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襲われました
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起きました、暴漢イベント。
そして、襲われたのは主人公のクリスちゃん.....ではなく、やっぱり俺。
正確には俺じゃなくて、俺の大事な友達、マグリットとルードヴィヒ。
夏休み最後の週、俺達三人は、俺ん家、サイラス家の別荘でバカンスを楽しんでいた。
マグリットもルードヴィヒもやっと休暇が取れて、せっかくだから思いっきり気分転換しようと思ったんだ。
別荘の近くには綺麗な湖があって、魚を釣ったり、泳いだり、そりゃもう楽しかった。
事件があったのは、最後の日の夜だった。
みんなでテラスで夕飯を食べていて、俺は厨房にキルシュのお代わりをもらいに席をたった。
テラスの方で激しい物音がしたのは、その時だった。
黒覆面の男が五人くらい、ルードヴィヒとマグリットに襲いかかっていた。俺は急いでテラスに走って戻った。途中で、応接室の壁に掛けてあった剣を引っ抱えて。
「やめろぉ!」
俺はマグリットにのし掛かっていた男を突き飛ばして、マグリットに抱えてきた剣を手渡した。
「これ使って!」
「これは.....」
「いいから!」
家宝だかなんだか言ってたけど、そんなこと問題じゃない。だいたい剣なんて使ってナンボだろう。
それから、俺はルードヴィヒと取っ組み合いしていた男をひっぺがし、俺の後ろに庇った。
それから俺達は強かった。いや、マグリットが強かったんだけど。ルードヴィヒも魔法で応戦して、賊は風に巻き上げられ、水の奔流に巻かれて青息吐息だった。
俺はふたりの後ろに隠れて......はおらず、拳に物言わせてましたよ。せっかくのバカンスを邪魔しやがって!散々ボコッてやった。最後は逃げられちゃったけど。ふん!
翌朝、伝書カラスの報せを受けて、トニー兄さんがすっ飛んできた。
少し掠り傷はあったけど、元気な俺達を見て、ほっとしたらしい。剣を使ったことも怒られなかった。さすが騎士。勇敢だって褒めてくれた。でもさ、
『偉いぞ、チビッ子三銃士!』
って、俺らもう子どもじゃねぇし!
で、犯人は......というと、どうやら山賊では無いらしい。
『剣の扱いかたが、素人じゃなかったです。かなり正式な訓練を受けた感じで......』
かなりの手練れだそうです。てことは脅し?なんのために?
俺の頭に、あのピンクブロンドちゃんとポンコツの顔が浮かんだけど、頭ごなしに疑っちゃいけない。
「ウィスタリア殿下に申し上げて、きちんと調べさせるから」
トニー兄さんの言葉に素直に頷いて、俺達は帰りの馬車に乗った。安全のため、とトニー兄さんの部下の人が護衛についてくれた。御免ね、こんなとこまで出張させて。
道中、馬車の中で、昨夜食べそびれたキルシュをモグモグ食んでいた俺とマグリットに、ルードヴィヒが唇に人差し指をあて、すっごく小さな声で、言った。
「これ、今朝拾ったんだけど.....奴らが落としていったんじゃない?」
早朝、テラスに魔法の練習に出て見つけた、とルードヴィヒが掌に乗せて見せてくれたのは、小さな襟章だった。
「これって......」
俺は思わず固まった。俺にはそれに見覚えがあった。
それは......王宮の近衛騎士団の襟章だった。
ーあんのポンコツ......!ー
俺は膝の上でぎゅっと両手を握りしめた。
そして、襲われたのは主人公のクリスちゃん.....ではなく、やっぱり俺。
正確には俺じゃなくて、俺の大事な友達、マグリットとルードヴィヒ。
夏休み最後の週、俺達三人は、俺ん家、サイラス家の別荘でバカンスを楽しんでいた。
マグリットもルードヴィヒもやっと休暇が取れて、せっかくだから思いっきり気分転換しようと思ったんだ。
別荘の近くには綺麗な湖があって、魚を釣ったり、泳いだり、そりゃもう楽しかった。
事件があったのは、最後の日の夜だった。
みんなでテラスで夕飯を食べていて、俺は厨房にキルシュのお代わりをもらいに席をたった。
テラスの方で激しい物音がしたのは、その時だった。
黒覆面の男が五人くらい、ルードヴィヒとマグリットに襲いかかっていた。俺は急いでテラスに走って戻った。途中で、応接室の壁に掛けてあった剣を引っ抱えて。
「やめろぉ!」
俺はマグリットにのし掛かっていた男を突き飛ばして、マグリットに抱えてきた剣を手渡した。
「これ使って!」
「これは.....」
「いいから!」
家宝だかなんだか言ってたけど、そんなこと問題じゃない。だいたい剣なんて使ってナンボだろう。
それから、俺はルードヴィヒと取っ組み合いしていた男をひっぺがし、俺の後ろに庇った。
それから俺達は強かった。いや、マグリットが強かったんだけど。ルードヴィヒも魔法で応戦して、賊は風に巻き上げられ、水の奔流に巻かれて青息吐息だった。
俺はふたりの後ろに隠れて......はおらず、拳に物言わせてましたよ。せっかくのバカンスを邪魔しやがって!散々ボコッてやった。最後は逃げられちゃったけど。ふん!
翌朝、伝書カラスの報せを受けて、トニー兄さんがすっ飛んできた。
少し掠り傷はあったけど、元気な俺達を見て、ほっとしたらしい。剣を使ったことも怒られなかった。さすが騎士。勇敢だって褒めてくれた。でもさ、
『偉いぞ、チビッ子三銃士!』
って、俺らもう子どもじゃねぇし!
で、犯人は......というと、どうやら山賊では無いらしい。
『剣の扱いかたが、素人じゃなかったです。かなり正式な訓練を受けた感じで......』
かなりの手練れだそうです。てことは脅し?なんのために?
俺の頭に、あのピンクブロンドちゃんとポンコツの顔が浮かんだけど、頭ごなしに疑っちゃいけない。
「ウィスタリア殿下に申し上げて、きちんと調べさせるから」
トニー兄さんの言葉に素直に頷いて、俺達は帰りの馬車に乗った。安全のため、とトニー兄さんの部下の人が護衛についてくれた。御免ね、こんなとこまで出張させて。
道中、馬車の中で、昨夜食べそびれたキルシュをモグモグ食んでいた俺とマグリットに、ルードヴィヒが唇に人差し指をあて、すっごく小さな声で、言った。
「これ、今朝拾ったんだけど.....奴らが落としていったんじゃない?」
早朝、テラスに魔法の練習に出て見つけた、とルードヴィヒが掌に乗せて見せてくれたのは、小さな襟章だった。
「これって......」
俺は思わず固まった。俺にはそれに見覚えがあった。
それは......王宮の近衛騎士団の襟章だった。
ーあんのポンコツ......!ー
俺は膝の上でぎゅっと両手を握りしめた。
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