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作戦会議!持つべきものは...
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すったもんだのクリスマスが終わり、俺と課長、もとい先生は新たな作戦をたてなければならなくなった。
入ってきた情報によれば、やはりダンジョンには魔王が降臨しており、討伐隊が幾度となく派遣されているのだが、全て失敗。みんな殺され......てはいないのだが、使い者にならなくなっている.....という。
それ以上は俺は知らない。知りたくもない。あの先生の趣味を考えるとそれしかあり得ないからだ。
「どうする?」
「どうするって言ったって......」
このまま放置しておけば、魔王の勢力は拡大して、大陸の全土が呑み込まれる。そしてみんな触手やらゴブリンやらに、あれやこれや......ゲフンゲフン。
「課長、いや先生、開発責任者ですよね.....」
「お前、開発担当だよな.....」
そして必殺の武器を知っているのは俺達だけ。
「「やるしかないか」」
俺達の口からすごく重い溜め息が出た。大事なことだから二回言います。すごく重い溜め息が出ました。
「とりあえずパーティーを組まないとな......」
ふたりじゃ絶対無理。それに課長もとい先生は絶対、現場に出る気ないし。
「俺は『転移』なんだよ。そのうえ、この世界に来てからも二十年近く経ってる。立派に年寄りなんだぜ」
年齢補正入っているくせに、ズルいです。
「誰か信用出来る人物はいないのか?」
俺は仕方なく、マグリットとルートヴィヒに話してみることにした。
俺にとって『信用できる』のは彼らだけだった。
後日、マグリットとルートヴィヒを連れて先生の部屋に行った。
この世界にダンジョンが出来たこと、魔王の存在が確認されたことも。討伐隊がことごとく敗北したことも。.....まぁ敗北の内容は知らなかったみたいで、良かった。健全な青少年だからね、僕達。
「で、なんでラフィが行かなきゃいけないの?」
いい質問だね、ルートヴィヒ。でもそれには答えられないんだ。
「それは言えないけど、でも僕にしか倒せないんだ」
潤んだ目でルートヴィヒをじっと見る。最近、めっぼう芝居が上手くなってきたけど、これは本気。
「無理にとは言わないよ.....」
そう、彼らはやっと夢を叶えたばかり、やっと自分の人生を始めたばかり。ゲームの中のモブキャラであっても、出来れば幸せな人生を歩いて欲しい。大切な友達だから。
「俺は行くよ」
マグリットが手を伸ばし、俺の髪をくしゃりと撫でながら微笑んだ。
「俺はラフィといられるんなら何処へだって行く。ラフィは俺の宝物なんだから」
ありがとうマグリット。でも、そのこっ恥ずかしい表現止めて。ルートヴィヒと先生が固まってる。
と、ルートヴィヒがくすりと笑った。
「僕も行くよ。僕も君達と一緒がいい。それにふたりとも慌てん坊だから、僕がついてなきゃ」
ありがとう、ルートヴィヒ。でも俺の黒歴史抉るの止めて。
.「そうか.....」
先生はほっとしたように頷いた。
「三人じゃ心もとないが、大丈夫だろう。旅先で出合いもあるだろうし.....」
それから俺達は少し話し合いをして、先生に別れを告げた。
帰り道、俺達は黙って、手を繋いで歩いた。本当の未知の世界に飛び込む。その不安と期待を彼らと分かちあえるのが嬉しかった。そして、別れ際、俺はマグリットともう一度キスをした。
決行は学園の卒業パーティー。元のゲームのシナリオでは悪役令息が断罪を受ける日。
新しいゲームが始まる。
この時、俺は先生の部屋の扉の向こうにふたつの人影があったことを知らなかった。俺はね。
入ってきた情報によれば、やはりダンジョンには魔王が降臨しており、討伐隊が幾度となく派遣されているのだが、全て失敗。みんな殺され......てはいないのだが、使い者にならなくなっている.....という。
それ以上は俺は知らない。知りたくもない。あの先生の趣味を考えるとそれしかあり得ないからだ。
「どうする?」
「どうするって言ったって......」
このまま放置しておけば、魔王の勢力は拡大して、大陸の全土が呑み込まれる。そしてみんな触手やらゴブリンやらに、あれやこれや......ゲフンゲフン。
「課長、いや先生、開発責任者ですよね.....」
「お前、開発担当だよな.....」
そして必殺の武器を知っているのは俺達だけ。
「「やるしかないか」」
俺達の口からすごく重い溜め息が出た。大事なことだから二回言います。すごく重い溜め息が出ました。
「とりあえずパーティーを組まないとな......」
ふたりじゃ絶対無理。それに課長もとい先生は絶対、現場に出る気ないし。
「俺は『転移』なんだよ。そのうえ、この世界に来てからも二十年近く経ってる。立派に年寄りなんだぜ」
年齢補正入っているくせに、ズルいです。
「誰か信用出来る人物はいないのか?」
俺は仕方なく、マグリットとルートヴィヒに話してみることにした。
俺にとって『信用できる』のは彼らだけだった。
後日、マグリットとルートヴィヒを連れて先生の部屋に行った。
この世界にダンジョンが出来たこと、魔王の存在が確認されたことも。討伐隊がことごとく敗北したことも。.....まぁ敗北の内容は知らなかったみたいで、良かった。健全な青少年だからね、僕達。
「で、なんでラフィが行かなきゃいけないの?」
いい質問だね、ルートヴィヒ。でもそれには答えられないんだ。
「それは言えないけど、でも僕にしか倒せないんだ」
潤んだ目でルートヴィヒをじっと見る。最近、めっぼう芝居が上手くなってきたけど、これは本気。
「無理にとは言わないよ.....」
そう、彼らはやっと夢を叶えたばかり、やっと自分の人生を始めたばかり。ゲームの中のモブキャラであっても、出来れば幸せな人生を歩いて欲しい。大切な友達だから。
「俺は行くよ」
マグリットが手を伸ばし、俺の髪をくしゃりと撫でながら微笑んだ。
「俺はラフィといられるんなら何処へだって行く。ラフィは俺の宝物なんだから」
ありがとうマグリット。でも、そのこっ恥ずかしい表現止めて。ルートヴィヒと先生が固まってる。
と、ルートヴィヒがくすりと笑った。
「僕も行くよ。僕も君達と一緒がいい。それにふたりとも慌てん坊だから、僕がついてなきゃ」
ありがとう、ルートヴィヒ。でも俺の黒歴史抉るの止めて。
.「そうか.....」
先生はほっとしたように頷いた。
「三人じゃ心もとないが、大丈夫だろう。旅先で出合いもあるだろうし.....」
それから俺達は少し話し合いをして、先生に別れを告げた。
帰り道、俺達は黙って、手を繋いで歩いた。本当の未知の世界に飛び込む。その不安と期待を彼らと分かちあえるのが嬉しかった。そして、別れ際、俺はマグリットともう一度キスをした。
決行は学園の卒業パーティー。元のゲームのシナリオでは悪役令息が断罪を受ける日。
新しいゲームが始まる。
この時、俺は先生の部屋の扉の向こうにふたつの人影があったことを知らなかった。俺はね。
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