(転生)悪役令息は、バックレたい!

葛城 惶

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悪役令息は最強ウイルス?

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「どう思います?」

 巨大ミミズ、じゃなくて触手の一件の際、アーミラ先生の部屋で拾った魔方陣の羊皮紙をテーブルに拡げた先生を、上目遣いで恐る恐る見る。
俺、ラフィアンは今とても不安です。

 前世の俺の世界には、呪いなんて存在しなかった。いやあったけど俺は信じちゃいなかった。藁人形に五寸釘なんて都市伝説。まぁ事故物件には住みたくはないけど。

「心配いらないよ」

 レイトン先生がくすりと笑う。

「恋愛成就の護符だから」
 
 良かった。

「別にライバルを呪い殺すわけじゃなくて、想う相手を『魅了』して、とりこにするんだ。淫魔とかの力を借りて、ね。触手を呼び出したのはアーミラ先生の欲望だろう」

 淫魔って......十分怖いです、先生。大人って不潔。エロエロは俺だって嫌いじゃないけど、そこまでじゃない。  
 だって今の俺は十五歳。前世で出来なかったピュアピュアな恋がしたい。
アオハルなんだもん。

 レイトン先生、俺の困惑を察してか、頭をポリポリ掻いて、俺の顔を覗き込んだ。

「ラフィアン、この世界の成人て幾つだか知ってるか?」

 え、知らない。確か前世は二十歳ですよね。酒と煙草が解禁になるのって。

「この世界では十五歳で成人なんだ。結婚したり、仕事に就くこともできる」

 早っ。でも俺、学生ですが。

「新学年に入ると解るよ。生徒の数が減る。結婚して学校をやめる子や職に就く子が出てくる」

 レイトン先生はいつものようにお茶を淹れながら微笑んだ。

「騎士や魔術師は十五歳からなれるからね。試験さえ通れば。君の友人は騎士の見習いになってたろう?」

 俺はマグリットの格好いい制服姿を思い浮かべた。

「でも、彼は士官学校に行ってますよ」

「たぶん四月からは正騎士になるはずだよ。士官学校を続けるのはそれが条件だから。魔法学校も同じだ。初級魔術師の資格を得ないと上には進めない」

 コトリ.....と小さな音がして、湯気のたったカップが俺の前に置かれた。

「新学年には生徒の数は半分くらいに減る」

「残るのは、進路の決まらない落ちこぼれ......てことですか?」

「違うよ」

 先生は俺の言葉に苦笑いして首を振った。

「法律や外国語、国の政治に必要な知識を学ぶ子ども達が残る。つまりはエリートコースだ。後はその伴侶になる子達が残る」

「エリートねぇ......興味無いな」

 俺の言葉に先生は小さく笑った。

「君は伴侶枠だろう」

「嫌ですよ、そんなの」

 俺はぷっと頬をふくらませた。だってこのまま学園にいたら、自動的にアントーレの嫁ってことだろう?
 今からでも転校しようかな、試験受けて。そう言えば......

「俺、婚約解消されたら退学ですか?」

 そう断罪されなくても、婚約解消したら、アントーレの嫁候補ではなくなる。そしたら学園にはもういられないのか?

「そんなことはない。君の成績なら秘書官や外交官の道もある。そういう例も無いわけじゃない。......まぁゴタゴタにはなるけどね。王族じゃない」

 そうか、ゲームで婚約解消の後、悪役令息が断罪されるのは、そのゴタゴタを回避するシステムなわけだ。面倒くさいもんな。エンディングでハピエンになればいいだけの話だし。
 そう言えば.....

「悪役令息が攻略対象になるってあるんですかね?」

「無いな」

 先生は課長の顔に戻って、あっさり言い切った。

「少なくとも、『青薔薇』では無い。俺もやってみたが、エラーが立った。あの先生は、悪役令息は『聖域』だって言ってたからな」

「先生......戻ってますよ、素に。じゃあ僕はバグっていう訳ですか」

「ウイルスじゃねぇか?ストーリー替えて、俺達が必死に組んだプログラムを破壊して、次から次へ書き換えやがる。ウイルスバ○ターさえ勝てやしない」

「プログラム組んだの、課長じゃないでしょ。俺です。俺と二宮ですよ」

 ははっ......と先生は大きく笑って、チェリーパイにかぶりついた。口許、カスついてますよ、先生。
 俺がポケットからハンカチを出して拭うと、スマン、と笑った。

 顔面破壊力すげぇな、先生。
 でも、やっぱり残念なんだよな.......。
 
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