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婚約解消おめでとう!...ん?
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密かに準備を進めて数ヶ月。今日は決戦の金曜日......じゃなかった、卒業祝賀パーティーでございます。
元のゲームのシナリオでは、このパーティーで悪役令息ラフィアン・サイラスは主人公クリスに嫌がらせをしただけでなく、犯罪的行為に手を染めた罪で、アントーレ王子に婚約破棄され、断罪されます。
でも、俺、この世界のラフィアン・サイラスは犯罪行為はいたしてないので、断罪はありません。婚約破棄だけ。
パーティー前に主人公、クリスにそっとブロック・サインを送ったところ、しっかり親指立ててたから大丈夫。きっと、多分。
パーティー会場、学園の大ホールには生徒、保護者、関係者etc. どんだけいるんだと思うくらい満杯のお客様。
可愛いポンコツ息子の卒業祝賀パーティーということで皇帝陛下まで御臨席。警備大丈夫なんすかね?
俺の相棒、マグリットとルートヴィヒもお客の中に紛れてます。これだけ人がいればわからないっしょ。
で、皇帝陛下並びに御臨席の方々の話が延々と続くなか、俺は学園の制服のマントに仕込んだ、ルートヴィヒお手製マジック・パックを密かに確認。旅支度、全部入ってます。便利だわ、魔法。出張の時に欲しかった。
しかし長い。話長いよ。なんで偉い人はこう話長いんですかね。眠くなってきたよ、俺。
我知らず舟を漕いでいたら、脇からニコルに突っつかれた。
アントーレ王子の卒業生代表挨拶が始まるらしい。
ポンコツ王子、あれから何故か必死こいて勉強したらしく、なんと首席でご卒業。
カンニング疑惑もかなり浮上したらしいが、証拠も掴めず、前後の状況から本物らしいと認定された。王都に季節外れの雷が鳴り響き、大粒のヒョウが降り注いだのが、何よりの証拠とか。どんだけよ、お前。でもよく頑張った、偉い。
そして、ご挨拶は佳境に入り......
「今日、私はここで皆に伝えておくことがある。ラフィアン・サイラス、前へ」
うん、ゲームのシナリオどおりの台詞、間違いない。俺は粛々とアントーレ王子の前に出る。でも、あれ?ヒロインちゃんがいない。
「ラフィアン・サイラス、本日をもって、私は君との婚約を破棄する」
周囲はざわめき......俺は無表情。でも心の中では盛大にガッツポーズ!やったね。ヒロインちゃん、グッジョブ!
ポンコツ王子、キリッとした目で俺をみつめる。うん、格好いいよ。やっぱり顔面偏差値高いね。羨ましい。
「ラフィアン、あの婚約は私の幼少時の戯言、既に無効でしかない話だ。だからもう無かったことにしたい」
うん、よぉくわかってるよ。良くできました。アントーレは良い子だね。
「そして......」
え、まだ何かあるの?断罪要件無かったよね?ね?
えっと.....あれ?王子、顔赤いよ。
「この場において、私は正式にラフィアン・サイラス、君に結婚を申し込む!」
............はぁ?
あの......意味わかりませんけど?
アントーレが呆然とする俺の肩を力任せに掴む。見下ろす目が......蕩けてるんですけどぉ。
「ラフィアン、昔の私のことは忘れて。これからの私を見て欲しい。私は君に相応しい夫になる」
あの、えーと話が違うんですが......誰かタスケテ。
「お約束が違います!殿下!」
すっくと立ち上がる主人公ちゃん。良かった~。アクション遅いよ、もう。
「試験問題を盗もうとしたことを内緒にする代わりにラフィアン様との婚約を解消していただくお約束です!」
え?お前やっぱりやらかしたのか?ダメじゃん。ポンコツ直ってないじゃん。会場から白~い視線。
「盗んではないない。盗もうとしただけだ。やはりいけないことと思い直して、自力で頑張ったんだ」
偉いね。ってそれ普通だから。胸張るようなことじゃないから。
「約束どおり、婚約は解消した。そして新たに結婚を申し込んだんだ。問題あるまい」
あのねアントーレ、それ詭弁ていうの、知ってる?
「ズルいです!王子!」
ツカツカとこちらに歩み寄り、俺の腕を取る主人公ちゃん。え?なんで俺の腕?
「殿下、ちゃんと婚約解消してください。僕がラフィアン様に結婚を申し込むんですからっ!」
..........はいぃ?.....何ですとぉ~?
ぐいっ、と俺を引き寄せ見つめる主人公ちゃん。相変わらず可愛いねっ.....てそんな場合じゃない。
「ラフィアン様、僕のお婿さんになって下さい!そして、家の当主になってください!父もそう願ってます。ラフィアン様はお強いから是非と.....」
「あの......お父さんて?」
「近衛騎士団、副団長、カーソン・ネヴィル伯爵です」
.おい、待て待て。別荘で俺達を襲った奴らじゃん。婿適性試験?.....そんな話、聞いてない。
「何を言っている!ラフィアンは私の妻になるんだ!」
「僕の旦那様です!」
唖然とする俺を真ん中にヒートアップするふたり。誰か止めて!
