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巣立ちの春
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というわけで、今日はマグリットの騎士任命式。帝国の騎士を束ねるウィスタリア皇太子から任命を受けて、正式な騎士になる。
同時に騎士団の入団式もするんだけど、王都の第一騎士団だって、どんだけ優秀なんだよ、お前。
あ、ちなみに王都騎士団の総括団長は俺の兄貴、トリスタン兄さん。
今日も金糸の縫いとりと金モールのいっぱいついた騎士団長の濃紺の制服でウィスタリア殿下の隣に立ってる。格好いいぜ、兄ちゃん。
新人騎士のマグリットも同じ濃紺の制服。飾りは無いけど、逞しい体格にピッタリ合った制服と膝上丈のブーツがめっちゃ男らしくて格好いい。よく目立つふわふわの赤毛が風に揺れて男っぷり三倍増しだ。
皇太子殿下の前に跪いて剣を受け取る姿も様になりすぎて目眩しそう。
けどさ、来年は皇太子殿下に代わって、アントーレ王子が任命するんだって。騎士の試験にも落ちまくってるのに、大丈夫か?ポンコツ。
「マグ、凄いね。格好いいね」
「うん。ルーも似合ってるよ。素敵だ」
隣で見ているルードヴィヒも、先日、初級魔術師の認証式を終えた。魔術師の認証式は部外者立ち入り禁止なんで、式の様子は見れなかったけど、きっと素晴らしかったと思う。
ルードヴィヒのローブはルードヴィヒの髪と同じ漆黒で、襟元に魔術の象徴のヒイラギの枝の刺繍がある。その上に同じく漆黒のマントを羽織ると本当に神秘的で美しい。こっちもマジ優秀で知識と技術は上級クラスなんだけど、経験値が無いから初級なんだって。厳しいね。でも経験は大事。
ちなみにふたりの耳には片方だけアメジストのピアスがついてる。俺がお祝いに贈ったの。守護魔法、がっつり入れたやつ。ふたりとも凄く喜んでくれた。
「でも.....寂しくなるね」
「うん......」
ルードヴィヒの言葉に俺は小さく頷いた。
この式典が終わるとマグリットは騎士団の寮に引っ越しする。
実家のオーウェン家にいられなくて、俺の家の別棟にいたんだけど、やっと自由に伸び伸びできる。
おめでとう。やっと自分の居場所ができたんだもんね。
それにもう立派な王都の騎士だから、誰にも伯爵家の妾の子なんて後ろ指さされることもない。本当におめでとう。
でもね、寂しい。
マグリットが騎士になったら、これまで以上に彼に会えなくなる。我が儘なのはわかってるけど、それが寂しくて堪らない。
小さな部屋で荷物をまとめてるマグリットの背中がなんだか遠くに見えて、俺は思わず泣きそうになった。
マグリットはそんな俺に気づいて、そっと頭を撫でてくれた。
『大丈夫だよ。俺はいつだってラフィの傍にいる』
マグリットは優しく言ってくれたけど、なんだかもっと寂しくなって、涙が出ちまった。
そしたら、マグリットの逞しい腕が俺を抱き締めてくれた。俺の頭はマグリットの胸の辺りにすっぽり埋もれて......知らない間にマグリットは本当にデカくなってた。ズルいぞ、お前。
それから、俺達は初めてのキスをした。マグリットは本当に初めてで、不器用でぎこちなかったけど、優しくて甘いキスだった。こんな甘いキス、前世の彼女とだってしたことない。
『時々は帰ってきてよね』
俺の言葉にマグリットは微笑んで頷いた。
そして俺達は約束したんだ。
もう少し大人になってちゃんと生活できるようになったら、三人で家を借りて、一緒に住もうって。
あそこにボーっと突っ立ってるポンコツなんか知らない。
俺は俺達の夢を叶えるために頑張るんだ。
同時に騎士団の入団式もするんだけど、王都の第一騎士団だって、どんだけ優秀なんだよ、お前。
あ、ちなみに王都騎士団の総括団長は俺の兄貴、トリスタン兄さん。
今日も金糸の縫いとりと金モールのいっぱいついた騎士団長の濃紺の制服でウィスタリア殿下の隣に立ってる。格好いいぜ、兄ちゃん。
新人騎士のマグリットも同じ濃紺の制服。飾りは無いけど、逞しい体格にピッタリ合った制服と膝上丈のブーツがめっちゃ男らしくて格好いい。よく目立つふわふわの赤毛が風に揺れて男っぷり三倍増しだ。
皇太子殿下の前に跪いて剣を受け取る姿も様になりすぎて目眩しそう。
けどさ、来年は皇太子殿下に代わって、アントーレ王子が任命するんだって。騎士の試験にも落ちまくってるのに、大丈夫か?ポンコツ。
「マグ、凄いね。格好いいね」
「うん。ルーも似合ってるよ。素敵だ」
隣で見ているルードヴィヒも、先日、初級魔術師の認証式を終えた。魔術師の認証式は部外者立ち入り禁止なんで、式の様子は見れなかったけど、きっと素晴らしかったと思う。
ルードヴィヒのローブはルードヴィヒの髪と同じ漆黒で、襟元に魔術の象徴のヒイラギの枝の刺繍がある。その上に同じく漆黒のマントを羽織ると本当に神秘的で美しい。こっちもマジ優秀で知識と技術は上級クラスなんだけど、経験値が無いから初級なんだって。厳しいね。でも経験は大事。
ちなみにふたりの耳には片方だけアメジストのピアスがついてる。俺がお祝いに贈ったの。守護魔法、がっつり入れたやつ。ふたりとも凄く喜んでくれた。
「でも.....寂しくなるね」
「うん......」
ルードヴィヒの言葉に俺は小さく頷いた。
この式典が終わるとマグリットは騎士団の寮に引っ越しする。
実家のオーウェン家にいられなくて、俺の家の別棟にいたんだけど、やっと自由に伸び伸びできる。
おめでとう。やっと自分の居場所ができたんだもんね。
それにもう立派な王都の騎士だから、誰にも伯爵家の妾の子なんて後ろ指さされることもない。本当におめでとう。
でもね、寂しい。
マグリットが騎士になったら、これまで以上に彼に会えなくなる。我が儘なのはわかってるけど、それが寂しくて堪らない。
小さな部屋で荷物をまとめてるマグリットの背中がなんだか遠くに見えて、俺は思わず泣きそうになった。
マグリットはそんな俺に気づいて、そっと頭を撫でてくれた。
『大丈夫だよ。俺はいつだってラフィの傍にいる』
マグリットは優しく言ってくれたけど、なんだかもっと寂しくなって、涙が出ちまった。
そしたら、マグリットの逞しい腕が俺を抱き締めてくれた。俺の頭はマグリットの胸の辺りにすっぽり埋もれて......知らない間にマグリットは本当にデカくなってた。ズルいぞ、お前。
それから、俺達は初めてのキスをした。マグリットは本当に初めてで、不器用でぎこちなかったけど、優しくて甘いキスだった。こんな甘いキス、前世の彼女とだってしたことない。
『時々は帰ってきてよね』
俺の言葉にマグリットは微笑んで頷いた。
そして俺達は約束したんだ。
もう少し大人になってちゃんと生活できるようになったら、三人で家を借りて、一緒に住もうって。
あそこにボーっと突っ立ってるポンコツなんか知らない。
俺は俺達の夢を叶えるために頑張るんだ。
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