます」
皇帝陛下の前で堂々と名乗りを上げるふたり、格好いいよ。
ここで王都魔術師団長のフォロー、実はルートヴィヒのお祖父ちゃん。
「ふたりとも若輩ではございますが、技量は飛び抜けております。ルートヴィヒは私の孫ですが、知識・技術では補えない経験を積ませてやりたいと思います。同行をお許しください。」
王都騎士団総括団長のトニー兄さんも大きく頷く。反対したら一生口きいてやらないって言ったら、すぐ折れた。わりとチョロかった。
「三人か.....」
と皇帝陛下は渋い。が、そこに想定外の声がふたつ、響いた。
「俺も行きます!俺は、ケヴィン・ターナー。ダンジョンが出来たのは俺の実家の領地。案内なら任せてください!」
「お前......」
隣に跪いた栗毛がニヤッと笑った。
「俺が冒険者志望なの、知ってるだろ?黙って行こうなんて、ズルいぞ」
そして......。
「僕もお供します。ニコル・シュタットです。物資の調達はシュタット商会にお任せください」
ニコルの灰色の瞳がにっこり笑う。
「レイトン先生との話、聞いちゃったんだ。父も商売のツテが拡がるから大歓迎だって」
目の前にならんだ五つの頭に陛下もふぅ、と息をついてレイトン先生を見た。
「許そう、無事を祈る」
やった!!
にっこり微笑むレイトン先生の後見も決まった。
俺達は大はしゃぎでハイタッチを交わし、もう、一礼をして皇帝陛下の御前を辞した。
辞した......んだけど、
「待ちなさい」
と厳かな声音に呼び止められた。許可、いただきましたよね。いいって言ったよね?
皇帝陛下は、呆然と突っ立っているアントーレ王子の方を振り向いて、言った。
「お前も行きなさい」
ーは?ー
「アントーレ、試験問題を盗もうなどという気を起こした罰だ。彼らと共に行って、見事に魔王を退治してきなさい」
こ、皇帝陛下、何を仰るんですか。
アントーレ、何を嬉しそうな顔をしてるんだよ。体のいい王都追放だぞ?厄介払いだぞ?
「はい!」
て、何そのいい返事。今までで一番いいんじゃん。目がキラッキラじゃん。
「よろしく頼む、ラフィアン・サイラス」
陛下にっこり......。
「えーーーっ!」
俺の悲惨な叫びがホールにこだましたのは、言うまでもない。
「王都学園の実践魔術教師、Dr.レイトンと申します」
「転移者か......」
あ、知ってたのね、皇帝陛下。先生は小さく頷き話を続ける。
「先頃、辺境にダンジョンが出現しました。魔物とそれを統轄する存在も確認されております」
「知っておる」
なんの話だ?と言いたげな陛下。
「その魔王は、ここにいるラフィアン・サイラスにしか倒せません」
「なんじゃと?」
身を乗り出す陛下。そんなにまじまじ観ないで、穴空くから。
「かの魔王を倒すには秘策がいります。それはラフィアン君にしかできないのです」
いや、そんなことは無いからね。別な異世界から取り寄せた薄い本を餌に隙をつくだけだから。でも、それは内緒。
「皇帝陛下、どうか私に討伐の命をお下しください」
俺はレイトン先生の半歩後ろで皇帝に跪く。行かせて、お願い。部下の失態は上司の責任、後輩のミスは先輩がカバーしなくちゃいけないんです。
う~ん、と唸る皇帝陛下。
「しかし、ひとりでは無理だろう」
お言葉はごもっともでございます。けれど、
「私達が、共に参ります」
人の群れの中から颯爽と現れたふたつの影。
「王都第一騎士団所属、マグリット・オーウェンと申します」
「王都初級魔術師、ルートヴィヒ・ワグナーにございます」
皇帝陛下の前で堂々と名乗りを上げるふたり、格好いいよ。
ここで王都魔術師団長のフォロー、実はルートヴィヒのお祖父ちゃん。
「ふたりとも若輩ではございますが、技量は飛び抜けております。ルートヴィヒは私の孫ですが、知識・技術では補えない経験を積ませてやりたいと思います。同行をお許しください。」
王都騎士団総括団長のトニー兄さんも大きく頷く。反対したら一生口きいてやらないって言ったら、すぐ折れた。わりとチョロかった。
「三人か.....」
と皇帝陛下は渋い。が、そこに想定外の声がふたつ、響いた。
「俺も行きます!俺は、ケヴィン・ターナー。ダンジョンが出来たのは俺の実家の領地。案内なら任せてください!」
「お前......」
隣に跪いた栗毛がニヤッと笑った。
「俺が冒険者志望なの、知ってるだろ?黙って行こうなんて、ズルいぞ」
そして......。
「僕もお供します。ニコル・シュタットです。物資の調達はシュタット商会にお任せください」
ニコルの灰色の瞳がにっこり笑う。
「レイトン先生との話、聞いちゃったんだ。父も商売のツテが拡がるから大歓迎だって」
目の前にならんだ五つの頭に陛下もふぅ、と息をついてレイトン先生を見た。
「許そう、無事を祈る」
やった!!
にっこり微笑むレイトン先生の後見も決まった。
俺達は大はしゃぎでハイタッチを交わし、もう、一礼をして皇帝陛下の御前を辞した。
辞した......んだけど、
「待ちなさい」
と厳かな声音に呼び止められた。許可、いただきましたよね。いいって言ったよね?
皇帝陛下は、呆然と突っ立っているアントーレ王子の方を振り向いて、言った。
「お前も行きなさい」
ーは?ー
「アントーレ、試験問題を盗もうなどという気を起こした罰だ。彼らと共に行って、見事に魔王を退治してきなさい」
こ、皇帝陛下、何を仰るんですか。
アントーレ、何を嬉しそうな顔をしてるんだよ。体のいい王都追放だぞ?厄介払いだぞ?
「はい!」
て、何そのいい返事。今までで一番いいんじゃん。目がキラッキラじゃん。
「よろしく頼む、ラフィアン・サイラス」
陛下にっこり......。
「えーーーっ!」
俺の悲惨な叫びがホールにこだましたのは、言うまでもない。
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