「いい加減にしなさい。ラフィアン君がこまっている」
止めて下さったのは校長先生。言葉は柔らかいけど、思いっきり威圧をかけてます。激おこです。血管ヤバいです。
さすがに黙りこむふたり。変わらない表情で、威圧を納めて校長先生がこちらを振り向く。
「君はどうしたいんだね?ラフィアン・サイラス?」
チラっとレイトン先生を見る。
ここは素直に言うしかない。
「僕は、冒険の旅に出ます!」
元のゲームのシナリオでは、このパーティーで悪役令息ラフィアン・サイラスは主人公クリスに嫌がらせをしただけでなく、犯罪的行為に手を染めた罪で、アントーレ王子に婚約破棄され、断罪されます。
でも、俺、この世界のラフィアン・サイラスは犯罪行為はいたしてないので、断罪はありません。婚約破棄だけ。
パーティー前に主人公、クリスにそっとブロック・サインを送ったところ、しっかり親指立ててたから大丈夫。きっと、多分。
パーティー会場、学園の大ホールには生徒、保護者、関係者etc. どんだけいるんだと思うくらい満杯のお客様。
可愛いポンコツ息子の卒業祝賀パーティーということで皇帝陛下まで御臨席。警備大丈夫なんすかね?
俺の相棒、マグリットとルートヴィヒもお客の中に紛れてます。これだけ人がいればわからないっしょ。
で、皇帝陛下並びに御臨席の方々の話が延々と続くなか、俺は学園の制服のマントに仕込んだ、ルートヴィヒお手製マジック・パックを密かに確認。旅支度、全部入ってます。便利だわ、魔法。出張の時に欲しかった。
しかし長い。話長いよ。なんで偉い人はこう話長いんですかね。眠くなってきたよ、俺。
我知らず舟を漕いでいたら、脇からニコルに突っつかれた。
アントーレ王子の卒業生代表挨拶が始まるらしい。
ポンコツ王子、あれから何故か必死こいて勉強したらしく、なんと首席でご卒業。
カンニング疑惑もかなり浮上したらしいが、証拠も掴めず、前後の状況から本物らしいと認定された。王都に季節外れの雷が鳴り響き、大粒のヒョウが降り注いだのが、何よりの証拠とか。どんだけよ、お前。でもよく頑張った、偉い。
そして、ご挨拶は佳境に入り......
「今日、私はここで皆に伝えておくことがある。ラフィアン・サイラス、前へ」
うん、ゲームのシナリオどおりの台詞、間違いない。俺は粛々とアントーレ王子の前に出る。でも、あれ?ヒロインちゃんがいない。
「ラフィアン・サイラス、本日をもって、私は君との婚約を破棄する」
周囲はざわめき......俺は無表情。でも心の中では盛大にガッツポーズ!やったね。ヒロインちゃん、グッジョブ!
ポンコツ王子、キリッとした目で俺をみつめる。うん、格好いいよ。やっぱり顔面偏差値高いね。羨ましい。
「ラフィアン、あの婚約は私の幼少時の戯言、既に無効でしかない話だ。だからもう無かったことにしたい」
うん、よぉくわかってるよ。良くできました。アントーレは良い子だね。
「そして......」
え、まだ何かあるの?断罪要件無かったよね?ね?
えっと.....あれ?王子、顔赤いよ。
「この場において、私は正式にラフィアン・サイラス、君に結婚を申し込む!」
............はぁ?
あの......意味わかりませんけど?
アントーレが呆然とする俺の肩を力任せに掴む。見下ろす目が......蕩けてるんですけどぉ。
「ラフィアン、昔の私のことは忘れて。これからの私を見て欲しい。私は君に相応しい夫になる」
あの、えーと話が違うんですが......誰かタスケテ。
「お約束が違います!殿下!」
すっくと立ち上がる主人公ちゃん。良かった~。アクション遅いよ、もう。
「試験問題を盗もうとしたことを内緒にする代わりにラフィアン様との婚約を解消していただくお約束です!」
え?お前やっぱりやらかしたのか?ダメじゃん。ポンコツ直ってないじゃん。会場から白~い視線。
「盗んではないない。盗もうとしただけだ。やはりいけないことと思い直して、自力で頑張ったんだ」
偉いね。ってそれ普通だから。胸張るようなことじゃないから。
「約束どおり、婚約は解消した。そして新たに結婚を申し込んだんだ。問題あるまい」
あのねアントーレ、それ詭弁ていうの、知ってる?
「ズルいです!王子!」
ツカツカとこちらに歩み寄り、俺の腕を取る主人公ちゃん。え?なんで俺の腕?
「殿下、ちゃんと婚約解消してください。僕がラフィアン様に結婚を申し込むんですからっ!」
..........はいぃ?.....何ですとぉ~?
ぐいっ、と俺を引き寄せ見つめる主人公ちゃん。相変わらず可愛いねっ.....てそんな場合じゃない。
「ラフィアン様、僕のお婿さんになって下さい!そして、家の当主になってください!父もそう願ってます。ラフィアン様はお強いから是非と.....」
「あの......お父さんて?」
「近衛騎士団、副団長、カーソン・ネヴィル伯爵です」
.おい、待て待て。別荘で俺達を襲った奴らじゃん。婿適性試験?.....そんな話、聞いてない。
「何を言っている!ラフィアンは私の妻になるんだ!」
「僕の旦那様です!」
唖然とする俺を真ん中にヒートアップするふたり。誰か止めて!
「いい加減にしなさい。ラフィアン君がこまっている」
止めて下さったのは校長先生。言葉は柔らかいけど、思いっきり威圧をかけてます。激おこです。血管ヤバいです。
さすがに黙りこむふたり。変わらない表情で、威圧を納めて校長先生がこちらを振り向く。
「君はどうしたいんだね?ラフィアン・サイラス?」
チラっとレイトン先生を見る。
ここは素直に言うしかない。
「僕は、冒険の旅に出ます!」
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